日本の伝統工芸を世界の顧客のもとへ
株式会社玉川堂
代表取締役 7代目 玉川 基行 氏
国際見本市を通し、世界へ 鎚起銅器の魅力をアピール
鎚起銅器の老舗として、来年創業200周年を迎える株式会社玉川堂。七代目である玉川社長の就任以来、海外展開に積極的に取り組み、昨年11月にはニューヨークのギャラリーで初の単独イベントを開催。国際見本市は、毎年1月のパリ「メゾン・エ・オブジェ」や、NICO百年物語が出展する2月のフランクフルト「アンビエンテ」に継続参加している。
現在までに、モスクワ、中国、韓国、ニューヨーク、パリなどの高級小売店と販売契約を結ぶほか、さまざまな海外企業とのコラボを経験。新潟県が昨年末にニューヨークに出店したアンテナショップ「NIIGATA」でも販売を行っている。
海外で人気があるのは、同社の主力商品の湯沸や急須などの茶器。「お茶文化の中国やロシアは、道具にもこだわる傾向が強く、当社製品も気に入っていただけるようです。高付加価値の製品は、そのまま海外に展開しても価値を認めてもらえると感じます」と玉川社長は話す。
「大鎚目(おおつちめ)」シリーズは、外国人からの人気も高い。この大鎚目をデザインした新しいロゴは、昨年夏に東京・青山にオープンした青山店のシンボルになっている。国や言語を超えてコンセプトが伝わるよう意識して制作された。
ブランディングを意識し 直接取引を基本に置く
海外への足がかりとなったのは、初回から参加しているNICOの百年物語。「海外展開は初期投資が必要だけに、単独では負担も大きい。百年物語がなかったら、進出はもっと遅くなっていたと思います」。海外での反応を直に感じるなかで、日本の伝統工芸を認めてくれる人は、世界にはたくさんいると確信したとも話す。
玉川社長が海外展開におけるポイントとしてあげるのは、販売先とのダイレクトな取引。その理由として、価格を安定させることの重要性を上げる。商社を通せば仲介した分、価格は高くなる。また、目の届かないところで高騰するケースもあるためだ。「ブランディングには価格が重要ですし、決定権を持つことが不可欠。そのためにも信頼できる取引先との直接取引が必要だと思っています」。
「海外への第一歩はやはり見本市に出ること。モスクワの取引先と出会ったのはメゾン・エ・オブジェでしたが、そういった店と知り合えるのも海外の見本市の良さです」と語る玉川社長。
次に目指すのは NYでの直営店オープン
もうひとつの理由は、玉川堂として一番伝えたいことを確実に伝えるため。「海外で評価されるのは、日本人らしい繊細な技術や機能美。当社の製品は職人が機能性を高めていく中で生み出してきたデザインで、形一つひとつに理由があります。それを話すと喜んで頂けるので、きちんと伝えることの意味は大きいです」。
その実現のため、海外の取引先も年1回は来日して製造現場を見てもらう。さらに、今後目指すのは海外直営店のオープンだ。ターゲットはニューヨーク。現地のビジネスパートナーや新潟県人会の協力も得ながら、構想を練っているという。
この4月に開催されたミラノデザインウィーク2015。マツダの展示会場に、同社のカーデザインコンセプト「魂動デザイン」をテーマにした玉川堂のオブジェ作品が展示された。日本の魂の表現者として選ばれ、デザインの最先端が集まる場で存在感を放った同社。その姿からは、日本の伝統工芸が持つ限りない可能性と、成長する同社の躍動を感じることができる。
モスクワに本社がある高級家電企業「BORK」からのオファーを受け、ショップで玉川堂の製品を販売。玉川社長自らが日本茶を入れるデモンストレーションも行った。
企業情報
株式会社玉川堂 URL http://www.gyokusendo.com
〒959-1244燕市中央通り2丁目2-21
TEL.0256-62-2015 FAX.0256-64-5945