王紋酒造株式会社【売上の約15%が海外市場。アジア、欧米に販路を持つ老舗酒蔵】

  • LINEで送る
  • Facebook シェア
2023年08月04日
NICOpress189号テストマーケティング専門家等に相談海外展開したい販路を開拓したい(国内)

海外の嗜好に合った味わいの酒と飲み方提案で市場を拡大

昨年、体感型の酒蔵見学が楽しめる「体感型酒蔵リゾート 五階菱」をオープンし、観光と誘客のアピールに力を入れている王紋酒造。一方、約20年前から日本酒の海外輸出に取り組んでおり、現在はアメリカ、オランダをはじめ12か国と取引がある。販路が生まれたきっかけの一つは、当初国内では注目されなかった低アルコール銘柄の存在だった。

専務取締役 杜氏 田中毅 氏
専務取締役 杜氏 田中毅 氏

杜氏の田中専務(写真左)と輸出部門の担当者。「五階菱」では王紋酒造の各銘柄や限定酒を試飲できる。「五階菱」は今年開館した「蔵春閣」をはじめ新発田の歴史文化を体感できる観光エリアにあり、クルーズ船の寄港地観光スポットとしても賑わっている。

アメリカの市場で低アルコール銘柄がブレイク

「日本酒ブームと言われて随分経ちますが、アメリカにしてもアジアにしても、市場はまだまだ広がっている感じはあります」。そう話すのは、自らも現地に足を運び、海外における日本酒市場を体感している王紋酒造の杜氏、田中専務だ。同社では現在、売上の約15%が海外への販売で、販路があるのはアメリカ、アジア、ヨーロッパの12ヵ国。海外販売の始まりはアメリカからだった。

「日本の商社から声をかけていただいたのがきっかけでした。当社の低アルコール酒の『かれん』の甘酸っぱい味わいが現地で好まれたことから販売量が増えていきました。当時、国内では売れ筋ではなかった商品だったので、面白いものだと感じましたね」。

その後、海外販売の難しさも味わう。アメリカの別の商社とも取引を始めたところ、最初の商社が手を引く形になった。「後発の商社も最初は売り上げが良かったのですが、3~4年で扱いが減っていった。しかし、その様子を見ていたのか、最初の商社が再度、取り扱いを始めてくれて、アメリカ市場が復活しました。ライバル商社と取り扱う商品が被ることを嫌がる傾向があるので、一つの国に一つの商社で取引を進めていくことが大事だと学んだ経験ですね。しかし、台湾からは他社と同じ商品でもラベルを変えて販売できませんか、という問い合わせが来たりするので、一概には言えず、難しいものです。いずれにしても海外展開ではパートナーとの関係性の構築がとても重要だと思います」。

海外輸出している商品群

海外輸出している商品群。写真左の『かれん』シリーズは8~11%の低アルコールでリキュールを含めた5商品を展開。中央の「王紋 大吟醸 極辛19」はハイボールやロックでの楽しみ方を提案し海外でも人気だ。高級感のある赤いパッケージは台湾など中華圏向けのギフト商材としてデザインしたもの。

 

支援機関のサポートを活用
商談用の英語版ツールも作成

現在、海外業務は社員3人がメインで担当し、うち一人はイギリス人を採用している。貿易についての社内体制を強化するため、JETROの輸出に関するセミナーや人材育成事業などに参加。その際、商談用のツールを作成することを勧められた。「最近はオンラインでの商談が増えたため、画面共有で見ていただく説明用の動画が必要でした。英語版の会社案内、商品紹介のパンフレットなどの商談資料も作成しました」。最初は自力で作り始めたものの上手く進まず、令和4年度のNICOの「食品の『輸出チャレンジ講座』」に参加し、専門家のアドバイスを受けて完成させたという。

取引先を開拓するきっかけとしては商社からの紹介や、JETROの商談会での出会いが多く、近年は展示会への出展も始めた。アクションがあった取引先に担当者がきめ細かく対応し、少しずつ販路を拡大している状況だ。またIWC(※)などの国際コンクールでの入賞も、海外での認知度を上げるには有効だという。

海外で販売している商品は『夢』をはじめ、純米酒の比率が高い。これは国によってアルコール添加されたアルコール度数の高い酒は輸入税等が高くなるためだ。また、オランダの場合はアルコール度数によって税金が変わり、15度以上の商品は酒の専門店でしか販売できない。輸出にあたっては、国によって異なる酒類の規制など税制度をしっかりと理解することが必要だが、各取引先とのやりとりの中で学びながら、情報を収集しているという。

英語版のカタログ

英語版の会社案内

オンライン上の商談で商品の魅力をより丁寧に伝えるため、海外商談用に英語版の会社案内やカタログ、PR映像を制作。

 

更なる海外販路拡大と国内の酒蔵観光を伸ばす

販売国の中ではアメリカ、オランダでの取扱量が多く、オランダは現地の輸入会社と直接取引を行っている。「海外では国内でも有名な銘柄の日本酒をよく見かけますが、『新潟の酒』もある程度ブランドが浸透してきている感覚はある」と田中専務。現地を訪問する際は日本食レストランへ行き、取扱い銘柄をチェックしているが、日本や新潟の有名銘柄が多く扱われている印象があるという。

また、海外でははっきりとした香りと旨みがある酒が好まれ、シンガポールやマレーシア、台湾などは梅酒やゆず酒といった甘い酒が人気の傾向がある。王紋酒造は昨年、NICOが行った「シンガポール食品テストマーケティング事業」にも参加。参加した商品の中でも『純米かれんシルク』と『王紋 大吟醸 極辛19』が好評だった。その後、テスト販売に携わった、海外販路開拓や流通を支援する商社との取引も成立。これから現地でオープンする新店舗の、世界の食品を扱うフロアで販売される予定だ。

また、日本酒をカクテルベースにした楽しみ方も拡がっている。「『王紋 大吟醸 極辛19』は炭酸水と合わせてハイボールにする飲み方が好評です。そこに柚子のリキュールを少し入れて試飲に出すと、セットで売れることもあります。蔵人はトニックウォーターを合わせてもおいしいと話すので、海外でも新しい日本酒の飲み方を提案したいと考えています」。

現在、取引先の開拓は展示会等を通じて現地のニーズにアンテナを立てながら進めている。「先日参加した東京ビッグサイトでの展示会で、フランスでの日本酒人気が高まっており、手土産にワインより日本酒を持っていく方が喜ばれるという話を伺い、開拓を検討しています」。

王紋酒造は昭和初期に4代目がドイツ留学した際、ヨーロッパの王族や紋章に憧れを抱いたことから、銘柄を「王紋」に変更したというエピソードを持つ。「その頃から海外とのつながりが生まれていたと考えると、こうして海外に販路を拡げていくようになったのも必然かなとも思えますね」と田中専務。今後も輸出と、「体感型酒蔵リゾート 五階菱」をきっかけとした国内のさらなる需要強化、酒蔵への観光客の誘致をテーマに、挑戦が続いていく。

日本酒コンクール「Kura Master 2023」で『夢 純米大吟醸』が金賞を受賞

日本酒の製造風景

フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2023」で『夢 純米大吟醸』が金賞を受賞するなど、アメリカ、スペインほか数々の日本酒コンクールに入賞。審査員には一流ホテルのトップソムリエやレストラン、ホテル関係者など飲食業界のプロが集う。海外のさまざまなコンクールの入賞歴が、知名度アップや取引拡大にもつながってきた。

 

体感型酒蔵リゾート 五階菱1

体感型酒蔵リゾート 五階菱2

オープンから1周年を迎えた「体感型酒蔵リゾート 五階菱」は、旧仕込み蔵を利用した幻想的なプロジェクションマッピングや土蔵を利用したカフェなど歴史ある蔵の空間をまるごと楽しめる。文化庁が推進する「日本博」の参画プロジェクトに認証されている。

※「日本博」:「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで、更なる未来の創生を目指すことを目的として文化庁が推進するプロジェクト

 

ポイント

  • 各国におけるパートナー会社との連携を大切にする。
  • JETROやNICOの海外展開支援事業を活用し、貿易に関する社内体制を強化。
  • 海外で好まれる味や飲み方をリサーチし、商品戦略を練る。

 

企業情報

王紋酒造株式会社

新発田市本町1丁目7-5
TEL.0254-22-2350
URL https://aumont.jp/

メルマガ・SNS


ページトップへページトップへ
NICO 公益財団法人にいがた産業創造機構

法人番号 7110005000176

〒950-0078
新潟市中央区万代島5番1号
万代島ビル9F・10F・19F(NICOプラザ11F)

TEL 025-246-0025(代)
FAX 025-246-0030
営業時間 9:00~17:30
(土日・祝日・年末年始を除く)