ウッド・ハブ合同会社【創業から7年目 伴走支援を通じて今後の方向性を明確にする。】

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2023年06月08日
NICOpress188号創業専門家等に相談販路開拓(国内)

契約前工程における有償サポートサービスの開発

ウッド・ハブは木質構造建築の構造設計や、接合金具の開発などを手掛ける会社で、令和3~4年度にベンチャー企業枠でNICOの伴走支援事業の支援を受けた。創業時のスタートダッシュが一段落したタイミングでの支援では、ベンチャー企業ならではの課題が見え、これからの道筋を見出す大きなきっかけとなったようだ。

代表 實成康治 氏

「当社は業務内容が専門的で、収益構造も分かりにくいので、伴走支援チームの皆さんは本当に大変だったと思います。小さい会社なので、アドバイスを受けたら即断即決できるし、スピード感を持って対応できたことが成果につながったと感じています」と話す實成代表。

ヒアリングで幾度も聞かれたのは「そもそも何をしたいのか」

ウッド・ハブは、大規模木造建築の設計・施工や建築用接合金具の開発などに携わってきた實成代表が、2015年に独立して創業した合同会社だ。現在は構造設計の受託業務をメインに、接合金具の開発サポートや、建材商社などへのコンサルタント業務を請け負っている。

今回、伴走支援事業を受けることになったきっかけはNICOからの提案だった。實成代表は「当社は私が創業者でどうしても独善的になるというか、見方が偏るというか、私の意見に社員が異を唱えることができにくい環境だと思ったので、会社を客観的に見てもらう良い機会だと捉えました。タイミングとしても、創業から少し落ち着いてきて踊り場に出た感覚があり、今後どういう方向に舵を取っていけばいいのかという悩みもあり、支援を受けてみたいと思いました」と振り返る。

1年目は課題の洗い出しのため、概ね月1回のペースでヒアリングが行われた。収益構造や社内の状況などを把握していく中、代表が幾度も聞かれたというのが「そもそも何をしたいのか」という質問。「商売をしていると日々の業務に追われて、何をしたくて創業したのかという軸がぶれるところがあり、自問自答する時間もない。それを第三者に向かって表現することで考えを整理できたと思います」。

さらに、これまでは自身の感覚で事業を進め、目標や、やりたいことは自分の中にしかない状態で、組織的な会社運営がやりにくい環境にあったという。ヒアリングを通して社員と協業できる業務、自分にしかできない業務というそれぞれの持ち場を明確にすることもできたと話す。

社員が集まり会社の方向性を考え、共有するミーティングを定期的に開催。将来の事業展開を共有しながら業務を進めていく。社員も「これまで皆で事業の先のことを考えたり、目標を立てたりしたことはなかった。自分自身についても先々どうなりたいかと考えたことがなかったので、いろいろな気づきがありました」と感想を話していた。

作成したコンサルティング業務の提案メニュー。営業や設計のアドバイスのほか、オプションメニューで構造設計や法令関連など専門要素を教えるセミナー、OJT研修なども展開。顧客の成果を導きながら、横展開して新たなクライアント獲得を目指していく。

 

コンサルメニューの見える化と方向性の社内共有化がテーマに

課題の洗い出しを経て、ウッド・ハブでは支援2年目に取り組む二つのテーマを設定。一つが「プレカット工場・建材商社に向けたコンサルタント業務の見える化」、もう一つが「会社の方向性の社内共有化」だ。

コンサルタント業務の見える化は、今後の会社の方向性を見定めるなかで出てきたテーマだった。構造設計の仕事での売上は時間に比例するので、売上を伸ばすには社員を増やすしかない。しかし専門性が高い仕事の上、人を増やせば仕事を入れ続けなければならず、そうして会社を大きくしていくのは自分が望む方向ではない、と實成代表は再確認したという。一方のコンサルタント業務を伸ばしていくことは、「建物の木質化の推進」という代表が望む方向性とも一致した。

これまでのコンサルタント業務では、クライアントの状況に応じて個別に内容を決めており、サービスメニューとして整理されていなかった。これらを体系的に見える化することにより、相手方の理解が進み、導入の近道になることが分かった。

メニュー化に向け、伴走支援チームも同行してクライアントの一つであるプレカット工場のニーズをリサーチ。プレカット工場は、依頼に応じて木材を加工するので、提供商材自体は他社も同じであり、価格競争に陥りやすい。そこで、店舗や保育園といった中規模建築に対応できるノウハウが得られれば、SDGsや脱炭素化に合った「鉄骨から木へ」というトレンドにも応えられ、プレカット工場にとって大きな強みになる。このような取組をコンサルティングでバックアップできるよう、伴走支援チームと共に、全国のプレカット工場等のクライアントに向けたサービスメニューを構築した。

ウッド・ハブでは木質構造建築の構造設計を請け負うほか、接合金具の開発や、建物に応じたオリジナル接合金具の開発コンサルティングも行っている。

 

時間をかけて話を聞いてくれる伴走支援は相性が良かった

メニュー化したサービスをクライアントに提示したところ、年間のサポートサービスに加え、オプションの社員向けセミナーも受注。先方からは選びやすく、上司への説明もしやすいとの声をいただいたそうだ。

もう一つの「会社の方向性の社内共有化」というテーマについては、伴走支援チームが社員のお二人に個別インタビューを実施し、「これからのウッド・ハブ」について、それぞれの思いを聞き出した。それを受けて、ここから会社をどうしていきたいかを社内共有し、将来の方向性についての定期ミーティングの場を設けていくことで話が進んでいる。實成代表は「私の口から“何をやりたい?”と聞いても、なかなか言いにくいところがスタッフにはあったと思います。外部の方が入ってくださることで、彼らが考えるきっかけになりました」と話す。

伴走支援に対しては「当社のように分かりにくい特殊な業態は、時間をかけないと内部の状況が把握できません。そういう意味では、じっくりと時間をかけて会社の現状を聞きだしてくれる伴走支援は相性が良かったと思います。成果も出はじめたのでこれから自分たちで横展開ができるように進めていきたい」と實成代表。今後、省エネ性能の高い住宅においては、耐震性強化のために壁・柱の構造基準が見直される法改正があり、構造計算のニーズが見込まれることから、同社が持つ独自のノウハウが求められる場面は増えていく。「木の建物という選択肢を増やしていく」という目標達成を目指し、次なるステップを歩み始めている。

最近では2022年10月新潟市西蒲区に誕生した住宅街「野きろの杜」の交流スペース「Life Site 野きろ」に設置されたデッキテラスの構造設計をウッド・ハブが担当した。

 

ポイント

  • 創業から一定の成果が出たタイミングで、会社の今後に向けた課題を洗い出し。
  • 何をやりたくて創業したのかという原点を再認識し、進む方向性を定め、会社の方向性を社内で共有。
  • 曖昧だったサービスをメニュー化し、今後の事業の柱として営業展開をスタート。

 

企業情報

ウッド・ハブ合同会社

三条市桜木町12-38 三条ものづくり学校201号室
TEL.0256-64-7588
URL https://woodhub-llc.com/

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