超微細加工技術を長岡から世界市場へ発信する
株式会社サンシン
代表取締役 細貝 信和 氏
ナノレベルの磨きを施すテープ研磨に世界が注目
長岡市にある株式会社サンシンは、砥石をフィルムにコーティングしたテープで研磨する装置、精密面加工機の設計開発及び製造販売を行うメーカーだ。テープ式研磨はナノ単位で行われる超微細加工で、研磨の対象となるものは実に多彩である。同社の場合、最初は液晶、半導体、光ファイバーなどの電子産業を中心にスタートし、その後、次第に自動車産業へシフト。現在は売上の7~8割が、自動車や建機関連となっている。
いま、自動車業界においては燃費向上や、振動、異音防止が重要なテーマとなっており、それを解決するため、部品の面精度を上げることが不可欠になってきている。そこで注目を集めているのが、テープによる研磨だ。
細貝社長は「時代の要求のなかで、砥石研磨や旋盤研磨以上の精度が求められるようになり、当社の装置へのニーズが高まってきました。いよいよ当社の技術が、時代にフィットしてきたと感じています」と語る。
平面、球面、局面など、さまざまな形状の研磨のニーズに応える装置開発を行っている。写真はシャフトなどに対応する軸研磨装置。
ボールねじとナットの溝を磨く新技術を発表
同社は昨年、ボールねじの軸溝・ナット溝をテープ研磨する研磨装置を発表した。ボールねじとナットを組み合わせた機構は、車のパワーステアリングや工作機械など、さまざまなところで利用されている。
それを踏まえ、同社では3年前から開発を開始。平成26年度には、日本に加え、NICOの外国特許出願補助金を活用してアメリカとドイツでも特許申請を行った。細貝社長は「ハンドルの振動や異音を軽減するために必要な精度への要求をクリアできる画期的な技術で、世界でも通用すると考えました。特許を持つこと自体にメリットはないですが、ライバルメーカーに対する武器にはなります。防衛特許という意味合いが強いですね」と狙いを語る。
さらにボールねじとナットの機構は電気自動車にも使われるもので、「将来、自動車のエンジンがモーターに切り替わった際も、ニーズが減ることはない」という先を読んだ取り組みでもある。
「長岡でも世界市場に進出できるということを示し、実践していきたい。少数精鋭で、小さくでもピカリと光る会社を目指しています」と語る細貝社長。
三位一体の連携を組み事業化を進めていく
このボールねじとナットのテープ研磨装置の事業化を進めるため、サンシン、テープメーカー、商社の3社でプロジェクトを立ち上げ、昨年には経産省の新連携事業計画の認定を受けた。また、アメリカからはすでに特許認可が下り、今後、テープメーカーと共に、海外市場への売り込みも図っていく計画だ。
「小さな池の大きな鯉であれ」を経営ビジョンに掲げ、「長岡の小さな会社からでも、世界に発信できることを実践していきたい」と語る細貝社長。「テープ研磨業界はまだ小さな池ですが、まずはその中で世界一になること。池が広がっていけば、うちも一緒に成長していけると思っています」。
40年前、社長が新聞広告で研磨テープを知って「これだ」と直感したのが、この事業の始まりだったという同社。いま、時代の風を受けて、長岡から世界へ、大きく飛躍する時を迎えている。
ボールねじとナットの機構は、さまざまな場所で活用されている。ねじ溝やナットの内側の溝を磨く装置はこれまでになかったものだ。
企業情報
株式会社サンシン
〒940-1163 新潟県長岡市平島1-11
TEL.0258-22-1529 FAX.0258-23-2164
URL http://www.kksanshin.co.jp/