価値を認めてくれる市場へ思いを込めたアイテムを
プリンス工業株式会社
代表取締役 髙野 信雄 氏
自分で買うには少し高いがもらうとうれしいモノを
多彩なキッチンツールを開発、販売している三条市のプリンス工業。「毎日使うものを進化させる」というコンセプトのもと、IDSコンペや百年物語プロジェクトに参加し機能性とデザイン性の高い道具を次々と生み出し、首都圏での販路を開拓してきた。三越伊勢丹のハウスブランド「SEKItoWA」にも、同社のワインオープナー、ボトルオープナー、缶切りがラインナップされている。
高級志向の商品開発に注目した背景を、髙野社長は「人口が減少し、モノが売れなくなる時代には、単価の高いものを販売することが必要になってくる。そして、その商品は付加価値があって、お客様が喜ぶものでなければなりません。ひとつの方向として、自分では買えないけれどプレゼントされるとうれしい、というギフト需要を意識しています」と話す。
「日常に“幸(さち)”を届ける道具を提供していきたい。ユーザーが道具を手にしたとき、その思いまで伝わるものを作りたい」と語る髙野社長。月に売れる数が少なくても、商品の価値を理解し売ってくれる取引先に選ばれるような商品づくりをしたいという。
IDSコンペ、百年物語プロジェクトを通して市場を学び、販路が広がった
百年物語プロジェクトで開発に取り組んだ、1万2,000円のしゃもじ「宴(UTAGE)」もそのひとつ。東京の百貨店での実演販売でも反響があったほか、デベロッパーが首都圏の高級マンションの引渡し式で贈る記念品にも採用されている。「首都圏は求められるレベルが上。そして、値段が高い理由を明らかにしなければ売れません。新潟の物産展や、百貨店での実演販売の機会には、自分が寅さんになったように、誕生までのストーリーを丁寧にお客様に話します。その時に売れなくても、次のチャンスにつながります」。
首都圏マーケットへの意識や、そこで認められるものづくりのノウハウは、IDSコンペや百年物語プロジェクトから学んだと話す髙野社長。「販路に関しても、NICOが売り場と繋げてくれた。それが当社にとっても、大きなメリットになったと思います」。
社長が20年前に構想し、ようやく実現にこぎつけた高級しゃもじ「宴(UTAGE)」。展示会では、ご飯粒が全くつかないように加工したフッ素樹脂の表面、丈夫で美しい木の持ち手など、開発までのストーリーを社長自ら伝える。
ひとつのお気に入り商品が会社への関心を喚起する
販売先については、「定価で少数を扱う店舗が増えてきて、お店の人が大事に商品を育ててくれている。売り場が専門化してきている分、プロセスやストーリーがしっかりした商品が、時代には合っているのだと思います」と話す。
高級感あるアイテムが知名度を上げるにつれて、「これもおたくの商品なのね」と言われるなど、他の自社商品に興味が広がる相乗効果も感じているという。
創業から50年が過ぎ、「作り手の思いが伝わるものを作りたい」と話す髙野社長。「コンセプトがしっかりしたものをつくり、それを理解する人が買ってくださるのがいい。首都圏にはそれを理解してくれるお客様がいると思います」。
2010年の発表以来、人気が持続しているブラックカラーのキッチンツール「FD STYLE」シリーズ。シンプルなデザインと高い機能を兼ね備える。
企業情報
プリンス工業株式会社
〒955-0814 三条市金子新田313-1
TEL.0256-33-0384 FAX.0256-35-2826
URL http://prince-kk.jp/