越後天然ガス株式会社

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2021年10月13日
NICOpress178号新事業展開

30年後、その先の地域の未来のために
エネルギー企業としてできること

昭和7年に創業し、秋葉区、江南区、五泉市に都市ガス供給・販売と電気販売をスタートした越後天然ガス。地域密着のエネルギー供給事業者の視点から、サスティナブルな地域づくりに向けた課題に着目。再生可能エネルギーを活用するなど、地域の未来を見据えた課題解決の可能性を模索している。

取締役営業部長 米田 信氏
取締役営業部長 米田 信 氏

越後天然ガスでは各部署が担う業務とSDGsのつながりを社員が理解し活動している。「お付き合いのある企業様からはSDGsについて『一緒に何かできたらいいですね』という声も頂いています」と米田氏。活動が徐々に浸透している実感があるそうだ。

2018年に始動「えちてんサスティナブルビジョン2050」

近年、経済産業省のエネルギー・環境に関する審議会で2050年に向けた地方ガス事業者のサスティナブルな経営が盛んに議論されている。そうした中、越後天然ガスはいち早く「えちてんサスティナブルビジョン2050」を策定。2050年までに地域の温室効果ガス増加を実質ゼロにすることと、地域経済の持続的な発展を目指し、5つの成功の柱を掲げている。

1つめの柱は、策定のきっかけにもなった新潟市と2018年に締結した連携協定※1だ。エネルギーの地産地消等を掲げ、2019年からはCO₂排出係数を50%削減した電力を秋葉区の公共施設へ供給している。「この収益は全額、秋葉区に寄付し、LED照明導入や里山保全などの環境対策に使われます。2020年度の寄付は700万円になりました。会社経営なので利益は必要ですが、『残余利益は地域に還元すべき』というのが当社の考えです」と米田取締役。推進メンバーの里見氏は「SDGsをきっかけに地域が持続的に進んでいくために自社で何ができるか、という視点で考えています」と話す。還元されたお金が地元で循環すれば、地域の活性化、さらには地元企業の発展にもつながる。「協定を結んだ当時は『低炭素まちづくり』でしたが、今は状況が変わっています。『脱炭素』に向け、より効果のある施策が必要です」と意気込む。

柱の2つめには、再生可能エネルギーの推進を掲げる。2014年に五泉市村松工業団地にメガソーラーを建設した。太陽光発電に関しては、新たなプロジェクトも進行中だ。「一般住宅の屋根に、弊社が費用を負担してソーラーパネルを設置し、電気契約を結んでいただくというもの。『太陽光発電に興味はあるけど費用がネック』という方に、環境に優しい電気を使っていただく試みで、実現に向けて準備を進めています」(米田氏)。

※1 「持続可能な低炭素まちづくりに関する新潟市と越後天然ガス株式会社との連携協定」7つの項目からなる。

 

えちてんサスティナブルビジョン2050

目 標
  • 2050年までに地域の温室効果ガスの増加を 実質ゼロにする
  • 地域経済の持続的な発展を目指す

 

ビジョン達成のための5つの柱

① 環境に優しいエネルギーの提供
  • CO₂排出係数を50%削減した電力を、小中学校を除く秋葉区の公共施設に供給
  • 供給施設の電気料金は一定額割引
  • 電気事業の残余利益は秋葉区に全額寄付

 

② 再生可能エネルギーの導入
  • 五泉市村松工業団地にメガソーラー「エネルギーの丘・五泉」を建設。最大発電能力は1500kW(一般家庭の約430戸分に相当)
  • 2018年のCO₂削減量は867トン(約6.2万本の杉が1年間に吸収するCO₂の量に相当)

 

③ 分散型エネルギーシステムの推進
  • 秋葉区役所を中心とした程島地区で、ガスによる発電と太陽光発電設備を導入した場合、電気供給と熱供給事業が成り立つかを調査
  • 実現可能との調査結果を受け、さらに取り組みを進める予定

 

④ 事業活動における環境負荷ゼロ
  • タブレット導入や書類の電子化によりペーパーレスを推進
  • 社屋照明のLED化、社用車を電気自動車へ入れ替え
  • カーボンニュートラル天然ガスの自社使用を開始

 

⑤ 自治体、地元企業、地域コミュニティとの連携強化
  • 子どもの孤食の解決と地域のふれあいを深めるため子ども食堂をオープン
  • スーパーを展開する地元企業や地元の人々と協力し運営

 

分散型エネルギーシステムで自然災害時におけるリスク軽減

また、同社はSDGsの目標9にある強靭なインフラ構築や、地域の持続可能な電力供給に着目し、3つめの柱として分散型エネルギーシステムを推進している。発電所からくる電気は台風や大雪で電線が切れた場合、供給が止まってしまう。分散型エネルギーシステムは、比較的狭い地域内で発電し、エリア内でICTを活用して電力を融通しあいながら効率よくエネルギーを利用することで、そうしたリスクを軽減しようという試みだ。

さらに「ガスコージェネレーション」というガス発電の仕組みを使えば、「電気」と「熱」を作ることができ、熱は温水プールや入浴施設に有効利用できる。2019年の台風15号で停電が発生した千葉県睦沢町では、コージェネレーションを導入していたため、地域住民に温水シャワーを提供することができた。「今回、秋葉区役所など公共施設が集まる程島地区で調査したところ、実現可能で採算も取れることがわかりました。災害対策や人口減少など地域の変化に対応し、持続可能な取組をしていくことがローカルの企業には大事です」と里見氏。

このほかにも、4つめの柱として事業活動における環境負荷ゼロを目指し、ペーパーレス化等の3R活動や、電気自動車の導入などを進めている。5つめの柱では、自治体、地元企業、地域コミュニティとの連携強化を掲げ、2018年、五泉ショールームに「五泉こども食堂」をオープンした。食材を提供する地元企業と共に、運営をサポートしている。

 

一人一人ができることを考える全員参加型SDGs活動

他にも、ガス管の耐震化やガス管の腐食を防ぐ電気処理による長寿命化、環境に優しい高効率ガス機器への切り替え促進など、各部署それぞれができることを検討し、サスティナビリティ活動を進めている。

こうした多角的な活動が進む背景について米田氏は、「会社の押し付けではなく『全員参加』を重視したことが大きかったと思います」と話す。「SDGsについて、まずは外部講師を招いて全員で研修を行いました。その後、部署に関係なく若手社員を中心に3つの班で意見を出し合い、問題を抽出。それをSDGs推進リーダーが精査し具体的な活動につなげていきました」。営業担当の伊藤氏は、「最初は訪問先でSDGsについてあまり知られていませんでしたが、今は関心を持って話を聞いてもらえる機会が増えました」と実感を込めて話す。

「弊社には『安全・安定・安価』という理念があります。これはまさしくSDGsに通じるもの。どの会社にも、SDGsに当てはまる取組は特別なものではなく、すでにあると思います」と米田氏。すでにある取組を、時代に合わせてどう深め、発展させるか。越後天然ガスでは、地域と共に考え、地域の中で経済やエネルギーを循環させる取り組みが始まっていた。

 

ポイント

  • 地域密着のエネルギー供給事業者として、将来に向けた地域の課題解決に着目。
  • 5つの柱を掲げ、事業展開に具体的に落とし込む。
  • コージェネレーションシステムなど新技術を取り入れた先進的な活動に挑戦。
  • 社員一人一人がSDGsを学び、個人や部門ができることを積極的に推進。

 

企業情報

越後天然ガス株式会社

〒956-0031 新潟市秋葉区新津4516
TEL.0250-24-2171
FAX.0250-24-2170
URL https://www.echiten-gas.co.jp/

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