株式会社大原鉄工所

2020年12月02日
NICOpress173号専門家等相談新商品・新技術開発

CAE活用による試作レスで時間とコストを圧縮
ユーザーニーズに応える新モデルを開発

大原鉄工所は工技総研・研究開発センターの協力を得て、欧米基準の強度を持つキャビンを備えたスキー場ゲレンデ整備用雪上車「RIZIN-雷刃」を開発。海外メーカーに対抗し、優れた機能とパフォーマンス、安全性で市場をリードする新モデルを完成させた。

代表取締役社長 大原興人 氏
技術・製造本部 製造管理部長 鈴木正人 氏
車両設計課 課長 馬場実 氏

「ROPSのことも何も分からず、手探り状態だった我々にとって工技総研は本当に頼りになる存在でした」と話す大原社長(写真中央)、鈴木部長(写真右)、馬場課長(写真左)。青い車体は整備点検中のRIZINの上位機種「FUJIN 風刃」だ。

工技総研との共同研究で欧州基準のキャビン強度を実現

大原鉄工所は1951年(昭和26年)に国内で初めての雪上車の開発に成功して以来、日本唯一の雪上車メーカーとして事業を展開。ゲレンデ整備用雪上車や電気・通信会社向けの小型雪上車から、自衛隊用雪上車、南極観測用雪上車などの特殊車両まで手掛けている。

同社のゲレンデ整備用雪上車の最新モデル「RIZIN 雷刃」は排ガス規制に対応した環境性能を有し、そのハイパフォーマンスを誇る機能やモダンで斬新な車体のデザイン性が評価されて2017年度グッドデザイン賞を受賞した。このモデルの開発にあたり、同社が新たに挑戦したのがより強度が高く、安全性が高いキャビン(操縦室)の実現だった。

大原社長は「今後のためには、いかにお客様へのアピールポイントを作るかが大事。競合はドイツやイタリアのメーカーになります。そこで注目したのがヨーロッパの安全規格であるROPS(ロップス)※1です。日本ではこのような基準はないのですが、安全性を追求するためにも新しいモデルから実現させようと考えました」と、その狙いを振り返る。

ROPSでは雪上車が転倒した場合でも、キャビンがつぶれることなく、操縦者が守られる強度が求められる。しかし、同社ではどのように開発を進めれば、ROPSの基準をクリアできるのかが分からなかった。そこで相談したのが工技総研だった。

シミュレーションによるキャビンの強度解析結果。構造パーツに加わっている力の強さが色で分かり、これを基に設計を改善していく。

解析のもとにした設計CAD

 

テスト解析はシミュレーションで実物を使った試験は1回のみ

キャビンの強度を調べる場合、本来ならキャビンを試作し、そこに基準に従った負荷をかけて、その変形を調べる必要がある。工技総研が提案したのは、そこにシミュレーション技術を活用し、コンピュータ上で負荷テストを行うというものだ。

このプロジェクトは平成22年度の共同研究事業として進められ、工技総研がCAE※2によるROPS試験シミュレーションシステムを開発。大原鉄工所が作成した3次元CADの設計データを使って、工技総研がROPS シミュレーションを行い、その結果をもとに両者で設計の修正を行う、という作業を1年間で約60回繰り返した。

工技総研の須貝専門研究員は「工技総研はプレス加工など、金属を大きく塑性変形させるシミュレーションを得意としています。今回のキャビンに負荷をかけるという状況も、板の集合体の変形を解析するということ。これまでの研究の蓄積を基にシステムを構築できました。最後に1回だけ、本物のキャビンを試作しての試験を行ったのですが、キャビンがたわんでできるシワのひとつまでシミュレーションと同じ結果を出せました」と話す。

キャビンを試作して実際に試験をしたとすると膨大な費用がかかっていたことになる。また、設計データや解析結果を、紙図面を使わず、デジタルデータとして、ネットを介してやり取りすることで、労力面でも大幅に効率よく進行できた。

CAEによってシミュレーションされた完成品の実験結果(左)と、実際の躯体を使ってROPS試験を行った結果の写真。シワの入り方まで見事に一致した。

 

CG技術を活用し、操作性、安全性、ビジュアルを備えたモデルに

鈴木部長は「手探り状態から始まった研究開発だったので、須貝さんはその解析手法の構築に苦労されたと思います。これだけ複雑な解析を行うのはそれだけの設備と知識がないと出来ません。今回、RIZINを作りあげられたのは会社からチャンスをいただけたからですが、そのチャンスを活かすことができたのは、工技総研のサポートがあったから。資金面でも、支援機関の存在がなければRIZINは無かったと思います。困ったときはまず工技総研に相談してみると、必ず何か解決の糸口が得られると思います」と振り返る。

同社では以前から材料試験などで工技総研を利用してきた。そのなかでCAEの情報も知っていたことで、よりスムーズに相談ができたという。馬場課長は「当社は生産台数が少ないので、部材や内装材などを少量でも加工できる方法を教えていただいたり、それができる業者さんをご紹介いただいたりして、非常に助かっています」と話す。

RIZINは車体デザインを長岡造形大学の前学長、和田氏に依頼。操縦者にとってよりよい視界確保のためのミラーの位置や、ライトの設置場所の検討なども、工技総研の協力を得てCGによって検討した。これにより、ビジュアル、安全性、環境性、機能性など全てにおいて格段にバージョンアップした新モデルが完成。大原社長は「ゲレンデ整備のオペレーターは人手不足というのも業界の課題で、誰でも使いやすくて、見た目も良くて、乗ってもいいかなと思える機種に仕上げる狙いもあった。RIZINはそのニーズにも応える機種になったと思います」と話す。市場への本格的なアピールはこれから。今後の反響にも大いに期待したい。

  • ※1 ROPS(Roll-Over Protective Structure)=転倒時運転者保護構造
  • ※2 CAE(Computer Aided Engineering)研究・開発工程においてコンピュータ上の試作品で予測・分析する技術

シャープなフォルムに、シャンパンゴールドのカラーがスタイリッシュなRIZIN(雷刃)。夜間に長時間、一人で作業することの多い操縦者が、より快適に操作できるよう操作部も一新。アニメのロボット戦闘機のコックピットを思わせるような機能的な空間になっている。

 

ポイント

  • これまでも困り事があると工技総研に相談。
    CAEへの取り組みも知っており、依頼に結びついた
  • 早くから3次元CADによる設計のデジタル化を進めたことで共同開発がスムーズに進行
  • CAE活用による試作レスで開発時間、開発費用を大幅に削減

 

MESSAGE
新潟県工業技術総合研究所 研究開発センター
専門研究員 須貝 裕之 氏

この開発では、最近盛んに取り上げられているDX(デジタルトランスフォーメーション)を8年も前に行っていたことになります。開発を行う際には試作の回数が多いほどよりよいアイデアが生み出される確率が高くなります。CAE は限られた時間とコストで、それを実現するツールだと思います。我々にとっても今回の取り組みは、大原鉄工所さんからチャンスを頂いたと思っています。

 

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