地域の除雪業務を持続するために従業員の健康を考えた職場づくりを
長岡市で公共工事を中心に、土木・建設工事を手掛ける松井組。冬季は地域の除雪作業を請け負っている。8年前の豪雪の際、オペレーターたちが連続勤務によって体調を崩す様子を目の当たりにした古関さんは「勤務間インターバル」に注目し、13時間の休息時間を組み込んだ勤務モデルを作成し、実行。長岡市の「はたプラチナ賞」の働き方改革特別賞やニイガタIDSデザインコンペティションでの受賞など、高く評価された取組の背景について伺った。
窓メーカーの営業を経て、松井組に入社。業務部に所属し働きやすい職場環境づくりや、民間工事の営業などを担当。「長岡市令和5年度はたプラチナ賞」、ニイガタIDSデザインコンペティション2024「ソーシャル・バリュー賞/新潟日報社賞」を受賞した松井組『地域への持続可能な道路除雪サービスの提供(建設業用「勤務間インターバル」の設計)』の推進役。
Q1 「勤務間インターバル」を導入したいきさつは?
きっかけは2016年1月の豪雪による中越大渋滞でした。連続降雪で除雪が間に合わず、高速道路や国道8号から車が流れてきて、私たちが担当する中之島地区の県道・市道が渋滞の始まりの地域でした。早朝から除雪しても、戻ってくるとまた積もっているので、再び出動の繰り返し。休みなく除雪作業に当たるオペレーターさんたちが次々と「手足の震えが止まらない」「疲れがとれない」と体調を崩していくのを見て、何とかしなければという気持ちになりました。高齢の従業員も多いので心配でしたね。そのころ長距離バス運転手の過重労働が問題になっていて、インターバル(休息)の確保の重要性が話題になっていました。「正しく働くために、いったん休む」というのは今後主流になるはずで、当社の除雪勤務にも導入が必要だと考えました。
2016年の豪雪の際の様子。消雪パイプも井戸の水が枯れて機能せず、他エリアからの応援も得ながら対応。
Q2 導入し変化はありましたか?
従業員の皆さんは「仕事だから辛くても音を上げてはいけない」という気持ちが強いのですが、こちらから話を聞く機会をつくるようにしてきたことで、体調の不安や心配事も話しやすい雰囲気に変わってきたと感じます。また、インターバルによって作業時間が以前より限られる分、優先順位をつけて仕事を進めるようになりました。限られた時間で仕事を終えられるよう、みんなが自主的に考えるようになってきましたし、無駄な作業をしなくなったことでミスや事故が減るなど、体調管理だけでなく、さまざまな面で効果が出てきたと感じます。
Q3 デザインコンペ受賞を受けての感想は?
当初は、建設会社がデザインコンペに参加していいのかと思っていましたが、NICOの担当者からの熱意あるお声がけがあって、一念発起しました。この勤務システムが社会的に評価されたことで、自信を持って周知できるようになりました。オペレーターの高齢化、担い手不足は全国的な課題なので、除雪という仕事に光が当たったようで、ありがたいことだと思っています。
建設業用の「勤務間インターバルの設計」は、勤務の間に13時間の休息を入れて従業員の勤務計画を組んでいく。異業種から転職したからこそ、変えるべき状況に気づくことができたという。
▼ニイガタIDSデザインコンペティション2024
受賞内容について詳しくはこちら↓
Q4 今後の展開について
勤務体系を見直したいと思った背景には、職員の高齢化の他に採用活動につなげたいという思いもありました。昨年から週休二日制になり、若い人も入社してきてくれるようになりました。3年後には創業100年を迎えますが、その先も病気を抱えていても育児・介護をしながらでも働きやすい会社にしていきたいと思っています。
同社の淡路満佐男さんは62年間除雪業務に従事し、今年4月に新潟県知事表彰を受けた。勤務間インターバルの仕組みも評価理由のひとつになった。
企業情報
株式会社松井組
長岡市猫興野18-43
TEL.0258-66-2131
URL http://k-matsui-gumi.co.jp/