株式会社曽我農園

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2021年12月08日
NICOpress179号専門家等相談販路開拓

リブランディングで全国にアピールできるトマトブランドに!

新潟市北区にあるトマト専門農家の曽我農園の看板商品は、ハウスの中で冬越しさせてじっくり育てるフルーツトマト。それを同社では令和3年春に「越冬トマト」としてリブランディング。新たに作り上げられた世界観を通して、商品の魅力が広く多くの人に届き始めている。

株式会社曽我農園 代表取締役社長 曽我 新一 氏
代表取締役社長 曽我 新一 氏

「堅田さんからは、デザインだけを作って終わりになったパターンはよくあるから気をつけて、というアドバイスをいただきました。今回、経営を含めたトータルでのブランディングが大切であることを実感しましたね」と話す曽我社長。

感染症禍で変わる顧客の動き。
ネットで売れるデザインが必要に

曽我農園の公式サイトを開くと、雪の上に真っ赤なトマトが散らばった印象的な画像と共に、「越冬トマト」の文字が目に入る。同社が生産、販売するトマトの新しいブランド名だ。

曽我農園のフルーツトマトといえば、県内外のファンも多い人気商品。冬から春にかけて、ハウス内でじっくり育てることで、甘みと旨みが凝縮したトマトになる。おいしさの印として、表面に金色の筋が現れることから、「金筋トマト」と呼んできた。コロナウイルス禍前はこのトマト目当てに県外からも多くの客が訪れた。また、トマトジュースやケチャップも製造し、自社の直売所で販売。それらのパッケージやネーミングはすべて曽我社長が自ら手掛けてきた。

今回、リブランディングを決意したのは、コロナウイルスの流行が起き始めた頃のこと。「コロナウイルス禍でお客様が直売所に来なくなるなら、ネットで全国に販売したい。しかし、自分のデザインでは訴求が難しいと思っていました。相談先を探してNICOの『Design LAB(デザイン・ラボ)』の存在を知って相談を申し込み、アドバイザーであるKATATA YOSHIHITO DESIGNの堅田さんと株式会社フレームの石川さんが対応してくれました。お二人には“自分がやってきたデザイン、ブランドをぶっ壊してほしい”とお話しました」。

その場で試食してもらったジュースとケチャップの味は高評価。7月には堅田氏らが農園を訪問し、販売状況や利益率など経営状況を定量的に見ていくところから話は始まった。曽我社長は「デザインの話からだと思っていたので意外でした。まず経営状況を把握し、販売やデザインをトータルで見なければいけないというアドバイスをいただきました」と振り返る。

NICOプレス 株式会社曽我農園

ホームページでは「越冬トマト」の世界観をビジュアル、コピーで表現している。ネット販売を行っているのは、この自社HPのみ。ショッピングページへの誘導もスムーズだ。

 

新ブランドは「越冬トマト」
想像を超えた世界観を構築

年末には堅田氏を中心にデザイナーやカメラマンなどのメンバーが決まり、プロジェクトがスタート。そして提案されたブランド名が「越冬トマト」だった。「金筋トマトでは県外の人が何なのか分からないと指摘されて、最初は辛かったです。既存ブランドを壊してほしい反面、抵抗はあったけれど、変わらないと前に進めない。これまでの方針や事業をいかに新しい名前に適応させようかと考えていました」。

「越冬トマト」の名前は、雪が降り積もる新潟で、あえてコストと時間をかけておいしさを追求している農家の姿をイメージさせ、「越」の文字は「越後」にもかかる。「こういう世界観は僕には全然思いつかなかった。そこから雪に散らばる赤いトマトという、見たことのないビジュアルも生まれ、こうして世界観が広がっていくんだなと感じましたね。今はこの名前なら商品をしっかり認知してもらえると感じています」。

ケチャップやジュースのパッケージも刷新。描かれているイラストは一見トマトのようだが、よく見ると丸まって冬眠しているクマ。冬眠は越冬の表現だ。「チームの皆さんが創り出すものがずば抜けていたので、世界観の構築はお任せしました。自分の意見は、結局昔のデザインを作ったときの意見でしかないですから」。

その間、曽我社長自身はブランドがスタートしたその先に、「どうやって販売するか」を考え、SNSを活用したマーケティングを勉強し、準備を進めた。

NICOプレス 株式会社曽我農園
NICOプレス 株式会社曽我農園

4~7月に収穫されるものが「越冬フルーツトマト」。冬を経て約6ヵ月かけて育てられ、期間限定販売となる。今年は半分がネットで売れた。この人気に引っ張られる形で以前からあるレギュラートマト「恋玉」の販売も好調で、波及効果を感じている。

NICOプレス 株式会社曽我農園

「越冬フルーツトマトケチャップ」は1本2,160円。トマトのおいしさを濃縮したコクと甘みが楽しめる逸品。これまで加工品生産はジュースの方が多かったが、これからはケチャップの方が売れるようになるのでは、という堅田氏のアドバイスを受け、今年から生産量を増やしている。

 

リブランディングによって良い方向へ回り始めた

販売価格は見直した結果、倍近くに上げざるを得なかった。「特に加工品は原価率が高いのですが、これまで実は利益はほとんど出ていなかった。改めてネット販売に向けて、経費を含めて価格を設定し直しました。贈答需要がメインなので価格に恥じない品質とデザインで、お客様に喜んでいただこうと決めました」。

今年4月、シーズンの幕開けと同時に新ブランド誕生を一斉にリリース。メディアに多く取り上げられたことも追い風になり、ひと箱4,980円の越冬フルーツトマトには注文が殺到した。それに引っ張られる形でジュースやケチャップの売上も伸びていった。移動自粛で来店できない以前からの県外客の注文も多かったという。

また、5月末には規格外のトマトを「闇落ちトマト」としてTwitterで発信して話題に。「以前なら、一過性の盛り上がりで終わりましたが、今回はそこからネットショップや直売所にお客様が来てくれた。しっかりしたHPがあって、そこに越冬トマトというブランドが構築されていたことで、新しいお客様になってくれるという良い循環が生まれました」。

今後の展開も念頭にはあるが、まずはリブランディングにかかった費用を3年で返済し、それを乗り切ったところで次のステップに入りたいと語る曽我社長。「世界観の構築、デザイン、ホームページ。この3つは自分ひとりでは絶対に作れなかった。売るためのベースと、自分が作るものの品質が合致したことで、今は良い方向に経営が回り始めていると思っています」。

NICOプレス 株式会社曽我農園

「越冬フルーツトマトジュース」は大瓶720mlが1本4,968円。1本あたり約20個のトマトを使用しているリッチな味わいが特徴で、ギフトにも人気。180ml入りの小瓶1,296円もある。

 

ポイント

  • 全国販売に向けて自社の強みを再確認し、贈答需要向けアイテムに注力してブランドを再構築
  • これまでのブランドを壊すことを受け入れる覚悟を持って取り組む
  • ブランド構築と共に販売戦略を練り、再スタートに向けて準備する

 

企業情報

株式会社曽我農園

〒950-3304 新潟市北区木崎1799
TEL.025-288-6803
FAX.025-288-6806
URL https://sogafarm.jp/

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