株式会社有本電器製作所

2020年06月04日
IT導入NICOpress170号補助金

AIの音声認識を利用し工程管理のIT化に成功

加茂市で金属加工業を営む有本電器製作所。主に産業用機械の部品を手掛け、図面をもとにプレスから旋盤加工、マシニングセンタ加工、研磨、アッセンブリまでワンストップで受注できるのが強みだ。その技術の多彩さゆえに、課題だったのが工程管理のIT化。工場内で、誰でも簡単に入力できる方法を模索し、目を付けたのが「音声入力」だった。

代表取締役 有本 照一 氏 / 管理担当 砂山 友義 氏
代表取締役 有本 照一 氏 / 管理担当 砂山 友義 氏

「当社は熟練工が多く、そうしたベテランも進んで対応してくれました。ラネクシーさんとの出会いがあったこと、当社に人材がいたこと、全てのタイミングが良かったと思います」と有本社長(写真左)。砂山氏(写真右)は「開発がスピーディだったこと、費用を抑えた開発をしてくださったことがありがたかったですね」と話す。

見えにくかった進捗状況 利益に直結する課題を解決したい

有本電器製作所で汎用旋盤加工を担当する小野塚さんは、作業が終わるとタブレットに向かい、スピーカーから聞こえてくる製品管理番号や加工時間、加工数などの質問に、数字を読み上げて答えていく。作業情報の入力はこれで完了。小野塚さんは77歳の超ベテラン。それは誰もが無理なく対応できるIT化を目指した、同社のシステムの象徴的なシーンだ。

金属加工全般を手掛け、注文に応じてさまざまな機械部品を製造している有本電器製作所。ワンストップ受注がウリだが、悩みとなっていたのが作業の進捗状況の把握だ。管理部の砂山さんは「当社は製造工程が多く、部品によっては初工程から完成まで数ヵ月かかるものもあります。これまでは製品と一緒に専用用紙にいつ、どんな作業をしたかを手書きで記入していましたが、それではリアルタイムな状況を把握できません。一番困るのが、お客様から進捗状況の問い合わせがあったとき。工場内を走り回って、その部品が今どの工程にあるのか探し、あとどれくらい時間がかかるのかリーダーに相談してから回答するという状態でした。また、製造業が利益を出すには製造原価を算出し、製造工程のどこに課題があるのかを把握し改善につなげることが必要ですが、現状では課題が見えてこない。そうしたことを解決するには、ITの力が必要だと思っていました」と話す。

汎用旋盤加工を担当する小野塚さん
汎用旋盤加工を担当する小野塚さん

工場内の作業音があるなかでも、音声入力はスムーズ。60~70代の熟練工も慣れた様子で入力していく。作業で油を使うことが多いため、キーボード入力などの場合は手を洗う必要がある。その点、音声ならそのまま入力できるので便利だ。

 

 

手を使わずに音声入力 パソコンスキルは不要

同社では以前、バーコードによる管理も導入したが、現場に定着しなかった。そこで重視すべきは、社員にやる気になってもらえる簡単さだった。そんなとき、砂山さんはAIスマートスピーカーに話しかけることで、倉庫のパレットを操作する物流会社の話題を伝えるテレビを見る。「音声入力ならうちも可能なのではないか」。そう思った砂山さんが、有本社長に伝えると、社長は新潟県工業技術総合研究所に相談しようと話を進めてくれた。そこで、介護の現場向けに作業日報の音声入力システムを開発したラネクシーを紹介された。ラネクシーは約1ヵ月で、AI音声認識機能のチャットボットを活用したプロトタイプを提案。AIとの一問一答方式による対話で情報を音声入力し、そのデータは一旦、クラウドにアップされる。それを一日に数度、管理システムに取り込むという仕組みだ。

導入に向けて最も重要だったのが、現場の社員の理解を得ること。「当社は高齢の社員が多いので、入力を難しく感じる社員に強制はしません。あくまでもツールのひとつに過ぎないので、導入することが目的ではなく、社員の働きやすさが第一です。」と砂山さんは話す。「同時に、実際に操作してもらいながら、どうしたらもっと使いやすいかという現場の声を吸い上げて、ラネクシーさんに伝えました」と振り返る。

音声入力からクラウドを経由して取り込んだデータを管理画面でチェック

音声入力からクラウドを経由して取り込んだデータを管理画面でチェック。今まで見えてこなかった製造にかかる工程数や時間が把握できるようになった。

 

集まったデータから見えてきた課題解決にもAIを活用したい

工場内は常に騒音があるので、スピーカーを付けて音声を聞き取り易くする、AIが話す声のスピードを変えられる、入力に失敗したらひとつ前に戻る機能を付ける、といった改良を経て、運用を開始。導入約1ヵ月で約9割の社員が情報入力を習慣化した。

最初は音声の誤認識もあったが、サンプルが増えるとAIが学習するのと同時に、社員側もAIが認識しやすい発音のコツをつかみ、両方が学んでいくため、日を追うごとにスムーズになっていったそうだ。また、無料で利用できる大手クラウドベンダーのサービスを活用することでコストが抑えられ、さらに県の補助金も活用できたことで導入負担は少なく済んだという。

現場情報を把握するという最初の課題をクリアし、次は集まったデータをどう活用するかが大切だと砂山さん。「利益に直結する、今まで見えなかった課題が見えてきました。今回、データを集める入り口でAIを活用しましたが、これからは出口方向でAIを活用したい。現場ですぐに図面情報が取り出せるシステムなど、次のステップをラネクシーさんと相談しています」。

AIによって念願のIT化を一気に進めることに成功した同社。この改革が経営に与えるインパクトは大きいはずだ。

新しく購入した機器はWi-Fi用ルーター3台とタブレット6台、スピーカー機材など

今回はシステム導入のための機材費用も少なく済んでいる。新しく購入した機器はWi-Fi用ルーター3台とタブレット6台、スピーカー機材など。

 

ポイント

  • リアルタイムに近い工程管理システムを構築したいというゴールを明確にして着手
  • テラン社員も扱いが簡単な音声入力に着目し、高い実施率を実現
  • 現場とベンダーを的確に橋渡しすることによって、スムーズでスピーディに開発が進行

開発者メッセージ

社長による環境づくりと「翻訳家」の存在が成功ポイントでした

株式会社ラネクシー
取締役 企画開発担当 穴沢 幸二 氏

当社では以前から大手クラウドベンダーの音声チャットボットを活用した開発を手掛けています。音声チャットボットには音声認識、自然言語処理、音声出力という3つの技術それぞれでAIが使われています。音声でコンピューターと自然に対話できることこそがAIの効果と言えます。

今回の成功ポイントは、まず担当の砂山さんが使う人と私の間を繋ぎ、非常に優秀な翻訳家(システム管理者)の役割を果たしてくださったこと。もうひとつは、有本社長が全社的な取り組みに昇華させる舞台を整えてくださったこと。さらに、工程管理に限定した改善というスモールスタートだったことも良かったと思います。

音声チャットボットはハンズフリーでパソコンスキルが不要なので、建設業や介護業など幅広く活用できます。今後もAIの力で事務処理などの仕事を楽にするお手伝いをしていきたいと思います。

株式会社ラネクシー 新潟オフィス
〒950-0087 新潟市中央区東大通1-7-10 新潟セントラルビル8F URL:https://www.runexy.co.jp/

 

企業情報

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〒959-1384 加茂市寿町5-25
TEL.0256-52-1361
FAX.0256-52-1376
URL http://arimoto-d.jp/

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