呉服業として創業後、着物のアフターケアに着目し、新しい需要を創造してきた株式会社きものブレイン。着物市場が縮小する中、さらなる成長を目指し、十日町の産業と観光を活性化するプロジェクトに取り組んでいる。
「きもの文化村」構想実現に向かって地域とともに成長を目指す
株式会社きものブレイン
代表取締役 岡元 松男氏
十日町をもう一度「シルク産業」の拠点に
しみ抜きなどのアフターケアから撥水などのビフォア加工、縫製と、着物の総合加工事業を主力とする株式会社きものブレイン。1983年に業界で初めて着物のアフターケアを事業化し、その後も一貫加工によるワンストップサービス、消費者目線での商品開発など、着物業界の常識を変える挑戦を続けてきた。
同社が新たに挑戦するのが「きもの文化村」構想だ。これは十日町を「シルク産業・文化都市」として発展させ、地域とともに成長を目指していくプロジェクト。その拠点として今年3月に完成した新工場「きものブレイン夢ファクトリー」は、工場の集約化で生産効率を高めるとともに、見学者の受け入れも行う。「今まで技術を隠すために見せなかったところを観光客に見てもらい、楽しんでいただく産業観光の場所にしたいのです」と岡元社長は語る。
9月から新工場の見学が可能に。古着の着物生地800枚を使い、虹を描いた多目的ホールのオブジェには、力を合わせて自分たちの未来を切り拓こうというメッセージが込められている。
無菌養蚕工場で「みどりまゆ」を育成
「きもの文化村」で力を入れるのが、平成27年~29年のサポイン事業の補助を受けた「無菌人工給餌周年養蚕事業」である。無菌養蚕工場で白繭の約2・5倍のフラボノイドを含む「みどりまゆ」を飼育。これを素材にしたサプリメント、コスメ、衣類などの商品群で構成する新ブランド「絹生活研究所」を設立し、百貨店への進出を図るとともに、2018年「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」ではショップも開く予定だ。「イメージ先行ではなく、シルク学の権威である教授陣が監修したエビデンス(科学的根拠)先行のブランドとして展開していきます」。
「みどりまゆ」。抗酸化作用のあるフラボノイドの成分を活用し、「健康と美」をトータルでサポートする商品開発を進める。
酸化して変色した部分を漂白し、再度着色する「黄変抜き」の作業。自社工場での一貫加工を行う同社はアフターケア、縫製ともに全国トップのシェアを誇る。
会社の成長と社員を守るため全員参加の経営を実践
壮大な構想の背景には「270人まで増えた社員の未来を絶対に守る」という岡元社長の信念がある。着物市場が縮小する中、倒産や人員整理の状況を多く見てきたことから、自分の引退後も社員みんなで成長を目指せるように会社のフィロソフィを作り、アメーバ経営を導入。社内で5~10人のチーム(アメーバ)を作り、チームごとに採算を管理することで、全社員が経営に参加する意識を高めている。
早くから障害者雇用に力を入れ、女性が多く活躍するなどダイバーシティ企業としての評価も高い同社。社員の幸せを追求することが地域の発展にもつながるという理念を、これからも形にしていく。
「今後は工場の敷地内に手織りや草木染作家のアトリエを誘致し、大学とのインターンシップ提携もしていきたい。シルクショップも2~3年後には全国ブランドに押し上げたいと思っています」と語る岡元社長。
ここがポイント
- 新工場を地場産業の活性化・観光の拠点に
- 養蚕事業を確立しシルク商品の新ブランドを展開
- フィロソフィとアメーバ経営を導入
企業情報
株式会社きものブレイン
[夢ファクトリー 本社工場]
〒948-0056 十日町市沢口丑510-1
TEL.025-752-7700 FAX.025-757-2008
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