新潟薬科大学 産官学連携推進センター

2019年05月31日
NICOpress164号新商品・新技術開発

新しい日本酒を世界へ
高圧処理技術と市場開拓 両輪のアプローチでめざす

新潟薬科大学 産官学連携推進センター 応用生命科学部長 教授 重松 亨 氏 /  産官学連携推進センター長 教授 高久 洋暁 氏
応用生命科学部長 教授 重松 亨 氏 / 産官学連携推進センター長 教授 高久 洋暁 氏

「今後も得意分野を活かしながら健康に関する研究を推し進め、産学連携に活かしていきたい」と高久教授(右)。重松教授(左)は「企業のニーズを大学が吸い取り、研究テーマを一緒に作る方がうまくいくこともあるので、何でも相談してほしい」と語る。

地域連携や信頼関係が産学官連携の強みに

「応用生命科学部」と「薬学部」からなる新潟薬科大学は、食・薬・バイオ・環境の領域に貢献できる産学官連携に力を入れている。
「新潟は農業が盛んな地域ということもあり、応用生命科学部は食品を一つの看板に掲げ、地域企業との連携を優先させていただいているのが特徴です。また、これまで地域企業と先生方との繋がり、信頼関係が築かれてきたことも、本学の産学連携の強みになっていると思います」と語るのは、産官学連携推進センター長を務める高久教授。平成19年度に同センターを開設したことで外部との窓口が整備され、情報が一本化したことも強みの一つだ。「企業だけでなく個人の農家さんなどもセンターを利用しています。どの先生がどの研究に精通しているのかをセンターが把握しているので、適材適所のご紹介ができる。それにより研究に発展する可能性が高くなり、事業化に結びつくものが少しずつ出てきました」。

 

高圧処理装置

新潟薬科大学 産官学連携推進センター

 

食品・発酵工学研究室では、高圧処理装置を使ったさまざまな研究を進めている。高圧処理条件の研究から「圧力感受性酵母」を作出し、従来よりも200MPa程度の「低い」高圧処理による醸造プロセスを構築した。

 

革新的な醸造技術を開発 海外市場を目指す

連携による研究の中でも注目されているのが、平成28年度から30年度の実証型研究開発プロジェクト「圧力生酒コンソーシアム」だ。応用生命科学科の食品・発酵工学研究室の重松教授は「以前から繋がりがあった金升酒造さんとの会話の中で、高圧処理技術を日本酒に応用できないかという話が出たのがきっかけです。実はこうした雑談の中から研究テーマがよく出てくるのです。そこで圧力研究で長く関わってきた越後製菓・総合研究所や新潟県醸造試験場にも呼びかけ、コンソーシアムを作りました」と話す。
一般的に日本酒は「火入れ」という加熱処理で酵母の殺菌を行うが、生酒は火入れをしないため、フレッシュですっきりとした味わいが特徴。しかし、冷蔵しても日持ちがしないのが弱点だった。この研究では高圧処理によって熱をかけずに酵母を殺菌し、生酒の風味を残しながら過発酵を防ぐという新たな醸造プロセスを開発。常温流通を可能にすることで、国内の新規需要を開拓し、海外市場参入による日本酒の輸出拡大というビジネスモデル構築を目的にした。
また、開発段階で大きな壁となったのが容器だ。高圧殺菌処理には、伸縮性、柔軟性のあるPETボトルが最適だったが「安っぽく見える」という意見も強かった。そこで高級感のあるパッケージをデザイナーに依頼。さらに大日本印刷が開発したPETボトルを採用したことで、一気に実用化が見えてきた。
こうして平成30年にスパークリングのにごり酒『AWANAMA』の試作品が完成。「にいがた酒の陣2018」で試飲調査を行うと、多くの来場者から高い評価を受け、今年の酒の陣では試験販売として2日間で450本を完売した。

「AWANAMA」

米の旨みがありながら、シャンパンのようなキレとすっきりとした飲み口が特徴の「AWANAMA」。江戸切子の模様があしらわれた高級感のあるボトルデザインは、新しいタイプの日本酒を強調する魅力になっている。

 

フランスと香港の展示会に出展

昨年10月、11月にはフランスと香港の展示会に出展。試飲調査では、味だけでなく新技術の物語性や「クールジャパン」を意識したボトルも高い評価を受けた。 地域企業と協力し理系・文系の両学生が主体となった商品開発も行っている。

 

研究成果を実用化しビジネスをつくる連携へ

今回のプロジェクトで技術研究を担う「応用生命科学科」とともに重要な役割を果たしたのが、4年前に設立された「生命産業創造学科」だ。過去に技術研究が進んでも具体的な事業成果まで至らないケースを経験し、大学の研究成果を実用化できるチームが必要だということをきっかけの一つとして、食品や環境ビジネスを学ぶ文科系の学科を設立した。「このプロジェクトも商品コンセプトやパッケージの提案、マーケティングまで同学科の教授や学生たちが行ってくれたのが大きかった。文科系のチームと技術開発の理科系チームが両輪で動いたからこそ、2年目に試作品が完成し、3年目には海外の展示会にも出展できたのだと思います」。
最近では学生の自主企画による商品開発や、「学生とコラボしたい」という県内企業の依頼から商品化に結びついたケースも出てきている。「企業さんがいろいろな話を持ってきてくれたら我々も嬉しいですし、チャンスにも繋がります。大学は敷居が高いという先入観を持たず、どんな小さなことでもいいので相談してほしいですね」と重松教授。大学が持つ技術シーズだけでなく、学生の発想力やチーム力を活かした連携スタイルは、企業が新たな突破口を開く手助けになってくれそうだ。

 

地域企業と協力し理系・文系の両学生が主体となった商品開発

地域企業と協力し理系・文系の両学生が主体となった商品開発も行っている。

 

パートナーシップ[研究体制]

 

発酵技術+高圧技術=新規醸造プロセスの技術開発

  • 新潟薬科大学 応用生命科学科(発酵醸造研究ユニット,植物細胞工学)
  • 金升酒造(清酒製造)
  • 新潟県醸造試験場(発酵・醸造技術)
  • 越後製菓・総合研究所(高圧技術)
  • 大日本印刷(プラスチック容器技術)

 

発酵技術+高圧技術=新規醸造プロセスの技術開発

  • 新潟薬科大学 生命産業創造学科(食品ビジネス研究ユニット)
  • 金升酒造(清酒販売)
  • 越後製菓(高圧処理食品開発・販売)
  • 大日本印刷(市場開拓等)
 

 

連携のポイント

  • コンソーシアムを形成し、超高圧技術を活かした研究を実用化
  • 技術開発とともに、国内外の市場拡大を目指すビジネスモデルを構築
  • 大学の技術シーズだけでなく学生の発想力やチーム力も活用

企業情報

新潟薬科大学 産官学連携推進センター

〒956-8603 新潟市秋葉区東島265-1
TEL.0250-25-5402
URL https://www.nupals.ac.jp/liaison/

新潟薬科大学は「バイオ」技術を活かした生命科学研究を基盤に、産学官連携のもと医薬品・健康食品・サプリメントの開発や機能評価、バイオ関連技術開発などに取り組んでいる。「産官学連携推進センター」が窓口となって課題ニーズに応じて研究者を紹介し、知的資産・設備機器資産の有効利用を促している。

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