顧客の悩みに寄り添い生み出した
生産効率を高める油圧クランプシステム
営業部 部長 久保田 貴之 氏(写真右)
最初の油圧式コッター(金型固定器具)の開発では、内部に入れるシリコンオイルが液漏れしないように作ることに苦労しました。ただ、はじめに圧力や衝撃などの条件が厳しい鍛造用の製品を開発したおかげで、その後のプレス用のYELLOW CLAMPの開発はスムーズに進めることができました。
時間を要する金型交換
その課題をものづくりで解決
工作機械や鍛圧機械の販売、メンテナンスなどを手掛けるW&N。「私たちは販売会社ですが、メンテナンスを強みにしています。工場では機械が止まる時間が長いほど損失が増えてしまいますので、お客様の機械に不具合が生じた時には、“いかに機械を止めないか”を第一に考え迅速に対応しています」と山口代表。
同社では、ものづくりでも顧客の役に立てないかと模索する中で、鍛造機の金型段取り時間短縮に着目した。「鍛造の現場では、1回の金型交換に30〜40分もの時間を要することが課題になっていました。1⽇に3回金型交換をした場合、約90分〜120分⽣産ラインが停まってしまいます。そこで、私たちが関連会社のコマックと一緒に開発したのが3分以内で金型交換を可能にする油圧式のコッター(金型固定器具)です。鍛圧機械の国際展示会「MF-TOKYO」で2017年に発表したこの製品は、鍛造企業の間でも好評で「鍛造業界のノーベル賞」と評価してくださるお客様もいらっしゃいます。」(山口代表)。
機能とデザインが融合
工場で目を引く黄色いクランプ
その後、より大きな市場に目を向けて開発したのが、プレス機に金型を固定するクランプというシステム。油圧式のクランプは既に他社が製造していたが、付属のホースが作業の妨げになることが課題だった。それに対して、同社が開発した「YELLOW CLAMP」は油圧ユニットを内部に組み込んだコンパクトな製品。六角レンチだけで簡単に固定、取り外しができ、従来のクランプのような取り付け時の電力も必要としない。
「機能を追求した結果、無駄がないすっきりしたフォルムになりました。鮮やかな黄色にしているのは暗い作業現場でも目立つようにしたかったからで、デザインと機能が密接に関連しているのが特徴です」と久保田部長。完成した製品を2020年のニイガタIDSデザインコンペティションに応募するとIDS賞を受賞した。その後もシリーズのラインナップを増やしながら、グッドデザイン賞や、ドイツのレッド・ドット・デザイン賞に応募し、受賞を重ねている。
製品を売って終わりではなく、顧客のサポートを第一に考えるW&Nの姿勢から生まれた金型固定システム。電力を使わず環境負荷が少ない点も大いに評価され、大手自動車メーカーへも納入されている。「地場の活性化につなげたい」という思いでオリジナル製品を世に送り出してきた同社。今後はものづくりを新しい事業の柱に見据え、挑戦を続けていく。
YELLOW CLAMPの製品群。さまざまな種類の金型に対応できるようにシリーズ展開している。全て内部のシリコンオイルを圧縮し、油圧の力で金型を固定する仕組み。
加圧プランジャーを六角レンチで回して押し込むだけの簡単な操作で固定が可能。強い力は必要なく、女性や高齢者でも扱いやすい。圧力計の針がグリーンゾーンに入ったら固定完了。
従来の油圧クランプ(イメージ図)は、油圧ポンプや油圧ホースが必要だった。それに対し、YELLOW CLAMPは本体のみで使用可能。コンパクトで使いやすいのに加え、低価格であることも特長。
2023年7月に東京ビッグサイトで開催された塑性加工技術の専門展示会「MF-TOKYO2023」に出展。環境負荷軽減と省力化につながる製品は大きな注目を集め、海外企業からの問い合わせにもつながっている。
企業情報
株式会社W&N
三条市西本成寺1-29-37
TEL.0256-35-0527
URL https://worldniigata.co.jp/