事業承継を託してくれた“親父”に会社の成長を誓う
「事業承継について、何をどうしたらいいのか、素人では全く分かりませんでした。専門家の皆さんの力無くしては、合併は実現できなかったと思います」と話す清水社長。
後継者がいない取引先から打診された事業の引き継ぎ
一般住宅の給排水設備工事や水道管の取り換えなど官民の水道工事を手掛ける株式会社清水。オフィスに入ると目に入るのが、壁一面に飾られた表彰状や感謝状。これらは三協工業と清水設備の名義のものだ。「2社のこれまでの歩みですね」と清水社長は話す。
清水社長は親が営んでいた設備工事業を受け継ぎ、30歳の時に会社組織にした清水設備を経営。三協工業とは下請け企業として10年以上の付き合いがあった。一方、三協工業は創業から40年近い歴史があり、新潟市の水道工事の入札参加資格も持つ会社。社長は80歳を超えていたが後継者がいなかったため、以前から清水社長に会社を引き継いで欲しいという打診をしていて、清水社長も快諾していた。2017年からは顧問税理士経由でNICOの事業引継ぎ支援センターにも相談を始め、徐々に話を進めていた。
しかし、昨年の夏、三協工業の社長が急な病に倒れ、約4ヵ月の闘病の末、他界。「入院中に“会社は俺がちゃんと継いでやっていくから”と改めてきちんと伝えることができたので、安心してくれたと思っています。社長が積み上げてきた実績、信頼・信用が一番大切なものなので、それを守り、引き継ごうと決意しました」と清水社長は振り返る。
ひとつの会社になり、入札から施工まで一社完結が可能に
三協工業の社長が亡くなったことで、合併への速度は急ピッチとなった。清水社長は半年後の6月1日から新会社としてスタートすることを決断。「双方の従業員の気持ちを思うと早い方がいいし、ちょうど年号も令和になるということで、変わるべき時なのかなと感じていました」。
清水社長としては、従業員の雇用を守ること、三協工業が持っていた水道工事の入札参加資格を維持すること、そして子会社化ではなく合併することが希望だった。「業界の先輩や専門家の皆さんからも三協工業を子会社にしたらというアドバイスをいただきましたが、分けることで自分の目が届かなくなるのは避けたかった。2社をひとつにして、これから成長させていきたいという気持ちが強かったので、合併を選びました」。
事業引継ぎ支援センターの関根氏は「短い期間のなかで、清水社長の希望を全て叶えるベストの方法を探ることが課題でした。今回のケースは、顧問税理士を中心に司法書士、社会保険労務士、行政書士等の専門家がそれぞれの分野から検討し、連携・協力しながら課題を解決した好事例と言えます。入札資格と水道組合員資格を確実に引き継ぐため、三協工業を存続会社として合併し、その後社名を変更するという方法を取っています」。
清水社長自身は水道組合へ何度も足を運び、この合併方法で確実に資格を引き継ぐことができるかを慎重に確認。「会社のこれからの発展のためにも資格は重要ですし、三協工業の社長の守ってきたものでもあるので、ここは絶対に失敗できないという思いでした」。
多くのことを教えてくれた社長の意志を受け継いで歩む
三協工業の従業員ふたりが加わることを見越し、今年の4月下旬、以前から手狭だった清水設備のオフィスをリフォームした。「社員全員がひとつのフロアで仕事ができるようになり、みんな喜んでくれました。心機一転となり、よかったと思います」。そして、6月1日から株式会社清水としてのスタートを切った。
清水社長は「いま始まったんだなという新鮮な気持ちと、やらねばならないという覚悟も改めて感じています」と話す。三協工業の社長からは、会うと仕事のことはもちろん、仕事以外のこともいろいろ教わった。「自分にとっては、もうひとりの親父という存在でした。これから先、社長の思いは絶対に忘れてはいけないと思っている。お客様を大事にしていた人間性や、培ってきた技術をしっかりと受け継ぎたいと思います」。
また、事業承継については「一人で悩んでいても解決しないし、何より時間がもったいない。信頼できる人に、早く相談することが上手くいくポイントです」と話す清水社長。事務所の壁には三協工業の当時の水道工事店の看板とともに株式会社清水名義の認定証も飾られている。2つの会社の歴史がひとつになり、新たな歩みがここから始まる。
企業情報
株式会社清水
〒950-3342 新潟市北区美里1-6-11
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