食卓に笑顔を。刃を使わない安全なおろし金
商品開発の際にはいろいろな加工を試しますが、その過程で私だけでなくスタッフたちの技術スキルもアップしていきます。そうした社内の技術力、モチベーションの向上につながることも百年物語に参加するメリットだと思います。
コロナ禍がきっかけに
食卓を楽しくする商品を作りたい
精密板金加工、研磨仕上げ加工により、建築部品や各種機械用部品、厨房用品などを生産するトミタは、2018年NICOの百年物語に参加し、ステンレス製のプレートを開発。自社ブランド『艶麗』(えんれい)シリーズを展開し、東京の高級料理店で採用されるなど新たな販路を開拓してきた。そして2022年の百年物語で挑戦したのが、これまでにない形状のおろし金。その背景には新型コロナウイルスの影響があった。
「コロナ禍で当社の主力である加工品の受注が激減し、『艶麗』商品を使いたいという飲食店に営業ができなくなり、一気に受注がストップしました。また、外食できず、家にいる時間が増えたので、皆が食卓で使え、家族が笑顔になるようなアイテムを、当社の加工技術を活かして作れないだろうかと考えて出てきた案が、おろし金だったのです」と冨田代表は語る。
『艶麗』シリーズのステンレスプレートは、独特な表面仕上げにより自然を感じさせる模様を表現。東京・銀座のイタリアンレストラン、日本料理店などで採用されている。
ステンレス・鉄・アルミ・チタンなどの精密板金加工、研磨仕上げ加工を得意とする。
誰にとっても安心・安全で簡単に使える
美しさにこだわったおろし金
製品化する上で一番こだわったのが、子どもから高齢者まで安心・安全に、かつ簡単に食材をおろせるということ。従来のおろし金は鋭い刃や突起で食材をおろすため、手を傷つける恐れもある。そこで突起の形状や量産化に向けた加工方法を研究。商品開発会議では毎回新たな試作品を持参し、アドバイザーの意見を聞きながら改良を重ねた。「卓上で使うものなので美しさにもこだわりました。どういう突起の配列がよくおろせるか、美しく見えるのかを100回以上は試作し、千鳥状に交差させた“あじろ模様”の突起に辿り着いたのです」。
こうして完成した「トミタ式おろし金」は、グッドデザイン賞特別賞や出展した展示会で賞を受賞(※)。また、刃を使わないおろし金に対するユーザーの信頼を醸成するため、応援購入サービスのMakuakeにプロジェクトを掲載。目標を遥かに超える応援購入支援額を達成するなど大きな反響を呼んだ。
今年の百年物語でも新商品を開発し、2月の展示会でお披露目する予定だ。「1年に1つ新商品を開発するのが目標。これからも百年物語に参加して取り組んでいきたいと思っています」。今後も付加価値の高い自社商品に力を入れ、海外展開を見据えながら新たな道を切り拓いていく。
※受賞歴
■グッドデザイン賞特別賞「グッドフォーカス賞[技術・伝承デザイン]」受賞
■東京インターナショナル ギフト・ショー春 2022LIFE×DESIGN LIFE×DESIGNアワード「ベスト匠の技賞」受賞
独自のあじろ模様が刃の役割を果たすトミタ式おろし金。突起を交差させることでデザイン性も高めながら、スムーズなすり心地を実現。ステンレスプレートに突起を施すことで高級感も生まれた。国内特許を取得し、海外輸出も視野に入れている。
刃を使わないので手が触れても痛くなく、ニンニクのような小さな食材も最後まで安全におろすことができる。洗う時にスポンジが引っかからないことも魅力。
企業情報NICOクラブ会員
株式会社トミタ
燕市大曲2602
TEL.0256-62-5962
URL http://www.tomita-kogyosho.co.jp/