南魚沼の希少な椎茸を商品に。
豊かな恵みと生産者の思いを伝えたい
昭和2年創業の小玉屋は、「幸せは食から」を理念に掲げる地域に密着したファミリーレストラン。地元の生産者が育てた食材を発信しようと、初めて商品開発に取り組んだ。昨年、プレミアムしいたけの加工品を発売、南魚沼の新たな特産品として期待されている。
取締役 ホール統括 小島 藍子 氏
「初めての加工品開発は全てが大変でしたが、市役所や商工会をはじめ、よろず支援拠点など、いろいろな人たちのおかげで、ここにしかない商品ができたということが一番の成果かもしれません」と語る、小玉屋4代目の小島専務(写真右)と藍子氏(写真左)。写真中央は3月発売の詰め合わせギフト。常温で流通できるため、お土産としての期待も高まる。
お土産品の要望に応えるため
「天恵菇」の加工品開発に挑戦
JR浦佐駅前にあるファミリーダイニング小玉屋は、親子3代で楽しめる多彩なメニューと地元の食材にこだわった手作りの料理を提供するレストラン。同店は、南魚沼産の「天恵菇(てんけいこ)」というしいたけを使用した自社商品「山のあわび」を開発し、注目を集めている。 大きさ・肉厚・旨味の3拍子揃った天恵菇は、「日本茸師(なばし)の会」というしいたけ栽培のプロ集団等が開発した品種で、栽培の難しさから全国でも10軒ほどしか生産していないプレミアムしいたけ。同店では、7年前から南魚沼市の八色しいたけ事業協同組合が生産する天恵菇を、刺身として提供してきた。「食感のよさ、きめ細やかな肉質、上品な香りがあって旨味が強いとお客様に好評で、遠方から来られるお客様からは“持ち帰りたい”という声を多くいただいていました。お土産になる商品があれば喜んでもらえるのではないかと考えていたところ、地域資源の商品化を目指すためのセミナーが市の事業で開催されることを知り、そこに参加して商品を開発することにしたのです」と小島専務は語る。
大きくて肉厚、太い軸が特徴の天恵菇は、生産量が限られている希少なしいたけ。
未利用だったしいたけの軸を活用
3種類の瓶詰めが完成
商品化に向けてまず課題となったのが、もともと生産量が少ない天恵菇をいかに確保できるかということだった。そこで、刺身にする際に余ってしまう太い軸を調理してみたところ、普通のしいたけにはない食感や旨味を引き出せたことから、かさの部分だけでなく軸も利用することにした。さらに、南魚沼市で天恵菇のみを一年中栽培する、全国でただ一軒の生産者「牛木きのこ園」からの提供も受けることが決まった。 天恵菇の味付けは、和食からイタリアンまで幅広い料理を提供する同店ならではの技術を活かし、「山椒漬け」「ガーリックとハーブのマリネ」「神楽南蛮味噌」の3種類を考案。小島専務は「味の幅を思いきり広げたいと思い、この3種類を作りました。調味液は全て自社で作っていますし、しいたけのかさと軸とで火の入れ方も変えています」と話す。 商品の完成まであと一歩となった2019年には、マーケティングを目的にフードメッセinにいがたに出展。そこで商工会からよろず支援拠点を紹介され、サポートを受けることになった。「パッケージデザインや名称、価格、見せ方、ターゲットなどについて、いろいろなアドバイスをいただきました」と藍子氏。小島専務も「希少なしいたけを使うため、価格をそれなりに高く設定すると、パッケージが肝になると感じていましたが、自分たちだけで考えるには限界があったので助かりました」と話すように、専門家のアドバイスを受けながら、パッケージや新しいロゴマークのデザイン制作に取組んだ。 こうして初めての自社商品が完成し、2020年10月に販売を開始。翌11月に開催された「フードメッセinにいがた」の6次化大賞に出品すると、グランプリと特別協賛企業賞のJALUX賞のダブル受賞を果たした。「専門家の方々から直接いろいろな意見をいただけて、貴重な体験でした。この受賞で、サポートをしてくれた市役所のみなさんに恩返しできたことが一番嬉しかったです」と藍子氏は語る。
「山のあわび」は日本酒やワインのおつまみに、ごはんのお供にと幅広く楽しめる3種の味がある。パッケージデザインは、専門家のアドバイスをもとに考案。ロゴマークのイラストは、小島専務の祖父が描いた八海山の絵を取り入れた。
南魚沼に来てもらうことを目標に
地元の食材や生産者を紹介
今回のコロナウイルス禍でレストランの売上にも影響があったことから、「山のあわび」が少しずつ認知され、受注も増えていることが心強いという藍子氏。「ぽんしゅ館」をはじめ近隣地域での取扱いが広がり、ECサイトでの販売も開始。最近では新潟伊勢丹の「越品」、市のふるさと納税の返礼品にも採用されるなど、販路が広がりつつある。 さらに、この3月から天恵菇のかさを刺身用に加工した新商品を発売した。「かさの部分を丸ごと1個使っているので、大きさも分かってもらえると思います」「天恵菇は普通のしいたけよりも旨味が3倍あるといわれています。本物のアワビに負けない旨味と食感を感じてもらいたいです」と2人が話すように、希少価値を打ち出した商品を今後は首都圏でも販売していきたいという。 また、地域に密着したレストランとして、地元の食材にこだわってきた同店では、南魚沼・大和地区のさまざまな食材や産地を紹介するマップ、生産者を直接取材したレポートの紹介カードなどを来店者に向けて作っている。「地元の食材や生産者さんの思いを発信していきたいという目標の中に、自社商品もあるのです。私たちが目指すのは、商品を通して南魚沼に興味を持ってもらい、この浦佐まで足を運んでもらうこと。それを目標にこれからも商品づくりをしていきます」と小島専務。この地域にしかない食材を付加価値を高めた商品に昇華させ、南魚沼の魅力を全国に発信していく。
南魚沼地域の魅力や生産者の思いを食事とともに感じてもらえるように、宴会用の敷き紙(写真右)には地元の食材や生産者を紹介するマップを掲載。生産者を取材した紹介カードも店内に設置している。
企業情報
株式会社小玉屋
〒949-7302 南魚沼市浦佐1355-1
TEL/FAX.025-777-2072
URL http://fd-kodamaya.com/