新潟の企業に身近な位置から新たな価値を提供したい
「工学は社会の役に立ってこその学問。ぜひ大学を利用してください」と話す古口副学長(右)と富永センター長(左)。さまざまな実験装置が揃う風・流体工学研究センターにて。
連携のための独自システム 開学時から企業交流を強化
「企業がつくったものづくり大学」のキャッチコピーの通り、開学から新潟の企業とのつながりが深い新潟工科大学。「大学の先生も参加し定期的に県内各地で地域懇談会を開催するなど、自ら企業の皆さんに近づいていくのが、他の大学とは違う個性だと思います」と古口副学長は話す。
産学交流を推進するため、開学直後から地域産学交流センターを設置。広く企業からの共同研究や受託研究、技術相談などを受ける窓口の役割を果たしている。同センターでは、専任のリサーチ・アドミニストレーターが、企業の要望に合わせて、研究者につなぐ体制をとっている。これは2011年から同大学が取り組んでいたコーディネーター制度と、国が整備をすすめるリサーチ・アドミニストレーターシステムを融合させた大学独自のポジショニング。その存在によって課題解決に合った研究者へと話がスムーズにつながり、ミスマッチングを防ぐなど、企業と研究者の両者にとってメリットを生んでいる。
連携の可能性が広がる 風・流体工学研究センター
昨年3月に同大学が開設した「風・流体工学研究センター」は、さらなる産学連携の可能性を拓くものとして期待されている研究拠点だ。国内最大級の大型風洞実験装置を備えており、コンピュータシミュレーションによる解析も行う。これまで地域の「風」問題に着目し蓄積してきた研究成果を、さらに幅広いジャンルで活用してもらうことを狙いに設置された。
センター長を務める富永教授は「これまでは個人研究室で取り組んできましたが、センターには化学、ロボット、スポーツ、建築構造など、さまざまな専門の研究者が学内横断的に参加しています。これにより、風・流体に関わる研究の幅を広げていきたいと考えています」と話す。
これまでの連携事例としては、朱鷺メッセを始めとする建築・都市環境に関する風の影響の検証や、コンクリート製品メーカーによる防風フェンスの開発などがある。また、太陽光パネルやカメラなど屋外設置物の耐風性能評価、手すりの風鳴り騒音検証なども多く手掛けている。「こちらのセンターは、建築・都市開発だけでなく、ものづくりでも大いに活用していただけます。新潟の中小規模メーカーから、作ったものについて風に当てるとどうなるか知りたい、あるいは納品時に性能確認を求められるので調べてほしい、といった依頼もよく来ます」。
風・流体工学研究センター
大学の開学以来進められてきた「風」「流体」に関する独自性の高い研究をさらに重点的に取り組む拠点として開設。大型境界層風洞での実験やコンピュータシミュレーションによって、風やさまざまなものの流れの解析を行うことができる。その活用先は建築、まちづくりからものづくりまで幅広い。
まちづくりからものづくりまで 風・流体の研究が生かせる
一方、いまは出来上がったものに対する検証依頼が多く、対処療法的な取り組みになるが、もう少し早い段階で大学に相談してもらうことで、最終形がさらに良いものになる可能性もある、と富永教授は話す。「例えば焼却設備の開発事例では、いくつかのパターンの設計を行い、どれが効率がいいか、コンピュータシミュレーションで事前に検証しました。これはとても有効だと思います。こうした検証や実験の経験を通してノウハウが出来て、社内にこういう技術を導入しよう、必要な技術者を採用しようと計画できれば、さらに理想的です」。
富永教授がいま関心を寄せているのは、風が運ぶ雪や砂について。「雪の吹き溜まりや地吹雪も、風をコントロールできれば防げる。防風・防砂フェンスの効果的な設置場所などの検証に力を入れていきたいです。また、工場内の温熱環境や有害物質の拡散防止、風通しの改善といった悩みにも、センターの技術を役立てることができます」と語る。 また、センターではスポーツや医療、水中ロボット、幅広いジャンルで、風・流体をキーワードにした研究が進行している。風や流体の特性を活用することで、さまざまな分野で新しい価値を生み出すことが可能だ。自社の製品や技術、アイデアと工科大の技術を掛け合わせたとき、新たな発見があるかもしれない。
[共同研究の事例]
企業情報
新潟工科大学 地域産学交流センター
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新潟工科大学は企業連携のもと経営者や技術者が講師となり実践的な学びを提供している。企業等からの共同研究や技術相談、各種調査等を行うほか、企業の技術者向け研修会や相談会も開催しており、積極的な産学交流を進めている。(分野は機械、制御、電気、電子、情報、化学、バイオテクノロジー、建築および土木等に関する基礎研究、応用研究および実用化研究など)