株式会社メビウス

2020年06月04日
IT導入NICOpress170号補助金

AIを用いた錦鯉の個体識別システムで地場産業に貢献

東京・新潟・長岡を拠点とするメビウスは、業務分析から設計・開発・保守運用に至るまで、システム開発をトータルでサポートするソフトウェア企業。AIやデータ分析などの研究開発、ビジネス展開にも力を入れ、お客様の抱える課題の解決や業務改善の支援に向けたAI導入の提案を行っている。

ビジネスイノベーション本部 先端技術開発部 技術部長 高橋 正幸 氏 / リーダー 櫻井 貴之 氏
ビジネスイノベーション本部 先端技術開発部
技術部長 高橋 正幸 氏 / リーダー 櫻井 貴之 氏

開発に携わった高橋技術部長(写真左)と櫻井リーダー(写真右)。「櫻井と2人で養鯉場の池の中に入り、錦鯉の選別作業などを見せてもらうことから始めました」と高橋技術部長。今後は大量に取得したデータを基に、良い鯉をなるべく確率高く繁殖するための仕組みを作っていきたいという。

職人の経験と勘だけに頼らない AI技術を応用し個体を識別

商社や製造業を中心とした業務システムの開発・保守業務をはじめ、データ分析・機械学習コンサルティングを行うメビウス。同社はNICOの平成30年度先進技術開発支援事業を活用し、機械学習を用いた錦鯉の個体識別システムの開発に取り組んだ。

「新潟県の地場産業にITで何か貢献できないか私たちの部署で検討していたところ、社員の知り合いである錦鯉のディーラーの方から、小千谷の大日養鯉場さんを紹介していただいたのがきっかけです。もちろん私たちは錦鯉に関して素人なので、先方に伺って、どういう課題があるのかヒアリングすることから始めました」と高橋技術部長。そこで分かったのが、錦鯉は成長によって体格や模様が変化するため個体の識別が難しく、養鯉業で大切な鯉の選別や管理に手間とコストがかかるということ。そして、その個体の識別は職人の経験や勘に頼って行われているということだった。「ベテランの職人は識別できても、若手は経験が浅いので難しいという課題もありました。また、海外のお客様から預かることが多い、高価な“無地物”といわれる鯉は、模様がないのでベテランでも識別に苦労するということを聞き、そこをAIでサポートできないかと考えました」。

錦鯉の個体の識別

優良な錦鯉を絞り込むため、養鯉業では錦鯉の成長に応じて何度も選別作業を行う。成長してからも複数管理するため、個体の識別は重要。特にオーナーから預かる錦鯉は、間違いがないよう慎重に管理されている。

 

AIが全てを担うわけではない 開発・導入の目的を明確に

職人の話をもとに着目したのが、錦鯉の骨格とヒレの形だった。骨格の比率は成長しても変化が小さいことから、AIに錦鯉の動画をスライスした画像を学習させ、骨格やヒレの形で識別できるようにした。

スマートフォンの専用アプリを使い、対象となる錦鯉を撮影。識別に成功すると、評価スコアの高い3本の鯉が1位から3位まで画面上に表示される。「最初の検証では1位の鯉を当てる確率は約77%でしたが、1位から3位までに入っている確率は約95%。職人の判断も合わせると、ほぼ間違いなく識別できます」。この骨格をベースにした錦鯉の個体識別方法は、今年2月に特許を取得。5月からの実用化を予定している。

「AIというと“ドラえもん”のようなものをイメージして、人間の代わりに何でもやってくれるという過剰な期待をされることが多いので、まずは現実的に今のAIができることを最初にお話しするようにしています。また、AIの開発・導入に当たっては目的を明確にすること、評価方法をどうするかというのを、お客様と一緒に最初に決めることが大切です」と言うように、今回の個体識別システムでは、職人のサポートシステムとしてAIの評価を使うという目的を明確にした。「職人の判断が間違っていないか確認するという観点で使うと、AIが70%くらいの判定をしても十分使える。例えばAIだけで識別する用途に使おうとすると100%近い精度が求められるため、開発のコストや時間も変わってくるのです」。

機械学習を用いた錦鯉の個体識別システム

 

ビジネスとして投資価値があるAI導入を提案したい

同社が開発した機械学習モデルは、製造業の不良品判定検査にも導入されている。「AIを導入するメリットは、過去の実績データに基づく判断ができるようになり、それを業務改善に繋げられることです」。例えばAI導入で不良品を早く、高い確率で判定できることも重要だが、製造工程における細かなデータが蓄積されることで特定の条件のときに不良品が発生しやすいという原因が分かってくる。そこでロスを発生させない工夫や改善点を見つけることができるのが、企業にとって一番のメリットだという。

「今後も養鯉業に関しては職人の代わりを作るのではなく、過去のデータに基づいて判断を行うAIという名の職人を一人足して、合議制という形で業務を進めていくのがいいと思います。そしてデータを蓄積していくことで、より優良な錦鯉を作るための成長予測モデルを作成するというのが最終的な目標です」と高橋技術部長。さらに、AIを単なる自動化、省力化のために導入するというのは、工場にロボットアームや新しい設備を入れるのと変わらないため、投資効果は薄いのではと話す。「それよりも予測とか、過去のデータに基づいた一番最適なソリューションを選ぶとか、人間では難しい部分をAIでサポートするという導入方法がいいのではないでしょうか。予測する確率が上がれば、1%でも売上が上がるかもしれない。その方がビジネスとして投資価値があると考えるので、そうしたご提案を我々もしていきたいと思っています」。

これからもお客様の課題を発見し、共に考えながら、付加価値の高いAI技術で企業の成長に貢献していく。

新潟本社にある錦鯉の水槽

新潟本社にある錦鯉の水槽。歴史ある地場産業とAI技術のコラボという話題性で、開発当時から多くのメディアに取り上げられている。

 

ポイント

  • AIを導入する目的、評価方法をまず明確にする。それにより開発する技術の精度やコストも変わってくる
  • 蓄積した実績データによってさらなる品質向上、業務改善に繋げることができる
  • 自動化や省力化だけの目的ではなく、ニーズの予測など将来に向けて投資価値のあるものにAI導入を検討する

 

企業情報

株式会社メビウス

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FAX.025-242-3121
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