一正蒲鉾株式会社【代替シーフード技術で食の豊かさと水産資源を守る】

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2023年04月07日
NICOpress187号新商品・新技術開発

漁獲量の減少に一手。
代替シーフード技術で食の豊かさと水産資源を守る

1965年創業の一正蒲鉾が近年力を入れている代替シーフード。スケトウダラなどのすり身を原材料とし、見た目も味も本物のうなぎやうにのような練り製品を作り出している。さらに、食品バイオの世界にも踏み込んでいるという同社の取組を伺った。

執行役員 技術研究部長 兼 商品開発部長 中野晃 氏
技術研究部 技術研究課 リーダー 大塚葉奈子 氏

「うな次郎の開発では、うなぎ屋さんの換気扇から出る香りの分析を行うなど、本物を追求した商品づくりにこだわりました」と話す中野部長(写真右)。「日頃から漁獲量など水産物の情報収集を行いながら、代替シーフードの研究開発を進めています」と話す大塚リーダー(写真左)。

高騰する国産うなぎをお手軽に
うなぎの蒲焼風かまぼこ「うな次郎」

ふっくらとした身に艶やかなタレ。本物のうなぎの蒲焼と見まがう「うな次郎」は、スケトウダラなどの魚のすり身で作られた練り製品だ。手掛けているのは、かまぼこをはじめとした水産練り製品を製造する食品メーカー・一正蒲鉾。「うな次郎の開発を始めた背景には、国産うなぎの価格の高騰がありました。2010年に開発をスタートし、2016年に発売。全国のおいしいうなぎを食べ歩くことから始め、ベンチマークにしたうなぎの蒲焼のアミノ酸分析や香気分析をしながら、開発を進めていきました」と技術研究部の中野部長は話す。

表面の凹凸やうなぎ特有のふっくらとした食感に、皮のリアルさまで追求するなど、同社のこだわりが詰め込まれている。その後包装を改良し、賞味期限を8日間から14日間に延ばすことに成功。最初は土用の丑の日に合わせて販売していた「うな次郎」だが、賞味期限が長くなったことで食品ロスを抑えられるようになり、通年でもスーパーで取り扱ってもらえるようになったという。

また、初めはうなぎの骨などから取ったうなぎエキスを使用していたところ、SNS上で「なぜすり身でここまで再現していながら、うなぎエキスを入れるのか?」という意見を受け、うなぎエキスを使わずにうなぎの風味を再現できるように改良。2020年には完全うなぎフリーに進化を遂げるなど、発売後も改良を続けている。

「当社は魚のすり身から作られるカニカマで成長した会社です。かつてはニセモノのカニといわれていたカニカマですが、今は一つの食材ジャンルに変わりました。うな次郎もそのようなポジションを目指しています」。

焼き目にもこだわって作られた「うな次郎」。パックに入れたまま電子レンジで加熱できる。小骨がないことも、本物のうなぎにはないメリット。

 

水産資源の枯渇問題を
代替シーフードが解決

うなぎ高騰の背景には、漁獲量の減少があり、うな次郎のような代替シーフードを選ぶことは水産資源を守ることにもつながる。うな次郎の開発を経て、同社は代替シーフードを「ネクストシーフード」と命名。練り製品技術を使って、漁獲量が減少しているさまざまな水産物の代替品開発を進めている。そのうちの一つが業務用に製造している「イカ風かまぼこ」だ。「イカの漁獲量が落ち込んで価格が高騰した時に、イカサラダなどを製造しているメーカーさんの相談で開発しました。メーカーさんにとって、イカの加工品に一定割合のイカ風かまぼこを使うことが、商品の安定供給にも役立っています」と中野部長。

「ネクストシーフードうに風味」も同様に魚のすり身から作られた製品。こちらは外食産業向けに販売しているもので、回転寿司チェーンやカフェチェーン等で使われた実績がある。まずは外食産業でトレンドをつくることが狙いだという。

代替シーフードが持つメリットは本物と比べた時の価格の安さだけではない。例えば本物のうににはプリン体が多く含まれているが、ネクストシーフードうに風味ならそれを非検出(100g当たり0.01g以下)にできる。そのような、本物にはない付加価値も注目したいポイントだ。

開発において、技術研究部が特に大事にしているのが「見た目」だという。「人は見た瞬間に『おいしそう!』と思わなければ手に取ってくれません。味や食感ももちろん大事ですが、ファーストインプレッションを大切にしています」。

「ネクストシーフードうに風味」で調理したパスタ。本物のうにのアミノ酸成分を徹底分析し、その組成に近づけるように味・食感を再現。本物よりカロリーが低く抑えられる。

 

2045年を見据えて
フードテックに力を注ぐ

一正蒲鉾は2045年度に目指す事業の在り方を「ICHIMASA30ビジョン」に定めており、その中で食品バイオ企業になることを掲げている。その目標の実現に向け、代替シーフードに留まらず、培養魚肉の共同研究に着手するなど、より先進的なフードテック(※)の取組も始めている。「当社の技術研究部では目先のことだけでなく、2045年の食卓を想像し、そのために必要となる技術の研究を大学や研究機関と一緒に進めています。将来、3Dフードプリンターで料理が作られる時代を迎えた時、当社では材料の提供を担いたいと考えています」。

ネクストシーフードチームのリーダーを務める大塚氏は「ネクストシーフードの開発においては、魚肉たんぱく質である魚のすり身をメインの材料に考えているわけではありません。商品を作るのに適したものを、大豆などの幅広い材料から選ぶようにしています」と話す。

一正蒲鉾が初めてカニカマを世に送り出したのが1974年。それから約半世紀を経た今、長年培ってきた代替シーフード技術と先進的なテクノロジーを組み合わせながら、水産資源の保護や食料危機などのさまざまな課題解決に挑戦している。

一正蒲鉾の画期的な製品作りには特許技術も使われている。研究開発を重ねて編みだした独自の製法は他社との差別化につながっている。

 

ポイント

  • うなぎの価格の高騰や、水産資源保護に対応するため、すり身で作った「うな次郎」を発売。
  • 練り製品技術を使った「ネクストシーフード」の開発に力を注ぐ。
  • 培養魚肉の共同研究に着手し、食品バイオ企業を目指す。

 

企業情報

一正蒲鉾株式会社

新潟市東区津島屋7-77
TEL.025-270-7111
URL https://www.ichimasa.co.jp/

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