山崎醸造株式会社

2020年12月02日
NICOpress173号商品評価・ブラッシュアップ新商品・新技術開発

醸造メーカーとしての使命感から生まれた食物アレルギー対応の醤油・味噌調味料

越後獅子のイラストが目印の「ヤマサキみそ」を始め、各種味噌・醤油を製造している山崎醸造では、「大豆・小麦を使わないしょうゆ」を開発。失敗の連続で不可能かと思われるなか、食品研究センターの協力を得て、構想から10年余りを経て実現にこぎつけた。

取締役 営業部長 広井 伸行 氏
取締役 製造部長 羽田 知由 氏

「10年前に比べると食物アレルギーへの周知は進んだと思いますが、正しい理解や対応する調味料はまだ少ないです。開発にあたり、当社としてもエビデンスが欲しかったので、産官学連携でサポートいただけたことは、とてもメリットがありました」と話す広井部長(写真右)と羽田部長(写真左)。

大豆・小麦の食物アレルギーに悩む人が求めていた「醤油」

平成31年1月、山崎醸造から「大豆・小麦を使わないしょうゆ」が発売された。これは小麦、大豆に対してアレルギーを持つ人に向けて開発された、食物アレルギー表示の対象28品目を使わない醤油風調味料だ。同社の公式ネットショップで販売し、全国各地の食物アレルギーに悩む人やその家族から注文が寄せられている。

同社が食物アレルギーについて意識し始めたのは15年ほど前から。大豆や小麦にアレルギーがある人は、調味料にも困っているという話が耳に入ってくるようになっていた。

広井部長は、当時食物アレルギーに対する取り組みが進んでいた愛知県に足を運び、名古屋大学の一般講座「アレルギー大学」に参加。そこで食物アレルギーを持つ子どもの親たちの、子を守りたいという必死な思いに触れた。「皆さんの真剣な様子を見て、醸造メーカーとして真剣に大豆と小麦を使わない調味料を作らなければ、という使命感を抱きました」と振り返る。

話を聞くと、皆さんが欲しいのはまず醤油だということが分かり、羽田部長が中心となって平成21年から本格的に開発をスタートした。実は当時から雑穀を使った味噌や醤油は存在していたが、価格が高く、おいしくないという評判だった。そこで、同社は「おいしくて、安い」を基本テーマとし開発を始めた。

「大豆・小麦を使わないしょうゆ」は1ℓ1,080円で販売。一般的な醤油と比べると高いが、日常使いができる価格にこだわった。仕込みは全て手作業となる。

 

食研センター、新潟薬科大学との共同研究開発で活路がひらけた

味は醸造メーカーとして培った技術を活かすことで解決。そして価格を抑えるためには、材料は米と塩で作ることが一番だと考えた。少しでもタンパク質が入るように米は玄米を使用。最初は失敗の連続だったが、ある時、失敗からひとつの成果が生まれる。

発酵させたもろみを絞るとやはり醤油としては失敗だったが、残った部分が味噌のようになっていた。これをきっかけに、開発を味噌にシフト。平成24年に「大豆を使わないおみそ調味料」として発売し、各方面で大きな話題となった。

一方、行き詰まっていた醤油開発は、何度やっても「しょっぱいみりん」にしかならない。かすかな希望が見えたのは、材料に酒粕を加えたときだった。そこから新潟県農業総合研究所食品研究センター(以下、食研センター)に本格的に相談。平成28年度からは新市場創出・米加工技術等開発事業のプロジェクトとして採用され、同社と新潟県・食研センター、新潟薬科大学との共同開発がスタートした。

食研センターの小林研究員は「我々は材料をどのくらいの割合にすると良いかを探る配合実験を行い、山崎醸造さんの実験結果とすり合わせて、完成度を高めていくためのサポートを行いました。成分の分析を薬科大に依頼するなど、コンソーシアム全体の調整も担当しました」と話す。

酒粕に含まれるアルコールの処理方法や醤油らしい色を出すための仕込み方法など、独自の製法の確立によって「大豆・小麦を使わないしょうゆ」が完成。そのノウハウは新潟県と山崎醸造が共同で特許を出願している。

  • 商品画像1
  • 商品画像2

量産ラインがある程度整備できた「大豆を使わないおみそ調味料」は600g入りで648円。利益よりもまずは社会貢献を重視して展開している。

 

特許がアレルギー対応調味料の市場を拓くきっかけになれば

広井部長は「特許出願で食物アレルギー対応調味料というものがより周知されて、他社から新たな製品が続いてくれることを期待しています。中小企業である当社が出来ることは小さいですし、競争があってこそ、市場が生まれると思います」と話す。

醤油の製造工場では小麦や大豆を使用しているため、この「大豆・小麦を使わないしょうゆ」は専用の作業所で春に手作業で仕込みを行い、天然醸造を経て秋にもろみを絞るという年1回の生産。現在はまだ需要に供給が追い付いていない状況だが、まずは少しずつ仕込み量を増やし、必要としている人の元へ必要な量を届けられるように生産体制を構築することが責務だとしている。

こうして同社が長年の目標を達成できた要因は、最初に抱いた使命感を持ち続けたこと、そして食研センターや新潟薬科大学という専門家によるサポートがあったことだ。羽田部長は「先に発売した味噌についても、いつも通りに作ってうまくいかなかったときなどに小林さんに相談させていただいています。製造者とは違う切り口で考えていただけるので、とても参考になります」と話す。

市場での認知が進んでいる「大豆を使わないおみそ調味料」は、最近は加工業者から鍋つゆ用やラーメンのタレ用としての引き合いが増え、また給食で使用する味噌を全てこの味噌に切り替える幼稚園なども増えている。「大豆・小麦を使わないしょうゆ」のニーズもまた、さまざまな広がりを見せていくことだろう。

  • 商品画像3
  • 商品画像4
  • 工場画像1
  • 工場画像2

    山崎醸造では発酵技術を活かし、甘酒やみそ汁の素、トマト糀など、さまざまな商品を開発している。

  • 工場画像3

 

ポイント

  • 国の交付金を利用し、産官学のプロジェクトで共同開発
  • 食物アレルギーに悩む人や専門家の話を聞き、ニーズをしっかりとつかむ
  • 調味料という日々使うものであることを踏まえた価格と品質を設定

 

MESSAGE
新潟県農業総合研究所 食品研究センター
園芸特産食品科 主任研究員 小林 和也 氏

以前からご相談をいただき、今回の醤油の開発でもお困りであるとのことでしたので、国の交付金を利用しての共同開発事業をご提案しました。新潟薬科大学に加わって頂いたことでエビデンスが得られ、また、製造段階でアレルギー物質が紛れ込んでいないかという交差汚染もチェックしていただけたので、安心・安全面でもサポートできたと思います。

 

企業情報

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FAX.0258-83-3001
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