コンペ受賞者のその後を語る!「after IDS」③株式会社U・STYLE様

2023年12月04日
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「ニイガタIDSデザインコンペティション」受賞企業をご紹介します!

after IDS ~受賞で栄光、ビジネスで成功~

新潟で誕生した商品、サービスに対する専門家の品評をいただく「ニイガタIDSデザインコンペティション」。

30年以上の歴史を持つ本コンペを活用し、成功につなげられた方々のストーリーを紹介する本企画。

第3回は、「社会をより良くする”仕組み”」も出品できるというIDSの特徴を活かし、社が目指すビジョン「デザインによる持続可能な地域再生」への歩みを加速させている、IDSコンペ2021大賞「Urban Waterside Toyanogata -(株式会社U・STYLE様)」です!

 ※文章は事業者様からヒアリングした内容をNICO職員がまとめたものです。

1.受賞商品・サービス

Urban Waterside Toyanogata -潟と人がともに暮らす水辺のまちへ-

(鳥屋野潟の再生活動をブランディングする一連のコンテンツ。画像クリックで動画を再生)

2.商品・サービスに込めた思い、背景など

新潟市の街中。白鳥が降り立つことで有名な鳥屋野潟。
このきれいな姿は、およそ20年におよぶ地域住民の保護活動により「取り戻された」経緯を持つ。

1970年代、鳥屋野潟は市街化による生活排水、工業廃水で汚染された。2002年に環境基本法に基づく水質基準をクリアし、再び人や動物が集まれる場所になるまでの努力がそこにあった。

それらの取り組みを後世に伝えるため。そして、地域の生業として将来も続くよう、デザインの力を合わせながら積み重ねてきた取組みを世の中に周知するため、同社はIDSコンペに出品した。

3.応募のきっかけ、経緯

■始まりは東日本大震災
 2011年、東日本大震災。多くの「命」と「暮らし」が津波に一瞬にして飲み込まれたその光景に、「人の暮らしの記憶が、世代を超えて残るような取組みを、今すぐに始めないといけない」と同社社長松浦氏は感じた。

 折しもその頃、鳥屋野潟周辺でゴミ拾いを続ける男性と出会う。飲み水にも使われていた「きれいだった鳥屋野潟」の姿を知るその男性のお話を編纂し、地域住民や学校に配布したのが、本取組みのスタート地点となる「潟ボーイ’s(2012年~)」である。

 同誌は人々の記憶だけでなく生態系の紹介まで広がりを見せ、毎年発刊されている(2023年現在)。

■ホームページ刷新。IDS出品で「これまで」と「これから」を見つめ直し、リスタート。
 いわゆるデザイン業務である「潟ボーイ’s」に始まった取り組みは、広義のデザイン(≒設計)へと深化。
 月に一度、鳥屋野潟のほとりで開催されるローカルマーケット「潟マルシェ」の企画、土壌・水質調査「潟の診断レポート」、漁協との連携による「TOYANOGATA PICKNIC(水上ゴミ拾い)」など、同社の取り組みは広がっていく。

 2020年、ホームページを大規模アップデート。これらの経緯を周知するための手段として、社会的取組(≒広義のデザイン)が応募できるIDSコンペに出品した。

4.IDSコンペ受賞後

■物語の続きは社長の生まれ故郷、上越へ
 人口減少が続く同社社長の生まれ故郷、上越市安塚区。アイデンティティである里山を「人間と自然が共存していくための高度なシステム」と捉え、それらを総括的に保護するためのローカルブランド「里山ボタニカル」を立ち上げ。IDSコンペ出品時に取組みをまとめた結果、地元の素材を活かした”フードデザイン”に手ごたえを感じたことから、麹チーズケーキやお茶など、「地元の物語」を乗せたモノを世の中にリリースしていく。

■到達地点は「米も日本酒もつくるデザイン会社」
 ブランディングを進めるなかで課題となったのが棚田の保護。社長が選んだ道は自ら米を作ること。それだけでも驚きだが、「無農薬米の1等米を取れても、これが高収益化しないと続かない」と危機感を感じた同社は、地元酒販店、酒蔵に協力を依頼し、棚田から生まれたお米で「MANDOBA(まんどば)」というお酒造りに挑戦。

 【リンク】新潟のデザイン会社がつくる「自然のめぐりが醸す酒」で、美しい里山を未来へつなぐ!

 このクラウドファンディングは人々の共感を呼び、一度の販売で約150万円を売り上げるヒット商品となった。 

5.受賞者コメント

■目指すのは「持続可能な地域再生の取組み」。IDSはそれを認めてくれたコンペ。
 2016 年、オランダ アムステルダムの De Ceuvel。そこで目の当たりにしたのは、荒廃した水辺にある廃船をオフィスとして生まれ変わらせるという、「デザインによる課題解決を進めるクリエイターの姿」です。私は「この世界の潮流に呼応する動きが、新潟の水辺でも実現できたら素敵だな」と触発され、今もその思いを胸にクリエイターとしての活動を行っています。

 一方、お金儲けが目的と捉えられると困ってしまうのですが、どんな取組みも続けるためには「経済性」が必要で、そこから逃げることはできません。補助金で始めた「潟マルシェ」は、現在は補助金に頼らず続けることができています。今、上越市安塚区で進めている一連の取り組みも、「里山に持続可能な経済を起こす」ことで再生の道筋に乗せようとするものです。

私たちはこれらの取り組みを「経済合理性の外側にある地域課題を、内側に入れ込みながら解決を試みること」と表現しています。お米の高付加価値化に向けた日本酒「MANDOBA」製造はその一つです。

 遡れば IDS デザインコンペでの受賞が、その後の私たちの継続した取り組みの推進を側面から支えるものとなっていると感じます。みなさま、今後ともよろしくお願いします。

 

(取材協力)株式会社U・STYLE 代表取締役 松浦 和美氏

 

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