佐渡精密株式会社【プロジェクトチームを編成し、原価管理の精度を向上。社員の数字意識に変化】

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2024年06月06日
NICOpress194号専門家等に相談

プロジェクトチームを編成し、原価管理の精度を向上。
社員の数字意識に変化

佐渡市で精密金属加工を手掛ける佐渡精密。航空機・宇宙関連や医療機器、光学機器、産業機械、半導体関連分野で、全国800社以上との取引がある。当初はカメラやコピー機部品の大量生産を手掛け、2003年ごろから多品種少量生産の精密加工へと事業を転換した同社。「新潟県よろず支援拠点」の伴走支援を受けるなかで浮彫りになってきたのが「個別原価管理」の考え方だった。

代表取締役社長 末武和典 氏
代表取締役社長 末武和典 氏

今回の取組では、私自身が一番学ばせていただいたと思います。他社のいろいろな事例を見ていると、同じ製造業のなかでも個別原価管理を自社内システムで作り上げ、生産性を飛躍させている会社があるので、今後もさらに改善を探っていきたいと思っています。

 

部品の個別原価の見直しで採算割れがあることが発覚

佐渡精密では2016年に末武社長が経営を引き継ぎ、幹部と共に現状分析や競合他社分析を行いながら事業成長のアクションプランを作成。目標を達成するために必要なアクションを見える化した戦略マップを社内共有し、具体的な課題に取り組んでいる。

その中で見えてきた課題の一つが、部品ごとの個別原価管理だった。「製造部門全体の稼働率向上や、時間生産性の向上を目指して、よろず支援拠点に相談していく中で、まずは個別原価管理の考え方を知ったほうがいい、というアドバイスをいただきました。いくら現場改善に取り組んでも、製品やプロジェクトごとの個別原価に落とし込まないと成果が見えてこないということでした。当社でも原価管理についての取組はあったものの、部門別の生産性や月別売上からトータルで利益が出たかどうかの結果を知るだけで、そこから改善すべきことを導くことはできていませんでした」。

そこで、社内横断型のプロジェクトチームを編成し、材料費や光熱費のほか、段取りや加工の時間、不良率なども見直したところ、これまで検査工程は原価としてカウントしていなかったことも浮かび上がってきた。すると、会社全体では利益が出ているが、実は個別で見てみると儲かっていない部品があることが分かった。ある医療用チタンプレートは、歩留まり改善のために工場内の4部門で順番に加工することにしていたが、今回改めて計算すると全く採算が合っていなかったという。社内で議論したところ、そもそも工程は3部門に集約できるという結果に。「段取りが一つ減りましたし、納期も短縮、加工コストも下がりました」。

120台以上の製造設備で24時間生産体制の様子

加工マシンが稼働しているときが価値を生む時間という意識のもと、稼働率を把握しながら生産性の向上を進めている。また、残業の少ない職員のやり方を参考に、時間がかかっていた段取りを分業化するなどの改善も実施。

120台以上の製造設備で24時間生産体制の様子

NICOの2023年度データ利活用型設備導入支援事業を活用し、工場内のマシンはIoTセンサーを取り付けて稼働率を見える化した。今回の原価管理の取組にも活用している。

 

お客様に根拠を示せる明確な見積りが可能に

チームで議論する中で、改善に対する意見が活発に出てきたことが印象的だったと末武社長は振り返る。「いろいろな人の目を入れることによって、そもそもどうしてこんな作業をしているのだろうとか、加工自体も違うやり方にした方が良い、これはアウトソーシングした方が良いなど、一人の視点では気づかない部分への提案も出てきて、とても効果的でした」。

また、同社では「人」というリソースを最大限に活用するためにも賃上げを実現し、そのための価格改定依頼も行っている。ここで必要になるのが根拠をしっかりと示せる個別原価計算ができる体制だった。「今回支援いただくまで、長年、変わらずに使用していた数値で計算していたのですが、私も改めて勉強して計算してみたら、これでは採算割れしている。現状は材料コストも電気代も上がっているので、本来ならば原価は変わらなければいけないはずなのに反映されていない訳です。このままではマズイという危機に気づかされました」。

そこで、計画原価の見積りを行うためのアワーレートをバージョンアップ。以前は製造部が見積り金額を出していたものを、製造部からは加工に係る時間を提示し、営業部が加工時間とアワーレートを基に見積書を作成する仕組みに変更。営業もお客様に価格の根拠を明確に説明でき、信頼にもつながっていく体制が出来上がった。

工場内の様子

工場内の様子

廃校を利用した工場は動線が課題だが、整理整頓や管理を工夫し対応。検査室へ製品を移動する時間を削減するため、定年後の社員を再雇用して調整した例も。

 

原価の見直しで工程も改善
新しい仕事も無理なく受注

現在は利幅が気になる部品をピックアップしては、ストップウォッチで加工時間を測るなど、アナログな方法で確認しているが、ゆくゆくはデジタル技術を使って自然な作業のなかでデータ収集をし、原価管理ができる仕組みにしていきたいと考えている。

さらに今回の取組では、次代の管理者になる若手メンバーを集め、月1回のペースで個別原価の考え方についてコーディネーターの支援を受けた。「将来的にこの社員たちが個別原価というものを当たり前に考えられるようになれば、さらに改善が一気に進むと思っています」。

今回、よろず支援拠点による伴走支援サポートを受けた効果として、自分たちが知らない考え方を教えてもらえたことが大きい、と末武社長。「コーディネーターさんが社員の目線に合わせて、伝わりやすい言葉で話してくれるのが良かったです。社員は部門を越えた横のつながりも強くなったようですし、各人が会社の数字を気にしながら仕事をするようになったと感じます」。

また、原価計算を見直していくことで、時間がかかっていた段取りを分業化するなど製造部門の改善が進み、稼働率も上がって現場にも余裕が生まれた。そのおかげで、顧客の急な注文増にも対応できたという。

「こうして生産性を高めていくことで、お客様に選んでもらえる会社でいられると思いますし、利益を確保し、社員への還元を進めることで、我々が課題としている、新たな人たちにも選んでもらえる会社になっていけると思います」。

120台以上の製造設備で24時間生産体制の様子

佐渡精密は航空機のジェットエンジンや、医療用の内視鏡の部品など、高い精度が求められる精密部品加工に対応。120台以上の製造設備で24時間生産体制を完備する。

 

ポイント

  • 個別原価の見直しによって製造工程の改善・作業効率化も実現。
  • アワーレートをバージョンアップし、根拠ある原価による見積りが示せるように。
  • 若手社員にも個別原価管理の考え方を定着させ、社員も数字を意識するように変化。

 

企業情報

佐渡精密株式会社NICOクラブ会員

佐渡市沢根23-1
TEL.0259-52-6115
URL https://www.sadoseimitsu.co.jp/

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