デザインを核として戦略的にブランディング
成長を加速させる力を育てる
食品や医薬品業界で導入される金属検出機、かみこみX線検査機の開発など、 異物検査機に特化した事業を展開するシステムスクエア。BtoB企業においてデザインを経営資源として活用し、トータルブランディングに取り組みながら、国内・海外の市場開拓を進めている。
デザインセクション新設時から、商品デザインやブランディングに取り組んできた斉藤部長。「事業を拡大する上で必要なブランディングの実績例はたくさんありますが、それを自社の事業の中に具体的に落とし込んで実行していくことが重要。覚悟を決めてやるしかないと思います」。
デザインは、マーケティングや
ブランディングを念頭に置き考える
異物検査機メーカーとして世界トップレベルの技術を持つシステムスクエア。同社がブランディングに取り組むきっかけとなったのが、2005年にデザインセクションを新設したことだった。「当時は技術的に他社と遜色のない異物検査機を開発しても、販売面で苦戦を強いられていました。そこで自社商品に足りないのはデザインではないかということで、部署が設けられたのです」と斉藤部長。
当初は商品外観の改良という“狭義のデザイン”から着手するが、同社のデザイン顧問を務めた長岡造形大学名誉教授の川崎晃義氏からは、「狭い意味でのデザインだけでは、企業内でも社会的にもデザインの力が発揮できない。デザインは常にマーケティング、ブランディングを念頭に置いて考えなければいけない」との指導を受けていたという。「販売先の食品業界は慎重なため、後発メーカーである当社が機能の良い新商品を発表しても反応が鈍い。生き残るためにはブランディングを長期的に進めながら認知度を上げ、ファンを増やす活動をしていく必要があると考えました」。
ブランドを育ててきたことで
大手企業との取引が増大
商品デザインでは、これまでグッドデザイン賞を5回、ニイガタIDSデザインコンペティションで大賞を受賞。第三者から評価を得たことで商品プロモーション、企業のブランド力向上に繋がった。また、国内・海外の展示会に継続して出展。ブースデザインに力を入れ、事前の広報、Web展開との相乗効果で顧客との接点を拡大するとともに、そこで得られた顧客のニーズを商品デザインやカタログ、販促資料などに反映するサイクルを強化していった。
「ブランドというのは、人の心の中に長い時間をかけて育つもの。今いるお客様、まだ見えないお客様に対して私たちもいろいろな手を打つわけですが、相手の心の中に本当に育っているかどうか、その過程は目に見えません。そういうものを事業として組織の中で取り組んでいくことは難しい。社内を説得し事業に継続して投資してもらうことは難しかったです」。それでもデザインで事業に貢献できる仕事の範囲を少しずつ広げ、一つ一つ実行していくことで、顧客の反応も変化していった。「この数年で、これまで全く取引がなかった大手企業から問合せが来るようになり、商談に至ることができるようになりました。営業、技術部門の努力もありますが、ブランディングも貢献していると思っています。ブランディングはなくても商売はできます。ただ、ブランドを育てるという工程を加えると、成果が拡大するスピードが加速する。短い期間で結果を出せると思います」。さらに、ブランディングが進んだことで社会的な認知度が上がり、メディアの取材が増えたことも成果の一つだという。
ブランドブックの制作では、ワークショップを通して会社に対する思いを出し合い、集約していく作業を行った。ブランドブックはインナーブランディングを加速させる大事なツールになった。
今年開催されたドイツの展示会では、初めて単独で自社ブランドのブースを構えて出展。海外はブランドに対する意識が高いため、自社ブランドを明確に打ち出すことで信用も得られるという。
全社員で目指す姿を共有。
社員の意識に変化も
2018年には、さまざまな視点からCI(コーポレイト・アイデンティティ)の見直しを図った。その一つが会社のシンボルマークとなるロゴだ。「私がCI刷新の必要性を感じたのは2008年頃からでした。展示会のブースなど、さまざまな用途にロゴを展開させる作業の中で、機能やバランスなど具体的な問題にぶつかるようになったのです」。斉藤部長はロゴの課題を検討。時間をかけて社内でプレゼンを行い、新たなロゴマークを完成させた。
また、2019年の新社屋竣工に合わせてブランドブックと30周年記念誌、企業紹介動画などを制作。中でも会社の理念や将来の方向性を表したブランドブックは、社員が主体となって作り上げた冊子だ。「管理職やリーダークラスなど14名が集まり、システムスクエアらしさとは、強みや弱みは、将来向かうべき方向など、いろいろな思いを出し合い、そのエッセンスを集約して冊子にまとめました。みんなで作ったことに意味があると思います」。このブランドブックを全社員が共有することで、最も基本とすべき指針を効率的に伝達できたこと、「自分たちの目指す方向性」に基づいて考える様子が社員に現れ始めたことが、インナーブランディング※を進めてきた大きな成果だという。
「今後はデザインを核としながら、ブランディング、マーケティングの領域をより広げていきたいです。また、海外展開が加速し、最近は中国とヨーロッパが具体的に動き始めています。自社単独での展示会出展やWebでの情報発信を強化し、効率よく事業を加速させていきたい。海外のほうが企業ブランドに対しての感度が非常に高いので、実績に繋げていきたいと思います」。
システムスクエアは早くから将来の自社ブランドの在り方を描き、社内外両方のブランディングを実践して成果に繋げてきた。展開が加速していく同社のこれからに注目していきたい。
CI見直しの一環としてロゴタイプを刷新。創業者や社員の愛着もあるため、ロゴの変更は現状の問題点を細かく分析し、時間をかけてプレゼン。新社屋竣工に合わせ、新たなシンボルマークが生まれた。
企業情報
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