生産・作業工程におけるトレーサビリティを実現するデジタルトルクレンチ
株式会社アドレック
代表取締役 渡邉 泰則 氏
自社開発商品としてトルクレンチに注目
アドレックは、機械部品製造業として歩んでいる渡邉製作所の子会社として、2010年に設立した会社です。渡邉製作所では、18年前から自社製品としてトルクレンチの開発に取り組んできました。その事業の発展を目指すため、ブランド名を「アドレック」としたもので、現在「デジタルトルクレンチ」の製品開発・販売を手がけています。
創業以来、いわゆる下請けとして仕事をしてきたなかで、私自身の夢として「将来は自社商品を持ちたい」という思いがありました。何を作ろうかと技術顧問とも相談したなかで、デジタルトルクレンチに注目した訳です。渡邉製作所の取引先にトルクレンチの販売を手がける会社があり、仕事を請け負っていくなかで、社内にトルクレンチに関する知識が蓄積されていました。そこで、その取引先に「バッティングするような商品は作りません」という話をして了解をいただき、社内で商品開発に取り組み始めたというのが開発に至る背景です。
トルクレンチは、ボルトナットを装着する際の締め付けの加減を測り、正確な作業をサポートする道具です。かなりニッチな商品ですが、他とは異なる性能を持たせれば、可能性があると考えました。
ハイブリッド型 トルクレンチ
ネジの締め付け作業の際、トルク(回す力、ねじる力)、角度を測定し、規定の数値で締め付けが完了できるようにサポートする機器。6000回分のデータを記録でき、無線で管理パソコン(Excel)へのデータ転送ができる。時間、作業者、測定値が記録されるので、工場や工事現場における組立作業の確実なトレーサビリティ管理が可能。
ブザー音バイブレーション機能
締め付け作業を支援するバーグラフ&LED表示
ソフトの充実を図り「履歴を残す」ことに特化
当社のデジタルトルクレンチは、ネジを締めるときのトルクをバーグラフのほか、LEDランプ、ブザー、バイブレーションという視覚・聴覚・触覚で感じられるものになっています。3つの感覚に訴えれば騒音があっても作業者に確実に伝わりますし、光で知らせれば、夜間の屋外作業も可能となります。
そして、他社製品との差別化を狙ったのが「作業の履歴」です。これまでデジタルの製品で、作業記録を残すものはありましたが、当社ではそのデータをパソコンで有効的に活用できることを主眼に、ハードというよりは、ソフトの充実に重きを置いた訳です。
現在の「ハイブリッド型トルクレンチ」は無線でデータを送ることができるので、いつ、誰が、どんな作業を行ったという情報が、管理端末へリアルタイムで反映されます。また、管理ソフトの設計依頼を受けることも増えてきたので、オリジナルのパッケージソフト「デジプロマスタ」も開発。トレーサビリティ管理のほか、作業をナビゲートすることでミスを防止し、トルクレンチと連動させることでねじの締め忘れを防止するなど、生産の安定や効率化をサポートするということで、導入いただいたお客様からは好評をいただいています。
企業の要望に応えながらバージョンアップ
生産工程における「デジタルトレーサビリティ」のニーズは、大手企業様において高まってきていて、導入していただいているのもほとんどが大手企業様です。当社の製品も、最初からここまでのクオリティではなく、そうした企業からの要望に応える形でバージョンアップしてきました。
有線だったものを無線にしたきっかけは、展示会にご来場いただいていた某大手重工業様から、「無線のものを作ってくれたら買いたい」という話からで、2年後に出来上がったときには「これが欲しかった」と言われ、とてもうれしかったですね。また、最近ではお客様から「同じネジを2度締めてしまうこともあるのでは?」という意見をきっかけに、2度締め防止機能も開発しました。
時間をかけて培ってきた商品で着実な歩みを
当社の強みは、ハードとソフトの両方を手がけるメーカーであることです。製品は1本約10万円で、オプションとソフトを合わせると25万円ほどになります。5年前は価格が高いと言われることもありましたが、最近は全く言われなくなってきました。リピートで買っていただけるケースも多いので、価値を認めてもらえているのだと思っています。PRは主に展示会とホームページで、アプローチをいただくと6~7割が成約までいきます。
いま、大企業が取り組み始めた作業のトレーサビリティへの取り組みが、協力会社などへ広がっていく可能性もあるでしょうし、当社の商品アイテムや価格帯を広げることで、導入を考えていただける企業も出てくると思います。商品、サービスを充実させ、5~6年のうちに事業として軌道に乗せたいと思っています。
試作機が出来たのが2003年、初めて売れたのは3年後の2006年。無線機能がついたのが2010年で、2013年から現行モデルを販売しています。このように時間をかけてここまで来ました。投資が先行するものですし、本業があってこそ出来ることだと思います。これからも、デジタルトルクレンチのブランドとして広く認知されるよう、努力していきたいと思います。
新技術・新工法開発成功のポイント
- ソフトウェアで特色を出すことに注力
- ニーズを拾い上げ、商品に反映
- 開発は規模、スピードとも無理せずに進める
活用した支援メニュー
機械要素技術展(M-Tech)
NICOの共同出展による支援を活用して参加をはじめ、最近は自社ブースで出展。東京、大阪、名古屋の全会場に欠かさず参加している。最近は、話を聞きにくる来場者の多くが、事前に同社製品の下調べをしてくるそうで、その後の営業につながる出会いも多いという。
そのほか「新技術・新工法展示商談会」など展示商談会へ積極的に参加。
トレーサビリティ管理ツール
トルクと角度の関係をリアルタイムで分析・測定し、収集データをPCで管理できる。
LEDランプと大音響ブザーで作業状態を知らせるインジケータ仕様
左から段階警告、規定値、オーバートルク
デジタルトルクレンチ開発担当 株式会社アドレック 部長
五十嵐 昌和 氏
営業の際は、そのお客様が何を求めているのか、どこまでのレベルのものを求めているのかを感じとることを大切にしています。その声に応じて、ハードやソフトをカスタマイズしていくのが当社の強み。ハードだけ、ソフトだけの購入もありますが、「パッケージであるなら両方まとめて」というお客様もいらっしゃるので、やはりソフトを充実させたことが良い効果を生んでいると思っています。今後は価格を下げた商品展開によって、導入を検討いただけるお客様も増えると思うので、近いうちに実現したいと思っています。
企業情報
株式会社アドレック
〒959-1327 加茂市千刈1-1-12
TEL.0256-52-1160 FAX.0256-52-1146
URL http://www.adrec-jp.com/