after IDS ~受賞で栄光、ビジネスで成功~
新潟で誕生した商品、サービスに対する専門家の品評をいただく「ニイガタIDSデザインコンペティション」。30年以上の歴史を持つ本コンペを活用し、成功につなげられた方々のストーリーを紐解く本企画。
今回は設計力(≒広義のデザイン性)を評価するIDSの特徴を活用し、生産性がアップする「プロ仕様工具」をほぼ毎年出品。人財育成にもつなげているという、IDSコンペ2021プロツール部門(※現在のプロバリュー部門)受賞「2×4(ツーバイフォー)止型定規 クリア(シンワ測定株式会社様)」をご紹介します!
~文章は事業者様からヒアリングした内容をNICO職員がまとめたものです~
1.受賞商品・サービス
2×4(ツーバイフォー)止型定規 クリア
2.商品・サービスに込めた思い、背景など
■木材のなかでも汎用性が高い2×4(ツーバイフォー)材。住宅や家具など、多くの分野に活用されているが、適切なサイズへのカット、ねじ止めによる接合に必要なケガキ作業(位置決め)の手間も多く、「2×4材を効率的に図ることに特化した道具が欲しい(青枠部分)」というユーザーのニーズから開発がスタート。
■「45°もよく測るし、定規を押さえるときにも便利」という同社の工夫(赤枠部分)を組み合わせた結果、
①45°と90°を同時に確認できる形状
②作業回数の多い等分割り付けとビス穴の位置決めが行えるガイド
③木材が見やすいクリアなポリカーボネート樹脂製
上記3つの特徴を備えた定規となり、素早く、確実なケガキ作業を実現。ヒット製品の1つとなっている。
3.応募のきっかけ、経緯
■「はかるもの」の未来を作る。常に新市場の創造を目指す社風
高度経済成長期である1971年、「50年先も続く企業」を目指し、渡辺度器製作所、羽生計器、渡誠度器製作所の曲尺メーカー3社が合併し同社は誕生。この常に未来を見据える精神で挑戦を続けた結果、曲尺をルーツとしながら、大工用具「墨壺(すみつぼ)」、その現代版「レーザー墨出し器」で業界トップクラスのシェアを獲得。
現在も「”はかる”のその先を創造する」というミッションを掲げ、新市場の開拓を継続しており、現時点で製品点数は2,400点を超える。
3社の曲尺と、業界トップシェアのレーザー墨出し器
■ユーザーの期待を超える。「ニーズ(欲しい)×シーズ(あったらいいな)」
同社の製品開発は「お客様相談室」の電話やマーケティング部の調査から始まることも多い。開発部中島課長は、新製品の発売後、お客様相談室の電話が鳴ると、「売れた!使われた!という喜びと同時に、どんな感想が来るのかと緊張します」と語る。また、片山係長は「予想外の使われ方をしたような驚きの電話こそ、次の開発のヒントになる」と捉え、お客様相談室の声に耳を傾ける。
このように丁寧に汲み取ったユーザーのニーズに、開発者が「シーズ(あったらいいな)」を添える。それがユーザーに刺さったとき、売上につながると同社は考えている。
■開発モチベーション維持につながる「売上」以外の評価
同社は社員をとても大切にしている。製品開発を続けていると、市況の変化や販売先の事情など、運悪く売れないケースも発生する。その際、売上”だけ”が評価指標だと、開発担当者はつらくなり、ユーザーに寄り添うモチベーションの維持が難しい。
そんな折、NICOから届いたIDSコンペの案内に目が留まり、10年ほど前から出品を開始。「開発者が込めた想い(使い勝手≒広義のデザイン)が適切に評価される場所」と感じたため、出品を続けている。
4.IDSコンペ受賞後
■IDSコンペは、製品の良さを文章にまとめるチャンス
コンペ受賞を狙うには、どんな審査委員にも伝わるよう、専門用語をかみ砕き、限られた文字数で表現することが重要となる。同社はこのプロセスを「製品の魅力を見直すいい機会(中島課長)」と位置づけ、得られたノウハウをバイヤーへのセールス時などに活かしている。
しかしながら、どんなに言葉で語るより、製品の形状が自ら物語るほうが望ましい。2×4止型定規のような「見た目から使い方が伝わる形状」へのこだわり。徹頭徹尾ユーザー目線を貫く同社の姿勢が、新製品に機能美を持たせ、BtoB(プロ)に選ばれ、BtoC(DIY)にも売れる道具づくりにつながっている。
5.受賞者コメント
■IDSコンペは当社が目指す「ユーザーの期待以上の道具づくり」の一助になっています(中島課長)
今回は企業紹介に選んでいただきありがとうございます。
当社では毎年、「IDSコンペに出せる製品があるか」という協議を行っています。その基準は「当社らしいか」、言い換えれば「ユーザーの期待以上を目指していることが伝わるか」です。出品に値しないと判断した製品は、たとえ売れている製品でも出品しません。この売上とは別次元の評価が開発モチベーション維持、人財育成につながっていると信じています。
地元新潟製造業が魅力的であり続けるため、当社もそのうちの1社として、コンペを活用しながら新製品開発を続けていきます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
(取材協力)シンワ測定株式会社 開発部 製品開発課 課長 中島 充宣氏
開発部 製品開発2係 係長 片山 晶氏
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