にいがた雪室ブランド事業協同組合(越後雪室屋)【地域資源を活用した省エネ&ブランディング】

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2022年10月07日
NICOpress184号新商品・新技術開発海外展開販路開拓

雪室のエコ貯蔵で食品を熟成。
企業連合で雪国ならではのブランドとして成長

天然雪を使って食品を保存する「雪室」を活用した食材の統一ブランド「越後雪室屋」。昔ながらの雪国の知恵は省資源・省エネの方法として高く評価されているだけでなく、熟成効果によって付加価値がある商品を生み出し、販路は海外にも広がっている。

理事長 佐藤 健之 氏
理事長 佐藤 健之 氏

仲間で集まって商品開発の相談をする中で、知識共有もできて、新しいアイデアも湧く。それが中小企業が協同することの大きなメリットでもあるし、こういう取組をもっとみんなやったほうがいいと思っています。そのとき重要なのは参加者全員の“志”の共有です

天然雪の冷熱貯蔵に注目
企業で共有する統一ブランド

2012年にスタートした「越後雪室屋」は、県内の食品会社などが協同組合を作り、運営しているブランドだ。現在、食品製造は16社が参加しており、100種類以上のブランド商品を開発、販売している。商品化の条件は、雪室での貯蔵・熟成したものであることだ。雪室の選定や保存期間、鮮度・食味などのテストを幾度も重ねたアイテムで構成されている。

組合設立のきっかけは、雪室で熟成させたコーヒーとの出会い。鈴木コーヒーの会長でもある佐藤理事長は「上越市のヘヴンズカフェへ当時専務の息子(現社長)がセールスに行った際、そのコーヒーと出会い、これは美味いと思ったと同時に、コーヒーは日本では採れないため地方色が出せない商品だが、これなら出せると考え、商品化することにしました」と話す。

そもそも、この雪室珈琲は2007年に上越青年会議所が上越雪仕込みプロジェクトとして、雪室利用の商品化に取り組んだものの一つであった。

「そして、その他にも雪室で熟成された食品が存在していたので、コーヒー以外の食品を生産している食品会社と連携して事業を展開しようと声をかけ、最初は7社で始めました。食の宝庫である新潟の食品に、雪というロマンをつけて販売するというコンセプトで活動を始めました」。

天然雪を倉庫に入れ、雪の冷熱で冷やす雪室は、室温がほぼ零度、湿度ほぼ100%に保たれ、食品の細胞を壊すことなく、鮮度を保ち、じっくりと熟成を進めることができる。それによって食材の味もおいしく変化。例えばジャガイモは糖度が増して甘く、日本酒やコーヒーは雑味が消えてまろやかになる。これらは大学の研究データでも確認されている。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 越後雪室屋

にいがた雪室ブランド事業協同組合 雪中貯蔵施設

にいがた雪室ブランド事業協同組合 雪室熟成肉

にいがた雪室ブランド事業協同組合 越後雪室屋

にいがた雪室ブランド事業協同組合 雪中貯蔵施設

上越市安塚区の雪中貯蔵施設。貯雪量は150トン、野菜、お米などの食材を貯蔵。雪室は真夏でも真冬でも一定の温度が保たれる。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 雪室熟成肉

雪室熟成肉。海外では主に雪室熟成でしっとり軟らかい肉質に熟成された雪室熟成和牛が人気だ。

写真右上/上越市安塚区の雪中貯蔵施設。貯雪量は150トン、野菜、お米などの食材を貯蔵。雪室は真夏でも真冬でも一定の温度が保たれる。
写真右下/雪室熟成肉。海外では主に雪室熟成でしっとり軟らかい肉質に熟成された雪室熟成和牛が人気だ。

 

海外は日本よりもはるかに
環境への配慮に敏感

エネルギー面では、1トンの雪利用によって石油は10リットル節約でき、二酸化炭素30kgの排出を抑えられる。ただ、佐藤理事長は「我々は最初から環境を意識していた訳ではなかった。結果としてSDGsにつながることだったのです」と話す。雪室貯蔵という雪エネルギー利用の部分が高く評価されると気付いたのは、2012年に初めてアジア最大級の食品・飲料総合展示会「FOODEX JAPAN」に出展したときだった。「海外のバイヤーから“これはSDGsだ”と言われて。当時は日本ではまだSDGsというワードが一般的ではありませんでした。海外との取引を始めてみると、彼らは日本人より環境やエコに関して敏感だと感じます。」SDGsにつながる雪室利用は海外展開を目指す中で、大きな価値であることは間違いない。

また昨年は、組合参加企業である運送会社のマルソーの雪室倉庫(雪冷熱式倉庫)が営業倉庫としての登録を受けた。全国で初めての事例で、雪冷熱を利用した倉庫が、物流拠点に利用できることの意味は大きいという。

越後雪室屋ブランドとして、様々な展開ができているのは、協同組合という組織である点が大きい。中小企業が組んでブランド、知識、販路、営業を共有することで可能性は広がる。「例えば販売に大切なのは、いかに知ってもらうかということ。自社で大規模な展示会に出展しようとしたら多額の出展費用がかかりますが、組合で出れば費用を各社で分割できます。その分何度も出て、PR活動ができる訳です。企業連合なら世界に打って出ても怖くない。食の輸出はアメリカのFDA認証など厳しい基準があり、基準をクリアするには費用がかかるため、やはり連合して進めることが大事です。日本の市場が縮小していく中で、今後世界のマーケットを意識せざるを得ないのですから」。

現在、海外輸出では雪室熟成和牛が最も多く、“スノーエイジングビーフ”としてニューヨークをはじめ、販路が広がっている。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 マルソー社の雪室物流倉庫

マルソー社の雪室物流倉庫。法律上、冷蔵商品は冷蔵装置を装備した倉庫でなければ物流行為はできなかったが、雪室での冷蔵保存倉庫が営業倉庫認定を受けたことで、雪室貯蔵商品を直接出荷することができるようになった。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 雪室熟成和牛

雪室熟成和牛は2019年に新潟県知事がニューヨークでトップセールスを行ったほか、FOXチャンネルの料理番組でも紹介された。

 

自然エネルギーだからこそ
生み出される個性を売りに

越後雪室屋が目指している目標は年間売上12億円。スタート以来順調に伸び、感染禍で足踏みしたものの、現在は約3億円だ。今後の戦略の一つは面展開。ホテルで開発してもらった「雪室熟成食品フルコース」のイベント展開や、これまでも事例がある食品メーカーや外食チェーン店とのコラボなどにも期待を寄せる。また、「雪室留学」と題し、日本全国のおいしいものを新潟の雪室で熟成し、戻して販売するという取組も実施。成功事例の一つは高知・四万十の栗で、雪室で熟成させることで糖度が22度まで上がり、価格が高くてもすぐに完売するそうだ。

さらに、今後手掛けたいのが「雪室ビューティープロジェクト」。「体の中からきれいを目指すインナービューティーに雪室食品を活用してもらう。アウタービューティーとしては、化粧品に可能性がないか検討中です。さらに、雪室と温泉の掛け合わせによる冷温浴として、旅館やアウトドアメーカーと組んで、雪室の中でヨガをして温泉に入り、雪室食品の食事をするといった湯治型の体験プランも考えています。エコそのものが人間の体に良いもの。人にも雪室の恩恵を得られないか、という仮説を立てて検討しているところです」。雪室も温泉も自然の恵みであり、天然の力。省エネルギーというメリットだけでなく、自然エネルギーだからこその魅力がこれからの価値となっていきそうだ。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 多数のラインナップ

にいがた雪室ブランド事業協同組合 展示会

数多くの商品ラインナップがあることは展示会でもインパクトが大きい。組合参加企業は基本的に1社1品目で商品展開。販売会社も巻き込むことで、販路の共有ができることも大きなメリット。一方、各社が越後雪室屋ブランドに比重を置き過ぎないことも重要視している。

にいがた雪室ブランド事業協同組合 高知・四万十の栗

「雪室留学」で熟成された高知・四万十の栗。寝かせることで驚くほど糖度が上がる。

 

point

▶ 雪国の昔ながらの知恵「雪室」が持つポテンシャルに注目。環境問題に先進的な海外への展開にも有効。

▶ 異業種が協同することにより、中小企業でも大きなアクションを可能に。大学とも連携し、研究データによって商品の説得力を向上。

 

企業情報

にいがた雪室ブランド事業協同組合(越後雪室屋)NICOクラブ会員

新潟市中央区女池神明 3-4-9
TEL.025-250-0102
URL https://www.yukimuroya.jp/

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