アネックスツール株式会社【親族承継|事業承継に伴い社名変更、伝統を受け継ぎながら新たなスタートを切る】

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2023年10月10日
NICOpress190号新事業を展開したい

祖父、父から受け継ぐ“ものづくりの心”を指針に顧客のニーズに応えた商品を展開

1949年に創業し、ドライバーを主力とする工具メーカーとして成長を続けてきた兼古製作所は昨年、親族承継により新社長が就任。アネックスツール株式会社として新たな一歩を踏み出すとともに、これまで培ってきた技術力と開発力で革新的な商品を生み出している。

代表取締役 兼古敦史 氏
代表取締役 兼古敦史 氏

父の影響で、子どもの頃から絵を描いたりものづくりをするのが好きでした。4年間大学でロボットを作っていたことも今に活かされているし、デザインの勉強も自分がデザインした商品でグッドデザイン賞を受賞してみたいと思ったから。会社を継ぐためにやってきたというよりも、自分の好きな方向性と会社がマッチしていたのだと思います。

社長交代のタイミングに合わせ認知度の高いブランド名を社名に

74年にわたりドライバーを中心とした工具を製造し、近年は建設工事や電気工事で使用される電動ドライバー用先端工具「ビット」を主力商品とするアネックスツール。1984年から毎年連続でグッドデザイン賞を受賞するなど、機能性に基づくデザインを追求する企業としても注目されている。

同社は2022年11月、旧社名・兼古製作所の代表取締役だった兼古耕一氏が取締役会長となり、その長男である兼古敦史氏が代表取締役に就任。それに伴い社名もアネックスツールに変更した。「祖父が会社を設立した当初はミシンや車の付属用ドライバーを中心に生産していたので、社名は全面には出ていませんでした。それが昭和50年代から自社開発商品に取り組み、ホームセンターなどに販売していくために「ANEX」というブランドを父が立ち上げたのです。スタート時は少なかった売上が年々伸びていき、今はANEXブランドの売上が8割。ブランド名のほうが社名より有名になっていました。そこで、数年前から新規のお客様に覚えてもらうためにもブランド名と社名を同じにしたほうが良いという話が出ていたこともあり、今回、社長交代のタイミングで社名を変更することにしました。社外的、社内的にも、新たに生まれ変わるという意味合いが出て良かったと思います」と兼古代表は語る。

「ANEX(アネック)」の商品

ブランド名の「ANEX」は、Action Nice & Excellentの略称。「よりよく、より素晴らしく、行動する」という意味を込めた、同社の行動規範となっている。

アネックスツール株式会社の外観

グッドデザイン賞を受賞

前社長の時代からデザイン性を重視してきた同社。「使いやすいものは美しい」という機能美の理念から、プロダクトデザインは企画開発課が担当し、機能性を追求した独自のデザインを生み出している。1984年から連続してグッドデザイン賞を受賞。

 

承継後を考え地道に準備
改革に向けた種まきが重要

前代表から事業承継の話があったのは、2021年の年末頃だったという。「私自身は、いつ話があってもいいように準備は整えていたので、あとは父から言われるのを待つだけという気持ちでいました」と話すように、会社を引き継ぐためには「社内の人に認めてもらうことが何よりも大事になる」と以前から考え、承継後を考えた勉強や準備を進めてきた。

幼稚園の卒園文集に、“父の会社を継ぐ”と書いていたという兼古代表は、大学の工学部で機械工学を学び、その後、プロダクトデザインを学ぶためデザインの専門学校に入学。同時に簿記学校にも通った後、兼古製作所に入社する。入社後は開発部に3年間所属。企画開発は製造現場とのやりとりが多いため、製造チームとの関係づくりにも役立った。「その後は営業も担当しました。また、入社してから営業会議、開発会議、設備会議など、全ての会議に参加したことで社内の現状を把握することができるようになりました」。

さらに、この10年間で社内の改革にも積極的に取り組んできた。「7年前にコンサルタントの先生をお招きして改善活動の取組を強化しましたが、私がプロジェクトチームのトップになって、仕組みからだいぶ作り変えました」。月1回行う製造現場の整理整頓や清掃などの審査を減点方式から加点方式に変更。また、意見交換を活発にするため、若手社員を改善チームのリーダーに抜擢し、全部署の正社員、パート全員で取り組むようにした。「どんどん新しいことを進めていくので、当然社員から多くの質問も出てきます。そこで私と直接話し合っていくうちに、“親身になって相談に乗ってくれる”とか“この人に聞けば答えの道筋を作ってくれる”と思ってもらえるような関係ができたと思います。地道ではありますが、社長になる上では絶対に必要な行動の一つだったと考えています」。

業務改善のブレインストーミングの様子

業務改善のブレインストーミングの様子。改善活動はトップダウンではなくボトムアップにしたことで、社員が自発的に意見を出し合うようになり、建設的な改善が進んだ。

 

経営理念を継承し、お客様のニーズに応える商品を展開

親族承継の利点については「親子であれば、お互いに何を考えているのか大体分かります。表面的なことではなく、内面的な部分をよく分かった人物が後継者になることの安心感というのが一つ。そして、当社は創業からの親族承継になるので、祖父が作った会社を自分の代でダメにすることはできないという“背負う重み”を最初から理解しています。気持ちの問題ですが、私にとってはとても大事なことだと思います」と兼古代表。その上で継承していきたいのは、前代表が掲げた「お客様の本当のニーズに応える」という経営理念だ。「作業工具は成熟産業なので他社は新商品をあまり出さないのですが、当社は年間30アイテム以上、多いときには50もの新商品を作ります。当社がこれだけ多く出せているのは、小ロットでもお客様が欲しいと言えば作り続けてきたからで、そこはこれからも変えるつもりはありません。経営理念にあるとおり、お客様のニーズに応える製品を提供していきたいです」。

近年は電気工事向け商品のニーズが高まっていることから、「ビット」などの新商品をさらに強化していきたいという同社。伝統を受け継ぎつつ、常に挑戦を続けながら、感動を生むための道具づくりを行っていく。

展示会の様子

電動ドライバー用先端工具「ビット」

ユーザーの細かなニーズに応える製品ラインナップ。近年主力となっているのが電動ドライバー用先端工具「ビット」。硬度を高めた「黒龍靭」シリーズのほか、今年の日本DIY・新商品コンテストで銀賞を受賞した「ダイヤモンド龍靭ビット」は大ヒット商品となっている。

 

ポイント

  • 事業承継を機に、ブランド名を打ち出した社名に変更。
  • 改善活動を通じて社内体制と社員の意識を改革。
    社員とのつながりを強化。
  • 経営理念や行動規範など、会社経営の根幹となる指針は継承していく。

 

企業情報NICOクラブ会員

アネックスツール株式会社

三条市塚野目2201
TEL.0256-32-6321
URL https://www.anextool.co.jp/

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