念願の国内初の船上デジタル秤、
まもなく製品化
田中衡機工業所は明治36年創業のはかりメーカー。
国内初の船上用デジタル秤の開発に成功。
製品化に向けた準備は山場を越え、待望の製品化まであと一歩だ。
田中 康之 氏
天野 洋継 氏
坂田 大介 氏
20年前は挑戦できなかった
船上デジタル秤の開発へ
田中衡機工業所は様々な産業で使われる秤の開発・製造・販売・メンテナンスを手掛けている。同社が新たに開発したのは、船上用のデジタル秤「デジタフオーシャン」だ。
通常、デジタル秤は安定した水平の場所で使わなければ正確な数値を出すことはできない。そのため波の影響を受ける漁船では、長年機械式の秤が使用されてきた。
しかし、機械式秤を船上で正確に扱うには相当な熟練が必要なため、誰でも簡単に使えるデジタル秤へのニーズは以前からあった。田中社長は「20年程前から要望はありましたが、当時は力不足もあって開発には至りませんでした。ですが船上の機械式秤は長年当社が提供してきたので、後続機種も自分たちで作りたいという思いをずっと抱いてきました。そして今、優秀な人材やノウハウも増えたので量産化に向けて更なる改善が出来る様になりました」と振り返る。
常に揺れている環境で
瞬時に正しい重量を表示
海上では船の揺れ方によって2G程度の加速度がかかることもあり、計測結果も増えてしまう。技術面での最も高い壁は、それをリアルタイムで補正して正確な重さを表示する新しいはかりの開発だった。
担当した天野課長は「社内には長年様々な秤の開発を手掛けてきた師匠とも言える先輩がいて、その先輩からアドバイスをもらったり、一緒に船に乗ってもらったりしながら開発を進めました。現場に行ってみると、波の他に船のエンジンの振動も影響を受けることが分かるなど、現地での検証の重要性を再認識できました」と話す。
受け継がれてきた秤の文化を
最先端の技術で守る
2019年、試作機を展示会で初披露すると反響は大きく、予想以上に広い業種が興味を示してきたという。営業の坂田氏は「漁業関係だけでなく養殖関係、海洋資源関係と様々なお客様からご興味を持っていただき、『こういうものが欲しかった』と喜ばれるご意見が多く営業としても手応えを感じています」と話す。
同年NICOのイノベーション推進事業を活用し製品化に向けた基盤の開発をさらに加速。この夏には量産タイプの一号機が完成予定だ。「労働人口の急激な減少に伴い、生産現場では計量機器を維持管理できる人材が激減しています。正しい計量を維持することはものづくり産業全体の基本なので、我々は他業界以上に危機感を持っています。今後はIoTを駆使した技術開発への挑戦も行い、”正確な計量値”を提供し続けたい」と語る田中社長。デジタフオーシャン製品化の先には、IoT活用による新たな挑戦を続けてゆく。
企業情報
株式会社田中衡機工業所NICOクラブ会員
〒959-1145 三条市福島新田丙2318-1
TEL.0256-45-1251
FAX.0256-45-2204
URL https://www.tanaka-scale.co.jp/