株式会社ニットク【防災関連ビジネス実施企業|ホテル品質の自走式トイレカーが被災地にも快適を届ける】

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2024年04月18日
NICOpress193号新商品・新技術開発

ホテル品質の自走式トイレカーが被災地にも快適を届ける

災害が起きるたびに課題となるのがトイレ事情だ。避難生活を送る被災者にとって、トイレ環境の良し悪しは健康にも関わってくる。そうした中、能登半島地震で活躍しているのが、ニットクが製造・販売しているトイレカー「レストルームビークル」だ。平時から活用でき、災害時も速やかに現場へ運べる。その存在が今、注目されている。

取締役社長 中島孝行 氏/設計開発部 部長 荒井和孝 氏
取締役社長 中島孝行 氏/設計開発部 部長 荒井和孝 氏

「レストルームビークルは荒井部長はじめ、たのもしい社員たちが入社してくれたことで実現できたと思います」と話す中島社長(写真右)。荒井部長(写真左)は設備会社にいた経験を活かし、入社後にCADを学びながら設計にあたった。

きっかけは大手ゼネコンの相談
女性が嫌がらない現場のために

1990年創業のニットクは魚沼市で除雪車や重機の新車および中古車の販売やリースを手掛けている。同社が2021年に販売を開始したのが、軽トラックと仮設トイレを一体化した「レストルームビークル」だ。今年1月に発生した能登半島地震では、10日後に輪島市へ2台、その後珠洲市にも2台派遣し、被災者に利用してもらっている。

開発のきっかけは、取引先の大手ゼネコンからの相談だった。「東京の本社から女性のキャリア社員が現場に来たところ、トイレを見て“ここでは働けない”といってすぐに辞表を出して退社してしまったというのです。世の中にはトイレカーというものがあるが、ニットクさんで作れませんか、と言われたことが始まりでした。その頃、小雪のために除雪車事業の売上が落ちて、この先その分をカバーする新事業が必要だと感じていたこともあり、挑戦してみようと思いました」と中島社長は振り返る。

自社開発を目指して求人を出し、設備工事の経験がある荒井部長と、事務や広報を担当する榎本氏を採用。設計や法律の解釈など、最初は知識ゼロから取り組みはじめ、およそ3年半で販売にこぎつけた。

レストルームビークル 製造の様子

レストルームビークル 製造の様子

 

レストルームビークルは月に7~8台、年間100台の生産が可能。将来的には年間300台を目指す。製造部門では新たに8名を採用するなど雇用も生んでいる。

現地で聞いた被災者の言葉
メーカー冥利に尽きる瞬間

女性に気持ち良く使ってもらうことを前提に、先行メーカーとの差別化を図るため、目指したのは高級ホテルのトイレ並みの環境。女性の声を集めて求められることを追求し、用を足すだけでなく、化粧直しや着替えもできる空間とした。だからこそ商品名もトイレではなく「レストルーム」としている。

軽トラックの荷台に設置するボディはFRP(繊維強化プラスチック)製。当初「素人には絶対に扱えない」と言われたが、工夫を重ねて技術を習得。さらにコストダウンと軽量化のため、内部の部材に木材を取り入れることとし、地元の工務店に知恵を借りながら構造を作り上げていった。

トイレは水洗で、温水便座を標準装備。壁は防水抗菌抗ウイルス仕様のクロス張りにして高級感を演出している。ボディには断熱材を入れてあるため冷暖房(オプション)も効く。何より自走式なので移動が簡単で、駐車スペースさえあれば使用でき、排泄物も処理場まで運搬できるのが特徴だ。現在は建設会社や道路工事関係、警備会社などに販売実績があり、カスタマイズの依頼も多い。

当初から工事現場以外のイベントやアウトドアレジャー、災害時の利用も念頭に開発した。2022年12月、国道8号線で豪雪による立ち往生が起きた際にも出動したが、被災地での使用は今回の能登半島地震が初めてとなった。

震災を受け、同社は長岡市の被災地復興支援団体「チーム中越」と連携。まず1月6・7日で荒井部長が現地の状況視察に行き、11日からトイレカー2台を輪島市に3月まで無償で貸し出した。さらに、チーム中越が行ったインターネット上での募金によって珠洲市にも2台配置。荒井部長は「被災者の方に話を聞いたら、『今まで飲み物とか食べ物を我慢していたけれど我慢しなくてよくなって助かっている。こんなに良いものがあるならもっと早く持ってきてほしかった』と言われた。とても感謝され、良いことをやれているな、と実感しましたし、製造メーカー冥利に尽きると感じました」と話す。

レストルームビークル

レストルームビークル

レストルームビークル

レストルームビークル

レストルームビークル
  • 国土交通省NETIS登録商品
  • 「Made in 新潟 新商品調達制度」認定商品

温水便座付き水洗トイレを標準装備。タンク容量は250リットルあり、約200回使用できる。排泄物は汲み取りのほか、処理場への持ち込みや、下水管にホースを直結させて排出することもできる。

被災地での「レストルームビークル」

チーム中越の支援に参加し、被災地で普段の生活と同じように清潔な水洗トイレを使用できることの重要性を再確認した。

自治体の導入意識も高まる時
品質向上を常に目指していく

被災地に入って気づいたことは、感染症対策として水洗トイレは必須であり、冷暖房があれば冬季のヒートショック対策になるなど、トイレ環境は被災者の健康に密着している、ということだった。

こうしたトイレカーを各自治体が所有していれば、平時はイベント等に利用し、有事の際にはすぐに現場で使うことができる。ニットクでは全国の市町村への販路拡大を考えており、折しも総務省の自治体の災害対策に対する補助金の対象に、トイレカーが明記されたことから、検討する自治体も増えそうなタイミングにある。また、別のシリーズとして展開する「オフィスビークル」もあり、被災地での授乳スペースや、リラックスルームとしても活用が広がる。

今後は競合が登場してくる可能性もあるが、ニットクとしては常に一つ上の付加価値を加えることで、他社との差別化を図ることを目指している。現在は魚沼市の補助金を受けてIoT導入を進め、遠隔でタンクの水量確認や、エアコンのオンオフができるといったシステムを開発中だ。

今回の震災支援を経験し、「被災地だからこそ、一番品質の良いものを提供することが我々の使命だと感じました」と話す中島社長。この先、どんな時代になってもトイレは必要とされるもの。進化を続ける「レストルームビークル」の需要も、さまざまな方面に伸びていくはずだ。

オフィスビークル

オフィスビークル

現場を転々とする建設会社からの依頼で誕生した移動オフィスカー。2~3人での打ち合わせも可能な広さ。窓がある快適空間だ。

オフィスビークル

 

ポイント

  • 誰もが清潔・快適と思えるクオリティの高いトイレカーを開発。
  • 開発当初から災害時の利用も念頭に設計。
    寒冷地仕様でさまざまな用途への可能性が広がる。
  • 自社で製造可能な仕様になるよう工夫し、常にブラッシュアップする。

 

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株式会社ニットク

魚沼市下倉525
TEL.025-794-5700
URL https://www.nittoc.com/

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