株式会社リトモ（灯りの食邸 KOKAJIYA）【一人のお客様、一皿の料理への思いが変化。新たな客層が温泉街にも広がる流れを生み出せたら】

一人のお客様、一皿の料理への思いが変化。
新たな客層が温泉街にも広がる流れを生み出せたら

築100年以上の古民家を改築したレストラン「灯りの食邸 KOKAJIYA」を始め、飲食店3店舗と宿泊施設1軒を経営している熊倉氏。コロナ禍の間に料理人として、また経営者として自分が本当にやりたいことに向き合い、2021年に焼鳥店、2022年は一棟貸の宿を始めた。新たな挑戦に向かったその背景について話を伺った。

代表取締役 熊倉誠之助 氏

1979年、新潟県生まれ。琉球大学卒業後、那覇でカフェバーを開業。2009年新潟に戻り、出張料理人として経験を積む、2013年6月株式会社リトモ設立。同年、岩室温泉街に「灯りの食邸 KOKAJIYA」をオープン。現在、「三条スパイス研究所」、「岩室 とり蔦」、「一棟貸切の宿 岩室 久元」を経営している。

Q1 コロナ禍からの3年間はいかがでしたか？

とにかく時間があったので、いろいろなことを考えましたね。以前の「KOKAJIYA」は利用しやすい価格帯のランチを提供して回していましたが、自分がやっていきたいこととは違うかな、と感じていた中で、コロナ禍による自粛期間になりました。ちょうど新潟のミシュランガイドが出たタイミングで、新潟のトップレストランのシェフの方々と話す機会があり、皆さんが料理に人生をかけていて、情熱がすごいと感じたんですね。自分は器用貧乏で一つのことを突き詰められないでいたことがコンプレックスだったのですが、皆さんの姿に刺激を受けました。ガイドブックに掲載していただいたものの悔しい部分もあって、改めて料理に対して向き合うスイッチが入りました。

熊倉氏は料理のアイデアを頭の中でシミュレーションをして、実際に作るのは本番でというタイプだという。最近はコース料理の構成について思いを巡らせている。

Q2 一棟貸しの宿のオープンにもつながるのですか？

そうですね。まず、一人のお客様に時間を使いたい、一皿にかける時間を増やしたい、と思うようになりました。コロナ禍だったこともあり、「KOKAJIYA」の席数を半分以下にして、完全予約制のコースのみにしました。更に宿ならお客様との接点が広がると思ったのです。もともと「KOKAJIYA」をオーベルジュのようにしたかったのですが、法的な兼ね合いで実現はできなかったので、店の裏手にある空き家を引き取り、一棟貸しの宿にしました。自分のやりたいことと、空き家の利活用という地域の課題がマッチしたということですね。

Q3 KOKAJIYAは文化財に指定されましたね

国の登録有形文化財の登録をきっかけに、建物を気軽に見てもらう日が月に1回くらいあるのもいいかなと考え、今年の2月から「文化財カフェ」を開いています。その日はカフェメニューを提供し、私が料理教室を、スタッフが厨房を担当します。若いスタッフの経験や練習にもなっていいなと感じています。

「KOKAJIYA」は江戸時代末期に建てられた古民家を再利用した店舗。2022年に主屋が国登録有形文化財に登録された。

Q4 これからの展開、目標は？

料理・食を通して地域に貢献したい気持ちが強くあり、岩室・西蒲エリアを中心に盛り上げていけたらと思います。ここで10年やらせていただいている感謝の気持ちもあります。料理に関して究極としては1日1組のお客様限定のお店というのが理想ですね。レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ2023』に掲載いただいてから、都内から足を運んでくださるお客様が増えています。店をきっかけに岩室温泉にも滞在していただきたいですし、それが温泉街に新しい客層を作っていけるのではないか、という可能性を感じています。

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