株式会社アベキン

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2019年10月16日
NICOpress166号専門家等相談

M&Aで技術、経験、知識を継承。
燕のものづくりを未来へとつなぐ

株式会社アベキン 代表取締役社長 阿部 隆樹  氏
代表取締役社長 阿部 隆樹 氏

「私が入社した15年前は約5千万円の赤字を計上していました。そこからV字回復し、財務が大幅に改善したことが認められて、今回のM&Aの話をいただけたのではないかと思います」と話す阿部社長。M&Aが企業のブラッシュアップにもつながったという。

高度な技術力に惹かれM&Aでの事業譲受を決断

アベキンは2017年、燕市で精密金型製作と高精度プレス加工を行う阿部製作所の事業をM&Aによって譲受した。
業績は好調だが、後継者の不在が長年の悩みだった阿部製作所の前社長は、取引のある協栄信用組合に「譲渡できる企業を探してほしい」と相談。そこで白羽の矢が立ったのがアベキンだった。「2017年の2月1日に協栄さんからこの話があり、とりあえず阿部製作所さんの財務状況を確認させていただくと、すばらしい内容でした。それまでM&Aは考えたことがなかったのですが、どういう仕事をしているのか興味を持ったので、2月20日に前社長と面会したのです」と阿部社長。
そこで阿部製作所が製造するバイクのブレーキパーツや人気腕時計の裏蓋などの製品を目にし、技術力の高さに驚嘆する。「工場見学もさせていただいて、まずプレス加工の技術に驚きましたし、当社にはない金型設計ができることも魅力でした。長年培ってきた技術と経験と知識をぜひ受け継ぎたいと思い、すぐにM&Aを決断しました」。

株式会社アベキン グローバルに展開する某人気腕時計ブランドの裏蓋を、国内で唯一生産している 株式会社アベキン グローバルに展開する某人気腕時計ブランドの裏蓋を、国内で唯一生産している

阿部製作所の強みは、長い年月の中で培ってきた精密金型の設計・製作と高度なプレス加工技術。グローバルに展開する某人気腕時計ブランドの裏蓋を、国内で唯一生産している。

 

交渉や手続きの支援を受け迅速な事業承継を実現

M&Aに関する調整や手続きは、NICOの事業引継ぎ支援センターがサポートを行った。企業概要書の作成をはじめ、両社の譲渡交渉にあたりながら契約内容を調整し、譲渡契約書を弁護士を交えて作成。こうして合意書を4月16日に交わし、6月21日に譲渡契約締結という、稀に見るスピーディーな事業承継が実現した。支援に携わった畠山氏(現新潟県事業承継ネットワーク承継コーディネーター)は「M&Aは平均で2~3年かかります。これだけ短期間でスムーズに進んだのは、両社ともに財務内容が良かったこと。そして阿部社長の決断が早く、常に前向きだったこと。それが大きな要因だと思います」と語る。
「みなさんのお力添えがあったので、大変なことは特になかったです。ただ、私はもっと早く合意ができると思っていたのですが、阿部製作所さんは社員に説明する時間も必要でした。やはり事業を譲渡する側、譲受する側では事情が違うと思いました」と阿部社長。それに対して畠山氏は「譲渡企業側の社員は、会社や社長が変わることで今後への不安をどうしても持ちます。そこで我々と前社長が相談し、社員の不安を取り除くように調整しながら進めていったので、多少時間が必要でしたが、こういうメンタル面の調整は非常に大事です」と話す。

 

企業の知名度も高まり人材採用に成果が

こうして事業を引き継いだ阿部社長がすぐに取り組んだのが、人材の確保と育成や社屋の改築、職場環境や労働条件の改善というアフターマネジメントだ。当時の阿部製作所は社員の平均年齢が60歳と高齢化が進んでいたため、技術を受け継ぐ社員の育成が急務だった。そこでアベキンから若手社員を出向させるとともに、新たに社員を採用。この2年で18名から30名へと増やし、平均年齢も40歳代まで下がった。「社員のモチベーションを高めるためにも、職場環境を改善する設備投資はどんどん進めています」。
アベキン、阿部製作所の取引先に双方の技術が提案できるという相乗効果もあり、売上は順調にアップ。また、M&Aをきっかけにアベキンの知名度が向上し、3年間なかった大学新卒者の採用が来春予定されているほか、高校生対象の合同企業説明会で同社への参加者が増加するなど、人材採用の面でも好影響があったという。
「今後は自社ブランドの確立が目標です」と言うように、現在は大学病院の依頼で検体回収トイレの開発を行うなど、いくつかの自社開発商品が進行中だ。「この2年でM&Aの打診が11件ありました。これまでの事業と全く畑違いのことをするつもりはありませんが、アベキンに関連する相乗効果があれば、積極的にM&Aをしていくつもりです」。
昨年はステンレス製品の優れた技術を持つ燕市の会社をM&Aで取得し、さらに事業の拡大と顧客への発信力を強めた同社。事業承継がさらなる成長へ導くとともに、地域のものづくりを未来へとつなぐ大きな役割を果たしている。

株式会社アベキン  アベキン(写真上)と阿部製作所(写真下)の外観

アベキン(写真上)と阿部製作所(写真下)の外観。事業承継後に外観を統一化し、イメージアップを図ったことで認知度やブランド力が向上。これまでなかった20代、30代からの応募が来るようになり、採用につながった。
株式会社アベキン アベキンのプロダクトオフィス

アベキンのプロダクトオフィス。社内にある家具は、自社が関わっている製品を使用。実際に社員が使うことで改善点が見つかったり、新しいアイデアが生まれることもあるという。

 

ポイント

  • 早い決断と前向きな姿勢により、交渉や手続きがスムーズに
  • 譲渡企業側の社員の不安を取り除く調整、進め方
  • 社員の労働条件や職場環境の改善など、事業承継後のマネジメント

 

企業情報

株式会社アベキン

〒959-1276 燕市小池1548
TEL.0256-66-2531
FAX.0256-66-2934
URL http://abekin.co.jp

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