IoTで工場の温度管理を徹底。
付加価値の高いモノづくりを目指す
高い技術力で工作機械・産業機械の各種部品加工を手掛け、顧客からの信頼に応えている倉品鐵工。高精度の加工品を作るために重要とされる温度管理をシステム化し、成果を上げている。
システム開発担当 川俣 吉広 氏
「温度環境を見える化したことで、品質と温度の関係性について社員の意識付けにつながりました」と倉品専務(写真左)。「今後も細かくアップデートをしながら、使いやすいシステムにしていきたいと思います」と、システム開発を担当した川俣氏(写真右)。
高精度の加工に欠かせない
温度測定と記録を自動化
鉄道・航空関連の工作機械部品の加工を主力とする倉品鐵工では、IoTを活用した温度可視化システムを2019年に導入。温度の記録作業を自動化した。
「高精度の加工品を作るために大切な要素となるのが温度です」と倉品専務。同社は厳密な精度が求められる加工の仕事が多く、わずかな温度差で製品の寸法が伸び縮みすることから、工場内の温度を一定状態に保つことが重要だという。「以前は現場の人間が作業を中断して温度を測定・記入し、状況を把握していました。作業者が製造に集中するために、これらの手間を減らしたいというのが導入した理由です」。
大型モニターで温度環境や
温度変化の傾向を把握
システムはIT関連で交流のあった川俣氏と共同開発した。工場内の多点に温度センサーを設置し、温度を自動記録。収集したデータを社内のサーバーに取り込み、工場内に設置した大型モニターに表示する。これによりダッシュボード画面で現在の温度環境を見える化し、グラフ画面で温度変化の傾向を把握できるようにした。
また、天井ファンやサーキュレーターを使いながら空気を強制対流させることで、短時間で工場内の温度の均一化を実現。設定した温度値の上限・下限を超えるとスマートフォンなどにアラートメールが通知され、社外でも温度環境の異常を検知できるようにした。「気象データも取得しているため、天気予報を見ながら空調の負荷が低い日を狙って、高精度が求められる仕事をするように生産計画を立てるという工夫もしています」。
工場内の温度状況の変化
IoTは付加価値の高い仕事に
集中する改善道具の一つ
システム導入後は作業者が業務に集中できるようになり、生産性が向上。温度の見える化と空調管理によって電力使用量が削減され、省エネルギー化に繋がった。また、加工時の温度環境のデータを顧客に提出できるようになったことで、トレーサビリティの保証にも繋がり、品質基準に厳しい大手メーカーからの信頼度が向上するなど大きな成果を得られた。
今後は小型PCなどを使い、エアコンによる温度調整をリモートでできるようにしたいという倉品専務。さらに各工程の作業時間の見える化、生産計画の作成などにIoTを活用することも考えている。「システム化することが目的ではなく、私たちが目指しているのは“人が付加価値の高い仕事に集中できるようにする”ということです。そのために必要な改善道具の一つとして、これからもさまざまな技術を活用していきたいと思います」。
企業情報
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