長岡籐家具研究会
会長 西脇 裕二 氏【事務局】 株式会社ワイ・エム・ケー長岡
かつては一大ブームとなった籐家具も、近年は市場が縮小。そんな時代に向けて、名作を作り続ける長岡の籐家具メーカーと、長岡造形大学の学生たちがタッグを組み、業界に新しい風を送り込もうと挑戦を始めている。
メーカーと学生が共同で探る 籐家具の新たな可能性
籐家具メーカーと 長岡造形大学の学生がコラボ
今年3月に開催されたニイガタIDSデザインコンペティションにおいて、大賞を受賞した「籐ソファ(仮)」。シャープな直線で構成されたデザインのソファは、これまでの籐の家具のイメージを一新させる存在感が、審査委員や来場者の目に止まった。
製作したのは、長岡市にある籐家具メーカーの株式会社ワイ・エム・ケー長岡と長岡造形大学が作る「長岡籐家具研究会」。同社は、世界を代表するインテリアデザイナー剣持勇を始め、有名デザイナーがデザインした籐家具を作り続けているメーカーだ。そんな同社と長岡造形大学は、実は以前からお互いに「何か一緒に取り組めたら」と思っていたという。そんな両者を同大の卒業生が引き合わせたことをきっかけに、プロジェクトは動き始めた。
長岡市のフロンティアチャレンジ補助金(ものづくり研究会立ち上げ支援補助金)を活用して、2年前に同研究会を設立。プロダクトデザイン学科の金澤准教授は「学生には籐を新しい素材として認識してもらい、可能性を探ってもらいたい。職人の皆さんには、学生から刺激を得てほしかった」とその目的を語る。
ニイガタIDSデザインコンペティション2015でIDS大賞を受賞した「籐ソファ(仮)」。審査委員からは「これだけのものをよく作ることができましたね」と声をかけられたという。
技術先行ではなく デザイン先行での挑戦
1年目はコンペ形式で学生のデザインを選び、家具を製作。しかし、作れるかどうかをデザインの判断基準にしてしまい、斬新さは生まれなかったという。そこで、2年目は見た目のインパクトを重視した6作品を製作した。
籐ソファをデザインした佐藤さんは「籐の家具は曲線が多いので、逆に直線にして新しい表情を出せたらと思いました」と語る。しかし、いざ編み始めると作業は難航。西脇会長は「このデザインは無理だなと言って帰しても、佐藤さんはまたやってきて“これでお願いします”という。それを何度も繰り返しましたね」と笑う。そうするなかで職人が新しい編み方を考案。それが成功へとつながった。
左から株式会社ワイ・エム・ケー長岡の西脇会長、デザインを手がけた佐藤さん、長岡造形大学の金澤准教授。
同じ地域の大学と企業が 互いに影響し合うメリット
西脇会長は「当社は長年、デザイナーと家具を作ってきて、自分たちだけではその枠を越えることが難しい。それでも時代に合わせた変化は必要。その意味でも学生の自由な発想は刺激になる」と振り返る。
一方、金澤准教授は「学生たちが、大学の地元にこんなに素晴らしいものづくりをしている会社があることを知り、共に作るという工程を社会に出る前に経験できるのは大きい。今後も続けたいプロジェクトです」と語り、佐藤さんも「新しいものが生まれる瞬間の現場に居られたのは感動しました」と話す。
今後は商業ベースに乗せることを目標に活動を続ける同研究会。今後、籐家具の新しい魅力が、ここから発信されていくことに期待したい。
職人の手によって、ものが生み出される現場を経験した学生たち。その自由な感性に刺激を受けた企業。それぞれがものづくりの新しい可能性を感じられるプロジェクトだ。
ここがポイント
- 「籐」という素材の可能性を追求
- 学生の自由な発想力で企業に刺激
- ものづくりを担う学生の学びの場
企業情報
長岡籐家具研究会
【事務局】株式会社ワイ・エム・ケー長岡
〒940-0004 長岡市高見町738-1
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