地元企業や自治体と協働し「デザインの力」で地域に貢献
公立大学法人 長岡造形大学
地域協創センター長 プロダクトデザイン学科 准教授 金澤 孝和 氏
地域との連携を一層深め、デザインの価値を広める
企業や自治体などと連携したデザイン研究開発に力を入れている長岡造形大学では、2014年度の公立大学法人化に伴い、地域連携を一層深めることを目的とした「地域協創センター」を開設した。「外部からの依頼は当センターが一括窓口となります。案件に応じて教員、もしくは学生が関わるとともに、そこから創出される知的財産についても管理・活用していきたいと考えています」と、同センター長の金澤准教授は語る。
案件を受ける際に最も重視するのが「学生が関わる場合は教育的効果があるかどうか」ということ。教員の場合は「教員の研究と案件がマッチングしているか」が大事な要素になるという。「また、地域産業の活性等のために将来的にデザインをうまく活用してほしいと思う企業からの案件には、積極的にご協力しています」というように、デザインの役割や価値を社会に広めることも重視している。
「授業の課題とは違い、実践的なプロジェクトは制約もあるので、いろいろ調べないといけないことも多い。こうした過程が学生たちの力になり、将来に役立っています」と語る金澤准教授。
学生と企業のコラボから新しい可能性が生まれる
プロジェクトでは何年も継続している事例もある。籐家具メーカーの株式会社ワイ・エム・ケー長岡と同大学が作る「長岡籐家具研究会」もその一つだ。学生が提案した斬新なデザインを職人が製品化した「籐ソファ」は、2015年のIDSコンペで大賞を受賞。最近は、高齢者向けの籐家具も開発中だ。「学生からは思いもよらない自由なアイデアが出てきます。それを企業側が柔軟に受けとめられると、おもしろいモノが生まれると思います」。自分達にない発想をどう実現させていくか試行錯誤する過程が、新しい価値を創るきっかけになっている。
また、2017年のIDSコンペ大賞を受賞した和紙製のミニケース「ふくら」は、学生が卒業研究として取り組んだ作品で、卒業後、長岡市内のデザイン会社に入社したことから商品化が実現。小国和紙という地域の伝統産業をアピールすることにもつながった。
長岡籐家具研究会が製作した「籐ソファ」は、学生の自由な発想にメーカー側も大きな刺激を受けたという。
「フレイル予防を考慮したこれからの高齢者に向けた籐家具」を2017年のIDSコンペに出品。
研究シーズを活用し大学から企業に提案
今後は同大学院のカリキュラムにも、地域連携の取り組みを加えることが決定。さらに、「依頼があってから動くのではなく、教員、学生たちの研究というシーズがあるわけですから、それを持って大学から企業側に何かやりませんかと提案することも必要だと思っています」と金澤准教授。大学と企業が協働し、新たなモノづくりを創出することで、地元企業をはじめ地域の活性化に大きく貢献していくだろう。
「Fragre:nt」株式会社クワバラ(長岡市)同大学の増田教授と連携し、アクリル加工技術を活かしたアロマディフューザーを開発。
「ふくら」株式会社ネオス(長岡市)小国和紙を使った手作りのミニケース。縁起物をモチーフにした形で、デザイン力、商品の可能性ともに、IDSコンペの審査員から高い評価を受けた。
POINT
- 産学の連携で地域産業に新たな魅力を呼び覚ます
- 学生の自由なアイデアを柔軟に受けとめ、楽しめるかがカギに
企業情報
公立大学法人 長岡造形大学 地域協創センター
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