株式会社宮野食品工業所【原価管理の課題解決に注力。データによる経営判断ができる企業に】

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2023年06月08日
NICOpress188号専門家等に相談

データによる現状把握と意思決定

宮野食品工業所は看板商品の「しお豆」など豆の加工を主力に、惣菜や和菓子など多彩な商品を手掛ける食品メーカー。同社はNICOの伴走支援事業を活用し、これまで見えていなかった企業活動の課題を探索。社内が一丸となり解決に向けて取り組むことで業務改革の自発的な動きにつながった。

代表取締役社長 宮野紳一朗 氏

伴走支援事業を利用して良かったと話す宮野社長。「テクニックは学べますが、社員みんなの頑張りを利益へつなげようという意識やモチベーションが育たないと機能しません。今回はそこに必要なノウハウや考え方を教えてもらいました。経営判断に悩む会社も多いと思いますが、ぜひ支援を利用してほしいと思います」。

「真の経営課題」に気づき深掘り
原価管理などの課題を設定

1950年に製餡所として創業し、豆製品や和菓子、中華惣菜、おせち、弁当の製造・販売など時代とともに商品の幅を広げてきた宮野食品工業所。同社は令和3~4年度のNICOの伴走支援事業を活用し、会社が抱える本質的な経営課題の洗い出しとその解決に着手した。「NICOさんには、以前から広報や販路開拓などをご相談してきました。伴走支援事業もNICOさんから紹介していただいたのがきっかけです」と宮野社長。支援の1年目は、月2回のペースで社長を中心に幹部、社員に対して伴走支援チームが丁寧にインタビューを行い、さまざまな視点から経営課題を洗い出し、集中して取り組むべき課題テーマを特定していった。

「私は以前から社員たちに主体的に考えて行動してほしい、自立した組織になってほしいと考えており、それができていないことが課題だと感じていました。社員に個別インタビューした伴走支援チームの方から、“多くの優秀な社員が、それぞれの思いを内に秘めながら仕事をしている”と言われ、改めて私がワンマンだということに気づきました。主体的に動いてと社員に言いつつ、その環境を与えていないのではというのが最初の大きな反省でした」。さらに、現状を深掘りしていくうちに見えてきたのが、あいまいな原価管理と経験や勘による業務の意思決定だった。「取引内容や製造方針を選択するときに、何を基準にするのかという経営的視点からの共通の物差しがなく、感覚で判断していた。そこで、会社として利益が出るかどうか、品質をよりよくするためにどう製造するのか、そうした基準を数値にして“見える化”することを課題として設定しました」。

今回取り組んだ製造原価の見える化は、「しお豆」をはじめメンマ、高菜、ザーサイなど、売上の中心を担う商品に展開。

各工程のコストを明確にすることで、製造に負荷がかかり利益が上がっていなかった商品の見直しや、営業の価格設定も最適なものかチェックするなど、データを軸にした意思決定ができるようになった。

発売50年を超えるロングセラー商品「しお豆」は、同社の看板商品。伝統の技術を活かし、硬い豆をふっくら柔らかく仕上げている。

 

製造や流通の経費を洗い出し
社員の意識にも変化が

同事業の2年目は、課題解決に向けて社内にプロジェクトチームを結成。数値による現状把握(製造原価の見える化)を軸にした意思決定ができることを目標に、看板商品である「しお豆」から着手。主力7商品について分析を進め、これまで感覚で捉えていた製造原価の内訳、取引先別の収益状況等を可視化していった。

製造にかかる時間やコストを洗い出し、標準化を進めたプロジェクトチームの澁谷製造部長は「当社の商品は手作業の工程が多く、人によって作業の早い、遅いがあるため、工程にかかる時間を標準化するのが大変でした。また、日持ちしない商品は顧客先からの注文を受けてから製造するため、作る量によってコストが変わってくる。目安とするロットの設定も悩みどころでした」と話す。また、総務部の朝熊氏も「300社近くある取引先ごとに配送費などの経費を全て洗い出しました。取引先によって条件の異なる細かな作業で苦労しました。これまで大体の原価は把握していましたが、明確な数字が分かり、時間をかけても見直しができて良かったと感じています」と話す。原材料費や労務費などさまざまな経費がデータとして見えるようになったことで、製造部門の業務改善や効率化につながり、営業を強化する商品の判断も戦略的に行えるようになった。

こうして社員自ら課題解決のプロセスを体験したことで「会社の成長を考える」という意識が徐々に浸透。「意識の高い社員が増えていくと現場も変わってくる。その後ろ盾としてデータがあるということは、成長の力にもなります」と宮野社長は話す。

「外部の力を借りることで、ある程度の成果を見据えた製造計画を立てられるようになり、計画の見直しもしやすくなりました。製造の仕事は日々繰り返しが多いので、作業者のレベルアップやモチベーションを高めることにもつながると思います」と話す澁谷製造部長(写真右)。「いつかやらなければいけないと思いつつ、できなかった部分に着手できて良かった。この支援を通してスキルや考え方を学ばせていただきました」と話す総務部の朝熊氏(写真左)。

 

課題設定と解決で得た経験から次の改善へ動き出す

小売業界をはじめ取引先との信頼関係も厚く、2019年には工場を増築し生産基盤を整えてきた同社だが、伴走支援により改善の余地がまだあると理解できたことは大きな成果だと宮野社長は言う。「今回のような取組を、我々のような中小企業が単独で行っても、うまく進まなかった。原価を正しく出すには非常に手間とコストがかかるので、当社の規模でできるのかと最初は思っていました。伴走支援チームの方から“我々は伴走でしかない。やるのは皆さんですよ”とやり方をサポートしてもらい何とか完走できました。また、取組を通して究極のリーダー教育ができたと感じています」。

データを軸にした意思決定や、経営的な視点で判断ができる社員が育っていく体制ができつつあるなか、支援終了後もさらに多くの品目を対象に、より踏み込んだ原価管理のプロジェクトを進めている。「2006年に買収した和菓子の製菓工場が軌道に乗りつつあるので、売る環境が整えばもっと伸ばせるはず。各現場で社員たちが判断し、コストを意識して製造できるようになってきたので、成長の素地は確実にできたと感じています」。

今後はネット販売を強化するなどBtoCにも注力し、技術力・開発力を打ち出した品質の高い商品を、直接お客様に届けていきたいという宮野社長。「世の中になくてはならない会社」として100年企業を目指し、さらなる変革を進めてゆく。

製餡技術と素材や製法にこだわった和菓子は定評があり、売上も好調。

 

ポイント

  • 伴走支援チームとの対話を繰り返すことで、目に見えなかった課題を抽出。
  • サポートを受けながら、プロジェクトチームの社員自らが課題解決へのプロセスを実践。
  • 製造原価、取引先別の収益状況等を可視化。データを軸に意思決定ができ、会社の成長を考える組織へ進化。

 

企業情報NICOクラブ会員

株式会社宮野食品工業所

新発田市中田町3-1297-1
TEL.0254-22-3322
URL https://www.miyano-mame.jp/

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