木のトレーサビリティを通して地元の木を知る機会を増やしたい
「生産履歴が木に表示してあれば、例えば親が建てた家を30年後に子どもがリフォームするとき、あの山の木を使ってあったのか、とルーツを遡ることもできる。木の良さを知ってもらい、地元の森に目を向けてもらう機会を増やしたい」と話す太田社長。
家を建てる人たちが木に興味を持つ仕掛けを
「夢を追いかけて、取り組みを始めたようなもので。これから利益を生むものへと進めていかなければならないと思っています」。そう話す太田社長は、現在、越後杉のブランド化と、木材のトレーサビリティシステムに取り組んでいる。始まりはエンドユーザーに「木」や「森林」に目を向けてもらいたいという思い。「家を建てても、使われている材木に興味を持つ人はほとんどいない。その木がどこで育った木なのか、施工業者も説明しない。その状況では木が可哀そうだと思ったんです」。さらに、新潟県産材には木の保育作業の枝打ちが十分でないものや、間伐材が多く、他県産と比べると良材が少ない。品質を上げることで販売が拡大し、林業も活発になっていけば、いい循環が生まれるのではないか。太田社長はNICOへ足を運び、アドバイスを受けながら挑戦を始めた。
越後杉のブランド化で信頼が増し、受注も増加
同社ではまず、厳しい自然環境の中、育つことで粘り強さを備えた越後杉に付加価値をつけようと、「越後長次郎杉」という名の自社ブランドを立ち上げた。製材後の木材には産地や樹齢、性能データといった生産履歴を表示。当初はシールを貼っていたが、生産性向上を目指し、ものづくり補助金を活用してインクジェットプリンターを導入した。
材木にトレーサビリティを導入するという画期的な取り組みは、業界やメディアからも注目され、引き合いも増加。さらに、自社の名前を出して出荷することで、社員も品質に気を遣うようになり、より良いものを送り出すことができるようになった。信頼も向上してきたと太田社長は話す。
システム会社と共にICタグによる木材情報追跡システムを構築
次に考えたのが、森で伐採された時点でICチップを丸太に埋め込むことで、伐採から製材、流通のデータ管理や追跡を可能にするアイデア。NICOで紹介された上越市のシステム会社との共同で、木に打ち込むICタグ「OHTAG(おータグ)」を開発した。今年はその情報を自動的に材木へ印刷するシステムを構築する計画だ。
将来的には、データを読むことでその木が育った森の写真が見れる、ネットで位置が分かるといった情報提供も面白いのではないかと夢は広がる。一方で、「今はようやく第一段階まで来たところ。次はいかに利益を生むものにしていくか。展示会で紹介し、導入したいという人が現れてくれるのを楽しみにしています」。
OHTAGは柏崎市が東京オリンピック・パラリンピック選手村に提供する柏崎産の杉に採用され、市有林での伐採時に打ち込まれたデータ情報のほか、材料として利用されるまでの履歴も確認できる。
OHTAGを打ち込んだ越後杉の丸太。いわゆる銘木ではなく、一般材に手をかけるということ自体が、これまでにない取り組みとして注目されている。
会社情報
株式会社太田材木店NICOクラブ会員
〒945-0022 柏崎市東原町12-2
TEL.0257-24-1511
FAX.0257-24-1512
URL http://oota-zaimokuten.com/