積極的な人材採用と挑戦する力で会社が成長。
事業承継を新たなチャンスに
「社長に就任したのは早かったですが、先代が亡くなってから継ぐのは大変なので、今ではありがたいと思っています。自分が迷ったときに相談できる相手がいるのは心強いので、先代の余力があるうちに後継者に引き継いだほうがいいと思います」と語る長澤社長。
社長就任後、営業力を強化 積極的な販路開拓へ
高品質な切削加工技術を強みに、自動車部品や産業機械用部品など幅広い業界の製品を手掛けるテック長沢。3代目である長澤社長が会社を引き継いだのは2011年、32歳のときだった。「私が入社した2003年頃は17人ほどの会社だったので、何でもやりました。自分でHPを作ったり、とび込みの営業を始めたり、当時は大変でしたがその分自分で考えて、その時会社にとって必要だと思うことをやってきたつもりです」と振り返る。リーマンショック後、営業担当として必要性を感じていた関東・関西営業所を2012年に開設。2014年には中国蘇州に会社を設立するなど、積極的な販路開拓を進めた。
こうして経営を拡大してきた同社は、2017年に大物機械加工や組立技術を得意とする柏崎市の近藤製作所の事業を譲受。もともと同社の協力会社として親交があったことから、地元の金融機関を通してM&Aの話があり、承諾した。
気持ちに配慮したことで社員の一体感が生まれる
両社の意見調整は近藤製作所の再建支援を受けたコンサルティング会社が仲介役となり、契約内容や手続きは顧問弁護士や税理士と相談しながら進めたが、長澤社長が一番気を使ったのが近藤製作所の社員へのフォローだった。「いろいろな事情があって吸収合併するような形にせざるを得なかったので、一番の不安は近藤製作所の社員がどれだけ残ってくれるかということでした」。そこで長澤社長は全社員と何回も面談を行い、社員が抱いている不安に対して丁寧な説明を行った。「会社の名前がなくなるので、創業者や前社長の思いの一部でも取り入れ、引き継ぎたいという気持ちでした。そこで1年間は仕事の内容を変えず、部署の異動もしない、雇用条件も変えないと社員に約束したのです」。急激な変化に戸惑わないように配慮したことで、徐々にテック長沢の社員との一体感も生まれるようになった。「事業は基本的に人が行うもの。いかにそこにいる人たちが一体になるかが大事だと思うのです」。
この2年間で売上は飛躍的にアップ。「お客様に提案できることが増えました。業種の幅も広がったので、一部の業種が冷え込んでも全体で見ると売上が落ちていないという効果もあります」。
思いを社員と共有し失敗を恐れず挑戦する
2016年には柏崎市で約190年続く味噌醤油の醸造元、越後みそ西の代表に就任した長澤社長。「実は妻の実家で、業績が順調ではなかったことから事業再建の相談を受けたのです」。まずは赤字を止めるために無駄を徹底的にカット。一方、社員のやる気を引き出すために曖昧だった退職金や賞与などは確保するようにした。また、「食べる人の近くにいるメーカー」を目指し、柏崎市内と弥彦に直売店舗をオープンするなど、新たな顧客を掴むための改革を行っている。
さらに、自らのアイデアをもとに産学連携や協同開発で商品化を進めた「電動ねじゲージ」の合弁会社、ネジテックを2017年に設立。地域の創生事業を手掛けるAKKプラスを立ち上げるなど、経営の多角化に取り組む長澤社長。今後は開発部門を設けて自社商品に力を入れるとともに、将来に向けた会社の体制づくりを進めたいという。「会社の跡継ぎは同族でなくてもいいと考えています。そのとき一番ベストな後継者に引き継いでもらえばいいので、そのための体制を徐々に作っていくつもり。テック長沢でなくてもグループ会社がたくさんあれば、ある事業部門を別会社化して、そこの社長になりたいという社員も出てくるので、意欲のある社員に将来の展望を見せやすいのではと思います」。
また、これまで一部の経営陣で作っていた会社の経営計画を、今期から部長、一部課長を含めたメンバーで作成。これにより経営への参画意識が社員に浸透し、最終的には「人材が重要」という気付きにつながるという。
人材の採用と育成に力を入れ、15年で約20名から170名の会社へと成長を遂げた同社。失敗を恐れず、常に新しいことに挑戦しながら次世代への会社づくりを進める同社のこれからに、一層注目が集まるだろう。
企業情報
株式会社テック長沢 NICOクラブ会員
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