無印良品 直江津【朝市出店に移動販売。地域課題に向き合いながら新サービスを続々展開】

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2022年08月08日
NICOpress183号販路開拓

朝市出店に移動販売。
地域課題に向き合いながら新サービスを続々展開

2020年7月、上越市の直江津ショッピングセンター内にオープンした無印良品直江津。約7,000種類の雑貨や家具などを扱う同店は、無印良品の中でも世界最大級の売り場面積を誇る。賑わいを取り戻したい地域の活性化も目的とする、同店の取組を伺った。

株式会社良品計画 営業本部 信越事業部 コミュニティマネージャー 古谷 信人 氏
株式会社良品計画 営業本部 信越事業部 
コミュニティマネージャー 古谷 信人 氏

地域の方々の健康をサポートする『まちの保健室』や、休憩スペース・イベントスペースとして使える『Open MUJI』、シェアキッチンなど、地域のみなさんに頻繁に足を運んでいただける場を設けているのも無印良品直江津の特徴です。

食堂では地元食材を活用
地域経済の活性化に貢献

直江津ショッピングセンター2階の大部分を占める無印良品直江津。広い店内には、食品に雑貨、家具やアパレルなど、無印良品の幅広い製品がずらりと並んでいる。その一方で、上越地域で採れた食材を使い、地元で愛されてきた料理を提供するカジュアルな食堂や、地元野菜を販売するコーナーなど、地域性がふんだんに盛り込まれているのも特徴だ。

「オープンの1年前に上越市に出店するかどうかを検討するプロジェクトが立ち上がり、私を含め社内の各部署のメンバーが集まってミーティングを重ねました。地域のことを調べてみると、商店街はシャッターが閉まったままの店が多く、駅の乗降客数も少ない。人通りも少ないなど、元気がない印象でした。地域の人に話を聞くことで、若い人が都市部に出て帰ってこないといった課題も見えてきたんです。直江津に無印良品を出店するのであれば、30年後、50年後もここで営業していけるように、地域を強くしていかなければいけないと私たちは考えました」と話すのはコミュニティマネージャーの古谷氏。

同店の地域活性化の取組の一つが、店内の「なおえつ良品食堂」で地域の食材を使った料理を提供すること。「私たちが地元の食材を使うことで、地域の経済を活性化したいと思っています。そのためのレシピ開発もしています」と古谷氏。くびき牛の煮込みや、地元の有名店に監修してもらった豚汁、サメのタレかつ丼など、地元感のあるメニューが並んでいる。誰もが入りやすいカジュアルな雰囲気も大事にしたという。料理の価格は600~700円が中心で、その価格帯も親しみやすさにつながっている。

また、店内の一角には、JAえちご上越が運営する直売所「あるるん畑」と連携した「なおえつ良品市場」があり、ここで上越地域の野菜や加工品等の販売を行っている。同じショッピングセンター内のスーパーの品揃えと重複しないように、地元産に限定しているのもポイントだ。上越地域で作られる日本酒も販売しているが、扱っているのはおみやげ用に求められる小瓶のみ。大瓶を探しているお客様には、建物1階にある酒屋を紹介するなど、他の小売店への配慮も欠かさない。

なおえつ良品食堂

なおえつ良品食堂

豚汁ラーメンやくびき牛を使ったラーメン、海鮮丼など、地域色あふれるメニューを展開。

なおえつ良品市場

なおえつ良品市場

地元で採れた旬の野菜をはじめ、地元産の米や加工食品なども取り扱っている。内装には上越市産の杉材を使用。

 

地元活性化の一助にもなる
朝市出店と移動販売

オープン前の2020年春から、直江津地区で月6回開かれる朝市「三・八の市」への出店を続けているのも同店のユニークな取組。「オープン前に無印良品がどういう店なのかを地域の人に知っていただくために朝市への参加を決めました。朝市の出店者の高齢化や、客数の減少という課題も聞いていましたので、無印良品が出店することでメディアの露出が増え、朝市が見直されるきっかけにもなればと考えていました。朝市では食品と古本を販売しています。ベストセラーなど流通量が多い古本は値段がつかず古紙に回ることが多いのですが、そうした古本を仕入れ、また本として再度手にとってもらえるように並べています。

マイクロバスを使った「MUJI to GO」という移動式店舗も、オープン時から継続している。

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オープン時は集客が難しくなることが予想されました。それで、オープンの1カ月前に移動販売を思いついたんです。直江津ショッピングセンターの親会社である頸城自動車さんから借りたマイクロバスを改造し、上越市内の中山間地域や、隣接する糸魚川市、妙高市、十日町市を定期的に回っています。メインは食品ですが、化粧水や掃除用品、文具などもあります。ただ、無印良品だけではお客様の要望に十分応えられないため、地元の八百屋さんや鮮魚店さん、総菜屋さん、パン屋さんなど他の事業者さんにも来ていただきます。私たちの移動販売の規模は大きいものではないですが、バスを走らせることが話題になり、他の事業者さんが中山間地域へ販売に行くきっかけをつくることも地域の活性化には大事な役割だと考えています」。

三・八の市

三・八の市

3と8が付く日に直江津地区で開かれる「三・八の市」。「不揃いバウム」などの個包装の菓子が人気。写真右に見える箱には古本が詰まっている。

MUJI to GO

MUJI to GO

無印良品の食品や雑貨を積んだ移動式店舗の「MUJI to GO」。バスの中に入って買い物を楽しむことができる。

 

環境と社会に配慮し、
“くらしの真ん中”を目指す

無印良品には1980年のブランド誕生以来変わらない考え方がある。それは『素材の選択』『工程の点検』『包装の簡略化』という3つの視点だ。この考え方に基づき、大きさの違いなど、味に関係なくはじかれていた菓子を「不揃いシリーズ」として販売したり、ベッドカバーのパッケージを省いて紐でくくるだけにしたり、環境・社会に配慮した商品を展開してきた。そうした社会に良い影響を与えようとする姿勢は、無印良品直江津が提供する独自性あふれるサービスにも表れている。

「今後の目標は、さらに地域への土着化を進め、地域の魅力を発信していくことです。具体的には、店舗にある商品の2割を地元産にしていきたいですね」と古谷氏。地域の“くらしの真ん中”になることを目指し3年目に突入した無印良品直江津の、今後の展開にも目が離せない。

MUJI CAMP TOOLS

MUJI CAMP TOOLS

自然豊かな上越地域を楽しむのに役立ち、いざという時には防災用品になるアウトドアツールを提案。

包装の簡略化

包装の簡略化

包装には靴下をかけるハンガー部分に厚紙を使ったり、商品にタグを留めるのに糸を使ったり、極力プラスチックを使わないよう工夫されている。

 

check point

▶ 地域課題と向き合い、数十年先も営業できる地域づくりに注力

▶ 「なおえつ良品食堂」で地元食材を使い、地元の経済を回すしかけ

▶ バスを改造した移動式店舗で、中山間地域の生活者のくらしを支援

▶ 地元産品の割合を増やし、地域の魅力を発信する

 

企業情報

株式会社良品計画 無印良品 直江津

上越市西本町3-8-8 直江津ショッピングセンター2F
TEL.025-520-7591
URL https://shop.muji.com/jp/naoetsu/

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