有限会社尖閣湾揚島観光

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2020年07月31日
NICOpress171号専門家相談

老朽化した食堂を魅力あるカフェに刷新
島民需要を掘り起こす

佐渡島の外海府海岸に位置する尖閣湾は、観光客に人気の景勝地。その観光拠点である尖閣湾揚島遊園は島への観光客数の減少に比例し、売上も減少傾向にあった。そこで、島民にもリピート利用してもらえる場所を目指し、食堂を中心にリニューアルを行った。

有限会社尖閣湾揚島観光 田村課長、佐藤代表、竹谷コーディネーター
代表取締役 佐藤 博文 氏 / 営業課長 田村 平人 氏

左から田村課長、佐藤代表、竹谷コーディネーター。
尖閣湾揚島観光は1950年に地元の人々の出資で設立。観光施設「尖閣湾揚島遊園」として、事業を展開している。「客単価が低かった食堂や売店の底上げを図ることで、園全体の売上拡大を目指しています」と佐藤代表。

佐渡島への観光客はピーク時の半分以下に

尖閣湾は、佐渡金山、トキの森公園に次いで佐渡島内の観光立ち寄り3位の人気スポット。園内には売店やカフェ、水族館などの施設があり、美しい奇岩の風景を海上から眺める海中透視船クルーズが観光の目玉だ。しかし、佐渡島への観光客数は1991年の123万人をピークに年々減少し、近年は50万人程度にまで落ち込んでいる。

2017年から、よろず支援拠点のコーディネーター竹谷氏より、店内のPOPの書き方やSNSでの発信方法のアドバイスを受けていたが、2019年に佐渡市の補助金の申請を行い、売店・食堂が入る建物の改装とメニューの見直しを実施。今年3月にリニューアルオープンした。

「以前の食堂は老朽化が進み、提供していたメニューは簡単に出せるそばやうどんが中心。その結果、尖閣湾揚島遊園全体に占める食堂の売上はわずか6.4%に留まっていました。また、お客さまの大部分が島外からなのですが、佐渡は12~2月はオフシーズンになります。安定して売上を確保するためには島民の方にも来てもらえる場所にする必要があります。そこで、竹谷さんから補助金の話を教えていただき、建物の内外装やメニューを見直すことにしました」と田村課長は話す。

有限会社尖閣湾揚島観光 尖閣湾の風景

園内から眺める尖閣湾の風景。右下に見えるのが海中透視船で、15分の遊覧が楽しめる。

 

空間の刷新と共に、魅力あるメニューを考案

リニューアルに際して、販売・集客・店づくりを専門分野とする竹谷氏が、事業計画書の作成から全面的にサポートを行った。食堂からカフェへ模様替えをし、カフェ空間の椅子やテーブルなどを新しく入れ替え、壁には杉板を張り、温かみのある雰囲気に刷新。「訪れた人のSNS投稿を促せるように無料のWi-Fiを入れたり、席にコンセントを設置してスマートフォンの充電ができるようにアドバイスしました」と竹谷氏。

さらに、場所の魅力を高めるために、島内で漁業と飲食業を営む合同会社ながもに参画してもらい、地元食材を使った新メニューを考案。佐渡米と佐渡産岩のりでつくる「生いわのりむすび」や地元食材を少しずつ味わえるプレート、水津漁業協同組合が製造する佐渡で水揚げされたブリを使ったメンチカツ「ブリっ子メンチ」のバーガーなど、ユニークなメニューが生まれた。以前から人気があったサザエのつぼ焼きやイカ半身焼きは残しつつ、テイクアウトしやすい串焼きを新たに加えている。竹谷氏はリニューアルにあたり、島内のさまざまな人材や業者を結びつける役割も担った。

建物は内観だけでなく、外壁の一部を板張りにしてこの地域らしい意匠に仕上げた。設備をピクトグラムで表現するなど、訪れる人への細やかな配慮もなされている。

有限会社尖閣湾揚島観光 PRチラシ

リニューアルオープンのPRチラシも作成。
有限会社尖閣湾揚島観光 川上工務店によるアイデア

随所に杉板を使い、自然素材の温もりを感じさせる空間が完成。ピクトグラムによるサインなど、さり気ない配慮が行き届いている。授乳室は、施工を請け負った島内の川上工務店によるアイデア。

 

ハード面だけでなくソフト面の改善も支援

新しいメニューの開発では、これまであいまいだった原価率もしっかり計算した上で内容と価格を決めていったという。

売店においては、POSレジを導入したことで商品のデータ管理が改善され、売上を見ながら効率的な仕入れができるようになった。「売店内は通路幅を確保して歩きやすくし、動線を長くして回遊性をつくり出しています。レジの位置を分かりやすくしたり、季節によって変わる客層に合わせたレイアウト変更や効果的なPOPの書き方も指導しました」(竹谷氏)。古くなった什器を見栄えよくするために、プラスチック段ボールで什器をリメイクするなど、低予算でできる改善も行っている。

今年は新型コロナウイルスの影響で一時休業し、6月から営業を再開。リニューアル後はカフェと売店の客単価が上がってきているという。「以前と違って、従業員が主体的に新しいメニューを考案したり、話し合うことも増えてきました。この雰囲気を維持していきたいですね」と田村課長。今年2月に代表取締役に就任した佐藤氏は、「これから島内の人が繰り返し来てくれる仕組みづくりに一層力を入れていきたいです」と話す。

竹谷氏の支援によりハード・ソフト両面の変化を遂げた尖閣湾揚島遊園。観光業は逆風が吹いているが、新たな島内需要を掘り起こして、売上拡大を目指している。

有限会社尖閣湾揚島観光 田村課長、佐藤代表、竹谷コーディネーター

飲食店が少ない外海府海岸という立地を生かし、朝から夕方まで佐渡らしいフードを提供できるスポットとなることを目標に話し合いを進めた。
有限会社尖閣湾揚島観光 おすすめの料理を集めたプレート料理

おすすめの料理を集めたプレート料理は、「おむすびプレート」、「バーガープレート」の2種類を用意。ながもがたっぷり盛られた「ながも丼」も人気メニュー。テイクアウトできる料理も充実している。
 

 

ポイント

  • 専門家や各分野に通じた人材のサポートを利用する。
  • 年間を通して安定した売上が見込める島民もターゲットに改善を行う。
  • 独自性のある魅力的なフードメニューを開発し集客する。
  • 従業員のモチベーションをアップさせ、良いものが生まれる社風に。

 

新潟県よろず支援拠点 コーディネーター 竹谷 知江子  氏
新潟県よろず支援拠点 コーディネーター
竹谷 知江子 氏

■ 専門/販売・集客・店づくり

今回の支援を進める前に、経営幹部だけでなく従業員全員に計画概要を分かりやすく伝えるサポートも行いました。全員の意識や自主性を高めることが狙いです。このような支援では、事業が終わった後も、社内で高い士気を持って進める空気をつくることがとても重要です。

 

企業情報

有限会社尖閣湾揚島観光

住所 〒952-2133 佐渡市北狄1561
TEL.0259-75-2311
FAX.0259-75-2814
URL http://ageshima.eek.jp

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