株式会社大原鉄工所【下水汚泥などを活用したバイオガス発電設備の製造】

2022年10月07日
NICOpress184号新事業展開

循環型社会の形成に貢献する
バイオガス発電プラントをトータルで提案

国内唯一の雪上車メーカーとして知られる大原鉄工所は、車両事業とともにリサイクル機器や下水処理設備などの環境事業を早くから展開。約10年前からバイオガス発電の分野に着手し、発電設備をはじめプラント設計・施工のトータルプランニングを手掛けている。

株式会社大原鉄工所の部長・課長
常務取締役 営業本部長 小坂井 恒一 氏
技術・製造本部 部長 髙橋 倫広 氏
技術・製造本部 担当部長
第1技術部 技術開発課長 中村 明靖 氏

技術・製造本部
第1技術部 製造設計1課 担当課長 浅井 圭介 氏

(写真左から)中村課長、髙橋部長、浅井課長、小坂井本部長。「小型のバイオガス発電機を製造しているのは、国内では当社を含め2社だけ。技術的に難しい開発であったため、当初から他社は手を出さないだろうと予測していました。当社は雪上車をはじめ、ライバルが少ない市場をあえて狙っていることも強みです」と小坂井本部長。

FIT制度開始に先駆けて
小型バイオガス発電機を開発

生ごみ、家畜糞尿、下水汚泥などの湿潤系バイオマス(有機性廃棄物)をメタン発酵させ、発生するガスをエネルギーとして利用するバイオガス発電は、廃棄物を有効利用し、環境負荷低減につながる発電システム。2012年のFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)以降、バイオガス発電プラントは循環型のエネルギー生産施設として注目されてきた。

そのバイオガス発電プラントの企画から設計、メンテナンスをトータルで行う大原鉄工所は、時代のニーズに先駆けて、2009年に小型・高効率のバイオガス発電機を長岡技術科学大学と共同で開発。当時はバイオガスの利活用が進んでおらず、発電機も海外製が主流だった。「下水処理場で発生した消化ガス(※1)を活用して発電する大型の発電機はありましたが、小型の発電機はありませんでした。そこで国立研究開発法人土木研究所が発電機の研究開発をしていたのですが、最終的に製品化には至らなかった。それでも何とか製品化したいということで、長岡技術科学大学を通してお声がけいただいたのです」と髙橋部長。さらに、「当社に白羽の矢が立ったのは、雪上車の開発で培ったエンジン技術があったことも大きな理由の一つだと思います」と小坂井本部長は語る。
※1 消化ガス:バイオガスの一種。下水処理の汚泥が消化槽で分解される過程で発生する可燃性ガス

バイオガス発電機は、バイオガスを燃料にしてガスエンジンを駆動させることで発電する仕組み。同社の発電機は市販のディーゼルエンジンを活用し、ガスエンジンに改造。コンパクトで高い発電効率を持つことが特徴だ。「バイオガスを燃やすには取り入れる酸素とガスの割合が重要になってくる。その調整が大変でした」と浅井課長。また、市販のエンジンを使うことで低価格を実現できた。「当社は雪上車のメンテナンス拠点が全国にありますし、トラックに使われているエンジンと同じなので、街の整備工場でも修理することができる。メンテナンスコストを低く抑えられることも強みです」と語る。

株式会社大原鉄工所 バイオガス発電フロー

 

処理技術やシステム構築で
有機資源のエネルギー利用を推進

現在、同社の発電機は全国に160基ほど導入されている。「弊社のバイオガス発電機が活躍する分野は、下水処理と畜産、食品廃棄物の大きく三つに分かれます。2016年からは、下水処理場で発生した消化ガスを買い取って自社で発電するという取組を始めました」と髙橋部長が話すように、栃木県・佐野市水処理センターを皮切りに、石川県、宮城県、埼玉県、山口県の下水処理場で、消化ガス買取発電事業も実施している。

また、人口減少でごみ焼却施設の統廃合が進むなか、都市ごみなどの地域バイオマスを適正に処理・活用することで処理量とコスト削減につなげるMBTシステムを展開。「都市ごみを機械選別し、発酵適物と焼却適物とに目的別に分けて、発酵適物をメタン発酵プラントでバイオガスとして回収・活用し、ごみの焼却量は減らすという、一連の設備技術です。各地域が導入を検討する動きになってきています」。

さらに2020年には、廃水処理が困難な液状廃棄物を高濃度に濃縮し、廃棄物量を大幅に削減する「高機能RO膜式排水処理システム」を開発した。「バイオガス発電では必ずメタン発酵消化液が大量に出るので、その処理にかかる費用や処理する場所に課題がありました。このシステムではRO膜を用いた濃縮技術によって廃水ボリュームを約1/10にできます」と中村課長。廃水処理の状況を一変させるシステムとして期待されている。

株式会社大原鉄工所 廃棄物処理プラント

株式会社大原鉄工所 バイオガス発電機

株式会社大原鉄工所 高機能RO膜式排水処理システム

写真左/同社の設備を導入した三重県の廃棄物処理プラント 写真右上/下水処理場に設置しているバイオガス発電機の一例 写真右下/高機能RO膜式排水処理システムは、バイオガス発電プラントから発生する消化液を濃縮し、排水できる安全な処理水と、廃棄する濃縮液に分離処理することで、廃棄物量を大幅に削減する。短時間でユニットを設置できる上、省スペース化で建設コストも削減できる。

株式会社大原鉄工所 廃棄物処理プラント

同社の設備を導入した三重県の廃棄物処理プラント

株式会社大原鉄工所 バイオガス発電機

下水処理場に設置しているバイオガス発電機の一例

株式会社大原鉄工所 高機能RO膜式排水処理システム

高機能RO膜式排水処理システムは、バイオガス発電プラントから発生する消化液を濃縮し、排水できる安全な処理水と、廃棄する濃縮液に分離処理することで、廃棄物量を大幅に削減する。短時間でユニットを設置できる上、省スペース化で建設コストも削減できる。

 

世の中のニーズに合わせて
脱炭素に貢献できる技術を提供

全国的にバイオガス発電と汚泥の減量化装置は、導入したくてもコスト高や設置スペースの課題で設置が進んでいない。そんな小規模処理場向けに、従来に比べてコンパクトで低コストのバイオガス発電システムを開発し、全国への普及を目指している。

「売れ続けている技術でも、そのスパンは短くなっています。再生可能エネルギー分野も同じで、電気だけではこれからは立ち行かない。再生可能エネルギーで天然ガスを作る、熱を利用する、メタネーション(※2)など、可能性がある中で、当社には環境分野でベースとなる技術が構築されているのが強みです。ただ、そこに固執せず、世の中のニーズに合わせて貢献できる新しい技術を提供していきたい。また、メーカーやプラントエンジニアリングに留まらず、脱炭素に貢献する事業に出資してビジネスを展開していくことも構想の一つです」と小坂井本部長。
※2 水素と二酸化炭素からメタンを合成する技術

構築した技術、ノウハウを新たな形に展開させながら、脱炭素・循環経済の実現に貢献する同社のこれからに注目したい。

 

point

▶ 雪上車開発で培ったエンジン技術をバイオガス発電機に応用。

▶ 小規模処理場向けに、導入コストが削減できるコンパクトな発電システムを開発。

▶ 資源循環・低環境負荷型のエネルギー利用を促進する一連の設備技術を追求。

 

企業情報

株式会社大原鉄工所NICOクラブ会員

長岡市城岡2-8-1
TEL.0258-24-2350
URL https://www.oharacorp.co.jp/

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