株式会社青海製作所【事業が拡大する中であえて立ち止まり、課題を点検。さらなる飛躍への基盤をつくる。】

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2023年06月08日
NICOpress188号専門家等に相談

経営レベルでのPDCA構築と情報共有レベルの格差解消

金属の超精密切削加工技術を生かして部品の開発・製造を手掛ける青海製作所。自動車や医療分野をはじめ、半導体などの先進分野で事業を拡大する一方で、経営戦略や情報の共有において課題を抱えていた。令和2~3年度にかけてNICOの伴走支援事業を活用し、課題を洗い出したことで組織力に変化が起こり始めている。

代表取締役 青海剛 氏
品質保証部部長 松井智宏 氏

「これからも高付加価値製品によって社会に貢献し、社員が幸せを感じられる企業に成長していきたい。伴走支援をきっかけに部課長の意識や社内の雰囲気が変わり始めています。目指すべき姿になれるよう、もっと変わっていきたいです」と話す青海社長(写真左)と松井部長(写真右)。

目標共有や連携に課題
会社が目指す姿を再認識

青海製作所は、超微細加工や難削材加工において高い評価を得ている企業。例えば「金属に髪の毛よりも細い穴を開ける」などの超高精度の加工を実現する。こうした技術力を強みに、着実に取引分野を拡大。それに伴い従業員数も急増していったと青海社長は話す。「この10年間で従業員数は約2倍になりました。事業が拡大する一方で社員教育が追いつかず、経営戦略が一般社員にまで伝わっていないという実感がありました。NICOさんには以前から海外展開等でお世話になっていて、今回の伴走支援も挑戦してみようと考えました」。

まずは青海社長が伴走支援チームから経営の現状についてインタビューを受けたのち、部課長7名がプロジェクトチームを結成し、月1回の会議を行った。会議では、課題を洗い出しながら企業が実現したい未来や目指すべき姿、そこに向かうための目標を明確化。それらを社内でどう共有していくかという話し合いからスタートした。プロジェクト遂行の中心的役割を担う松井部長は「自分たちの目指すべき姿として、『企業の将来像が共有化されている組織』『情報と物の流れが見えている組織』『誰が何をやっているか見える組織』『自分の役割が分かっている組織』『各種業務が数値化され、それが共通言語になる組織』を目標に掲げました」と話す。実現には部門間の情報・目標共有が必須だが、長年根付いた企業風土がそれを難しくしていた。「『絶対品質』をモットーに技術を構築してきたが、昔ながらの職人気質の人も多く、良い技術を持っていても共有・継承されておらず、部門間の連携不足や、担当者による品質の差も少なからずありました」と青海社長は振り返る。

社内のDX化と情報一元化のためにiPadを導入。作業の属人化や品質のばらつきを改善し、技術の底上げや効率化を目指す(写真左)。品質管理・改善活動(QC活動)では工場内に設置したホワイトボードに改善点を集めて共有。社員の意識が変わり、業務をシェアし合うなど生産性改善や残業削減につながっている(写真上)。

 

伴走支援チームのサポートを受け目標達成へのプロセスを学ぶ

毎月の会議では、SWOT分析による強み・弱みの洗い出し、部門ごとの課題発見や課題解決に取り組んだ。「担当者レベルだった部門間の交流を組織全体で見直しました。BSC(バランススコアカード)も活用し、『顧客』『財務』『業務プロセス』『学習と成長』という4つの視点で戦略目標を立て、目標達成へ向けて実行するタイムスケジュールを作成し、数値化できるところは目標値の設定に落とし込んでいきました」と松井部長。さらに議論を深めながら現在の経営状況と5年後、10年後の将来を見据えてBSCをアップデートしていった。「MBO(目標管理制度)も導入しましたが、そうした手法はどれも初めてで進め方が分かりませんでした。伴走支援チームに示していただいた他社の事例を参考に取り組むことができたのが良かったです」。

精密加工技術でオンリーワンを目指す青海製作所。肉眼でも見えにくいほど極小の部品加工も数多く手掛ける。分業制ではなく1人が全工程を担い、常に新たな案件に対応することで一流の技術者が育っている。

 

個人の技量や裁量に委ねられていた情報を共有

プロジェクトチームで話し合われた内容は、現場の状況とすり合わせて、解決に向けた行動に移した。常に技術とスピードが求められる同社は分業制ではなく、1つの製品を1人の技術者が担い、工程設計、刃物の選択、プログラム作成、削り出し、品質検査を行っている。そのため同じ製品でも人によって作り方が異なり、また多品種・小ロットで試作品も多いため、マニュアル化も難しかった。

属人化や品質のばらつきを改善するために、社内でもトップレベルの技術を持つ社員の作業手順などから情報を収集。プログラムの自動化を進めた。また、作業中の図面確認を1人1台支給されたiPadからサーバを通じて閲覧可能にすることで、数多くの切削機が並ぶ工場内の移動を減らし、情報の共有と効率化につなげた。

あらゆる金属素材の超微細加工や難削材加工にも素早く対応できるように工場には数多くの切削機が並ぶ。整理整頓された現場のほかに、福利厚生施設も充実しており、社員の働きやすさに細やかに配慮している。

 

個人プレーからチームプレーに
社内の変化を実感

さらに伴走支援を通じて、現場では主任や係長をリーダーに5〜6人ずつのチームを作り、日々の業務で気づいた改善点を共有する品質管理・改善活動(QC活動)を開始した。「グループごとの連携が活発化し、個人プレーからチームプレーに少しずつ意識が変わっているのを感じます」と松井部長。青海社長も「課題をチームで共有し、改善に向けて話し合うようになったことは大きな進歩」と社内の変化を実感している。

現在、同社が主力とする自動車関連部品は、ガソリンからEVへの転換期であり、医療分野も海外展開をメインに最先端医療機器に搭載される高クラス部品の開発・製造でさらなる競争が見込まれている。「企業の将来像を見据えた情報共有や目標共有、組織づくりは目の前の仕事を優先して後回しになりがちな部分なので、長期的に専門家の方に入っていただき、進めることができてありがたかったです。今の私たちにもってこいの事業だったと思います。今後も今回の伴走支援事業での取組が継続・定着することを期待しています」。

製造体制のDX化も進めている同社。高い技術力と今回の取組で強化された社内体制を両輪に据え、これからも走り続ける。

世界屈指のドイツ製三次元座標測定機をはじめ、各種測定機を保有。
万全の品質保証体制によって厳しい精度要求に応えることができる。

 

ポイント

  • プロジェクトチームを結成して企業の目指すべき方向を明確化し、課題を設定。
  • BSCなどのマネジメント手法を用い課題解決へ具体的な行動を計画。
  • QC活動で課題を共有することで、改善に向けて行動する組織へ進化。

 

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株式会社青海製作所

新潟市南区下曲通字中江下787
TEL.025-371-1510
URL https://www.aomi-ss.jp/

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