マシニングセンタの生産性向上を実現する新技術を開発
エヌ・エス・エス株式会社
代表取締役社長 中町 剛 氏/専務取締役 中町 圭介 氏
「サポイン事業」を活用し実用性の高い技術開発に挑戦
工作機械などの心臓部にあたるスピンドルの製造・販売を行うエヌ・エス・エス株式会社。精密ゲージの製造を手がけてきた歴史があり、そこで培った1000分の1ミリ単位を操る研削技術をもとに、1980年代からスピンドルの分野へ参入した。
同社では、「回転体」をキーワードに産業界に寄与できるものを開発し、商品化に結び付けようと、さまざまなテーマに取り組んでいる。そのなかで「高回転制御可能な高加減速クローズド制御、軽量高生産性スピンドルシステムの開発」が平成26・27年度のサポイン事業に採択された。
これは、マシニングセンタにおける工具交換時の回転・停止時間の短縮、スピンドルの軽量化による機械動作の高速化、高回転高加減速制御による加工時間の短縮を実現したもので、ダイレクトに生産性の向上につながる新技術となっている。
「サポイン事業は製造業をしていたら憧れの制度。研究開発はとても楽しかったです」と語る中町社長(左)。「コンピュータと職人技、両方の良さを活かし自社加工・組立の製品シェアも伸ばしたい」と話す中町専務(右)。
0.5秒で2万4千回転/分に到達 目標数値の達成にチームが湧く
これまで、何度かサポイン事業に応募したものの、落選が続いていたという同社。そこで今回は「お客様にとって、何が一番便利な技術なのか」という視点に立って、テーマを決めたという。自動車部品工場などでは、1秒の作業時間短縮が何百万円もの価値につながる。中町社長は「内容については最初から高い評価をいただきました。基本構想が優れていたから採択されたのだと思います」と話す。
早期の実用化を目指し、開発期間を2年で計画。NICOのコーディネートのもと、長岡技術科学大学、顧客、そして社内チームによって進めた開発は順調に進行。そのポイントについて中町専務はこう話す。「メイン研究を、マシニングセンタのツール交換作業を早くするための技術を集積した“カラクリボックス”と定め、まずはそこに注力しました。それが成功したことで、計画通りに進めたと思います」。
成果のひとつとして、スピンドルがこれまでの10分の1のパワーで、静止状態から0.5秒で2万4千回転/分まで一気に加速する回転を実現。この数値が出たときは、開発チームに歓声が上がったという。
サポイン事業で導入したライツ社の超高速、超高精度三次元測定機。世界最高レベルの性能の検査機器は、同社の強みにもなっている。
世に無いものを作ることが社員のモチべーションに
現在は試作から量産に入るための実地試験が始まりつつあり、自動車エンジン回りの部品加工機への採用を目指している。サポイン事業について、社長は「社員は自分たちが今までに無いものを作っていることの意味を実感して、イキイキと取り組んでいたように思います。成果発表会の時も多くの人に褒めていただいたのですが、これまでそんな機会はなかったので、皆うれしそうでした」と振り返った。また、専務は「国内では今のところ当社だけしか持ってない、世界トップレベルの高精度の三次元測定器を導入できたことも財産になりました。製品にさらなる自信を持って提供できます」と話す。
今後は、スピンドルのスピードや性能の向上、エネルギーを回転体に溜めて電池のように使うといった新技術の開発を目指している同社。開発力というスキルをさらに伸ばし、その存在感を高めていくことになるはずだ。
同社が手掛けるスピンドル。高い精度の加工が求められる。今後はスピンドル製品のラインナップを増やし、海外にも販路を広げたいとしている。
企業情報
エヌ・エス・エス株式会社
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