環境に配慮したメッキ技術を開発
航空機産業参入の足掛かりに
70年に渡り金属表面加工一筋に技術を磨き続けてきた新潟メタリコン工業は、新しい事業の柱を作るため、新規参入が難しいとされる航空機産業に挑戦。本格参入への大きな一歩となったのが、環境に配慮した新しいメッキ技術の開発だった。
「航空機産業はいきなり大きな仕事が入ってくるような世界ではありません。品質管理と安全が第一の業界なので、日々の小さい仕事を積み重ねていくことが何より大事です。これからも確実に経験と実績を積み、進んでいければと思っています」と井筒社長。
金属表面加工の技術を集結し新たな事業に挑戦
めっき・溶射・塗装の3技術を柱に、さまざまな産業機械製品の金属表面加工を手掛ける新潟メタリコン工業。同社はこれまで培ってきた高い技術力を活かし、近年、航空機産業に進出。新事業に挑戦した理由について井筒社長は「新しいお客様を獲得して売上が増えてきたと思うと海外調達に替えられたり、取引会社自体が移転したりということが90年代の終わり頃から増え、仕事が減ることが非常に多かったのです。そこで、そういう事態が起こりにくい高い技術力や検査精度が求められる分野で、かつ若い社員が目標を持ってがんばれる仕事が良いのではないかと考え、航空機産業に挑戦することにしました」と語る。
世界初の量産実績を可能に
新規受注にも繋がる
同社は2011年、航空機産業参入に必須とされる品質マネジメントシステムJIS Q 9100を取得。しかし現実は厳しく、なかなか製品受注には繋がらなかった。そんなとき航空機内装部品メーカーから、日本では実用化されていない座席部品のメッキ処理を打診され研究を開始。NICOの平成28年度高付加価値化サポート助成金(現:イノベーション推進事業)を活用し、本格的な開発に着手した。
環境規制が厳しい航空機内装部品への採用を目指し、薬品メーカーと連携して試作と改良を重ねた結果、以前はメッキの下処理に必要だった有害性の高い6価クロムを含まない薬品を使用し、従来と同等の品質を保持することに成功。「海外に依頼するよりも高品質で環境に優しい製品を安く、短期間で納品できるようになりました」と井筒社長。
このメッキ処理が大手航空会社のファーストクラスの座席部品に採用され、売上も向上。環境に配慮した新技術による世界初の量産実績を得たことで航空機業界からの信頼が高まり、エンジン部品のアルマイト処理などの新規受注に繋がるなど、航空機産業への本格的な参入の足掛かりとなった。
航空機事業の拡大へ向けNSCA参加やNadcap取得へ
2016年には新潟市が取組むニイガタスカイプロジェクトの一環で、県内7企業が集まり航空機部品の一貫生産を行う「NSCA」に参加。2017年には航空機産業における特殊工程の国際認証制度「Nadcap」を、表面処理の分野において県内で初めて取得した。事業拡大へ地道な歩みを続ける同社だが、新型コロナウイルスの影響で先行きが見えない状況に置かれているという。「航空機産業はこの1、2年は厳しい状態でしょうから、他の産業部品の加工をがんばっていくつもりです」と井筒社長。これまでのように仕事の成果を着実に積み重ねながら、新たな展開に向けて力を蓄えていく。
企業情報
新潟メタリコン工業株式会社 NICOクラブ会員
住所 〒950-0885 新潟市東区下木戸1-18-2
TEL.025-274-7301
FAX.025-274-7303
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