アーネスト株式会社

2021年01月27日
NICOpress174号新商品・新技術開発

ヒット連発! 応援購入サイトは支援者と共に商品を育てる場

アイデア生活雑貨の企画開発・販売を手掛けているアーネストでは、2019年からMakuake(マクアケ)を利用した展開を開始。 失敗を経験しながら、回を重ねるごとにサポーターが集まるようになった。同社にとって、応援購入サイトは、商品とそれを欲しいと思ってくれる人との出会いの場となっている。

アーネスト株式会社
専務取締役 鈴木 一矢 氏/営業部 営業課 外川 芳伸 氏

「今後は扱う商品の個性に合わせ、クラウドファンディングサイトを使い分けることも考えていきたいと思っています」と話す鈴木専務(写真右)と営業部の外川氏(写真左)。プロジェクトページで伝える内容を考えるときは、潜伏ニーズを掘り起こすという視点で検討しているという。

1回目のプロジェクトは苦戦
コンセプト作りの重要さを実感

アーネストがMakuakeでプロジェクトに取り組み始めたのは2019年秋。燕三条のホーロー製品での新ブランド展開を狙って利用したのが最初だ。担当の外川氏は「消費者の反応を商品開発に役立てたいのと同時に、その後の販路拡大に重きを置きたいという思いもあり、応援購入型を選びました」と、鈴木専務も「その頃すでに、近隣でもMakuakeを活用している企業が多数ありました。身近で成功している事例があったので我々にもできるぞという感覚でしたね」と話す。
しかし1回目のホーロー製コーヒーツールのプロジェクトは、目標額に届かなかった。外川氏は「出せば売れるんじゃないかとただ商品を掲載しただけの安易なやり方だったことが原因。Makuakeの利用者の傾向を知り、それを踏まえて商品をどう紹介したら響くかを考えることが重要でした」と振り返る。
同社ではアピールの場となるプロジェクトページの制作を、Makuakeの仕事を多く手掛ける企業と協同している。しかし、あくまでもこちらの要望を形にする存在なので、商品コンセプトやどう売りたいかという部分は自社でしっかりと固めていくことが重要だ。「プロジェクトページの作り方は独特で、ECサイトの商品紹介とは全く異なります。単に商品を売り込むのではダメで、利用シーンやその商品によって消費者がどんな体験ができるのかを伝える。そのバランスが大切です」。

 

売り方に悩んでいた自社開発商品が大ブレイク

最初のブレイクは2020年6月に行ったマイクロファインバブルアダプター「爽泡(SAWAWA)」のプロジェクト。自宅のシャワーに取り付けるだけでミクロの泡を含んだシャワーになるという自社商品で、その性能には自信があったものの、販売は伸び悩んでいた。
そこで、デザインをブラッシュアップし、新ブランドを立ち上げて挑戦。最大のポイントは、ターゲットを男性にしたことだ。「以前は女性向けに展開していましたが、Makuakeの利用者が男性7割で40~50代がボリュームゾーンということを考慮しました。毛穴の汚れまでも落とし、体臭を防ぐといった点をアピールし、掲載写真のモデルも男性に変えました」。
タイミングよく、他社のマイクロバブルのシャワーヘッドが話題になっていたことや、スタートから5日目にYahoo!ニュースがプレスリリースを取り上げてくれたことも追い風となり、最終的にはサポーターが4,852人に増え、目標金額も大きく達成した。
外川氏は「サポーターの皆さんからのコメントの99%が応援で、とても励みになりました。お客様と一緒にものづくりをさせてもらっている感覚になります。その期待に応えるため、リターンへの対応や、問い合わせには迅速丁寧に対応しています」と話す。

アーネスト株式会社 爽泡(SAWAWA)

超微細泡を発生させるマイクロファインバブルアダプター「爽泡(SAWAWA)」。同様の効果があるシャワーヘッドに比べ、価格が抑えられている点もアピールポイントになった。

 

応援購入金額1億円超えで一般販売のルートも確立

同社では続いて爽泡(SAWAWA)シリーズ第2弾の洗濯機用アダプターを投入。実行メンバーで会議を開き、計画を練った。「サポーターからも期待する声があり確信はありました。SNS広告も打ってスタートダッシュと期間中のてこ入れを狙い、リターンも最大50%オフまで設定しました」。
その結果、サポーターは1万4,101人となり購入額は1億円を超える大ヒット。通販や家電量販店など、多方面から商品を扱いたいというオファーも入っている。「サポーターからは活用のアイデアや次の商品開発のヒントをいただくなど、2回のプロジェクトを経て、ブランドが歩き始めたように思います」。
最新プロジェクトは、京都の『ザ・洋食屋キチキチ』とコラボしたオムライス専用フライパン。同店のシェフがオリジナルフライパンを作りたがっているという情報を得た鈴木専務が提案した。シェフはYouTubeのフォロワーが23.5万人もいるほどファンが多い人物で、その影響力も絶大だ。こちらも一般発売への引き合いが多く、今年1月下旬から店舗販売が始まる。鈴木専務は「やっと狙った流れでの展開が出来るようになったという感覚です」と、その手ごたえを話す。
こうしたプロジェクトのメリットについて外川氏は「サポーターは商品をなぜ購入したのか、買ってどう使いたいかという質問に答えてくれる。それが次に生かせますし、そうしたサポーターの声や、実際に売れているというデータは、バイヤーとの商談の場でも強い説得材料になります」と話す。
最近では海外のクラウドファンディングサイトからも誘いの声がかかっており、ネットの先にさらなる展開の可能性が広がっている。

アーネスト株式会社 ザ・洋食屋キチキチ アーネスト株式会社 ザ・洋食屋キチキチ

オムライスの名店で知られるザ・洋食屋キチキチのお食事券やシェフのお料理教室といった体験型リターンを用意した。

 

プロジェクト 簡単装着! 100億個のマイクロファインバブルで洗濯革命「SAWAWA 洗濯用」

▶︎利用サイト/Makuake ▶︎目標金額/300,000円 ▶︎サポーター/14,101人 ▶︎実施期間/2020年7月30日~9月29日迄 ▶︎応援購入総額/110,387,600円 ▶︎リターンの内容/SAWAWA洗濯用を支援額に応じて30~55%に特別割引

アーネスト株式会社 アーネスト株式会社

大ブレイク商品となったSAWAWA洗濯用アダプターは、自宅の洗濯機に取り付けることでマイクロファインバブルによって繊維の奥まで洗浄できる。独自に開発した国内特許申請中の技術だ。

※クラウドファンディングにおける「リターン」とは、支援してくれた方へのお礼、見返りとして用意する商品やサービスのこと。支援につながりやすい価格やプランをプロジェクトに応じて設定する。

 

ポイント

  • 利用者層をふまえた商品設計とコンセプトの組み立て
  • モノだけでなくコトをアピールしたプロジェクトページづくり
  • サポーターとの信頼関係が第一。コメントには全て返信し、問い合わせにも迅速に対応
  • サポーターの声や実績データは商談でのプレゼンに活用

 

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