イガラシ・エンジニアリング
代表 五十嵐 功平 氏
声が出せない人をサポートするコミュニケーションツールとして、今注目されているのが「指伝話」というアプリだ。この開発に携わり、販売や販路開拓も行うイガラシ・エンジニアリングの五十嵐代表に、これまでの取り組みについて伺った。
指で選択して会話するコミュニケーショアプリを実現
声を出せない人の会話補助ツールとして広がる
電子機器のハードウェア、ファームウェアの受託設計を主力事業とするイガラシ・エンジニアリングでは、登録した言葉を指で選択して音声で伝えるアプリ「指伝話」の事業に2012年から取り組んでいる。
指伝話は、神奈川県のシステム開発会社の社長が「電車の中で声を出さずに電話対応できないか」と発想したのがスタート。そのハードウェア設計を同社が手掛けたことを機に、販売にも携わるようになった。「たまたま喉頭ガンで声を失った医師が診療で指伝話を使ってくれたこともあり、少しずつ医療現場で広がってきました」と五十嵐代表が話すように、現在は主に喉の病気や失語症など声を出せない人の会話補助ツールとして利用されている。
「30年間エンジニアとして仕事をしてきたので、ユーザーの声を直接聞くのは新鮮な体験。”ありがとう”と言われると、やりがいを感じます」と語る五十嵐代表。
要望に応え、幅広い用途に対応したシリーズに
スマートフォンやタブレット端末のアプリとして提供されている指伝話は、あらかじめ登録しておいた文章や言葉を選んで画面をタップすると、合成音声で読み上げてくれるシステム。文節を認識する音声合成エンジンを使用しているため、機械的な声にならず聞き取りやすいのが特徴だ。指伝話単体で対面での会話に使うのはもちろん、同社が開発した専用アダプターを介して携帯電話につなぐと、指伝話の音声を電話相手に届けることもできる。
さらに、医師や言語聴覚士のさまざまな要望に応え、指伝話シリーズのアプリも増えてきた。例えば、「指伝話メモリ」は絵と音声を組み合わせて使うアプリで、失語症などのリハビリ現場で言語訓練を行うために活用されている。
指伝話は、相手の話に対応する言葉をタップするだけで音声で応答。声は日本語だけでなく英語を選ぶこともできるので、海外旅行で利用するにも便利だ(写真上)。
新製品の「指伝話スイッチニ」。フットスイッチやブレススイッチをこのアダプターと接続するだけで、画面をタップしずらい人でもアプリを使うことができる(写真下)。
エンドユーザーとのコンタクトを通して新たな発見も
この事業で初めて販売の難しさを実感した五十嵐代表は、商品のPRの仕方を学ぶため、NICOの「広報実践講座」や「広報相談会」に参加した。また、指伝話キットの購入者が自治体に日常生活用具給付の申請をする際のサポートも行うなど、これまで経験がなかったエンドユーザーとのコンタクトを通して、新鮮な驚きや発見があるという。
昨年12月に開催された「NICO IT新技術フェア」では、新たに開発したアダプター「指伝話スイッチニ」を発表。このアダプターと、足や息で動かせるスイッチを接続することで、手が不自由な人でもスマホやタブレットの画面を操作できるようにした。「高評価は得ているので、もっと努力して指伝話を広げていきたい。そして、いつかは自社製品を持つことが目標です」と五十嵐代表。今後も指伝話の普及に取り組みながら、使う人の役に立つ技術を追求し、新しい分野に挑戦していく。
NICOのこれを活用!
「広報実践講座」「広報相談会」への参加、2015年「NICO IT新技術フェア」の出展などを通して、「指伝話」の販売拡大や販路開拓に取り組んでいます。
企業情報
イガラシ・エンジニアリング
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