ネット通販は対面販売と変わらない。
お客様のための商品と接客が重要
山谷産業は2002年という早い時期からネット通販に参画し、アウトドア用品や庖丁、鍛冶職人による刃物などを販売するネットショップ「村の鍛冶屋」を運営。年々売り上げを伸ばしているポイントはどこにあるのか、山谷社長に話を伺った。
「SNSは私自身が好きなので、ネットを見ている時間は長いですね。コメントやリツイートをすると『公式が反応してくれた』と喜んでもらえるのも楽しいです。会社でSNSを活用するなら、担当社員がスマホを触っている理由を周囲が業務として理解することは必要です」と話す山谷社長。
自社商品の投入をきっかけに5年前と比べ売上が2倍に
ネットショップ『村の鍛冶屋』をYahoo、楽天、Amazon、自社サイトで展開している山谷産業。最近は密を避けてアウトドアレジャーを始める人が増えたことも影響し、販売は好調。売上は5年前と比べると2倍に伸びている。
同社がネット通販を開始したのは2002年。「当社は1979年に父が創業し、家族で全国を回って漁具を売っていたのが始まりです。ネット通販は、家族の病気で出張ができなくなり、それしか売る方法がなく始めた形でした。その際、漁具だけでなく、近隣の燕三条の会社の商品を集めて販売することにし、その時、父が『村の鍛冶屋』という店名を付けました」と山谷社長は話す。
2013年には専務が考案した初の自社商品であるカラフルな鍛造ペグ「エリッゼステーク」を発売。「2012年に私が社長になって考えたのは、他社からの仕入れによるネット販売だけでは、将来的には価格で勝る大手のネットショップには勝てなくなるだろうということ。当時、自分たちのネットショップがあって、すでに顧客もついていたので、自社商品も販売すれば売れるのではないかと考えました」。
いざ発売してみると、見込み通り口コミで評判が広がり、すぐに人気商品に。もともとアウトドアが好きなお客様が多く、実際に試した人がブログやSNSで発信することで、さらに購入者が増えていくという展開だった。
ネットショップの商品紹介ページ。お客様が知りたいことを伝えることをテーマに、製造工程やその商品が生まれた背景などを紹介。
商品の紹介サイトではお客様が知りたいことを発信
2016年にはスタイリッシュなバーベキュースタイルを提案するブランド「TSBBQ」をスタート。「TSBBQ」はマーケットインの手法で展開させているブランドで、始まりは山谷社長とフォロワーのTwitter上でのやりとりだった。「SNSはコミュニケーションツールとしての位置づけで使っているので、流れでお客様と1対1でやりとりをすることも多いです。その時も、たわいない会話をしていたなかで、肉を焼くスタンドが欲しいけど作れますか?と聞かれたことがきっかけで、ブランドプロジェクト自体がスタートしました」。
また、同社のネットショップはお客様が知りたい情報をきちんと伝える、ということを大切にしている。「今のお客様は、その商品がなぜ誕生したのか、どういうところで作られているのか、という背景やストーリーが無いと買ってくれないので、商品を生み出すに至った経緯を紹介しています。例えば、このダッチオーブンはこれまでのこんな不便さを解消しています、といった、お客様のために考えたことも載せます。作り手のこだわりだけを訴えるのではなく、製造しているのは、燕三条の会社で、こうした高い技術を持っているから商品開発を依頼しているんですよ、という背景を伝えると、お客様も納得し、安心して買ってくれます」。
「小さめのコンロが欲しい」という要望に応えたTSBBQブランドの「ペグコンロソロ」。
公式SNSは情報発信だけでなくコミュニケーションに活用
最近ではキャンプがテーマのアニメ「ゆるキャン△」とのコラボ商品が生まれるなど、入荷後すぐに売り切れてしまう人気アイテムも増えた。こうした商品の入荷情報を発信する際にもSNSを活用。「1回に60個程しか入荷しないものは予約を受けきれないため、発売開始日時を事前にInstagramで発表しています。皆さん待ち構えているので、人気のカービングアックスやナタは、開始1分ぐらいで完売してしまいます」。
Twitterでは商品情報の発信はもちろん、日々自社に関係するワードをチェックして、商品を使ってくれている投稿をリツイートし、お礼のコメントを残している。また、ある商品の注文が急に増えたときは、必ずその要因を探る。「ブログや雑誌で紹介されて、というケースは多いです。影響力があって、関連がありそうなブロガーに、商品を紹介して、使ってみてもらうこともあります」。
ネット通販で最も大切なことは、対面販売とネット販売は基本的に同じという意識を持つことだと話す山谷社長。「当社ではサイトごとに担当者を付けて、問い合わせには当日中に返答をするようにしています。また、注文した商品がいつ発送できるかをきちんと伝えることも大切です。たとえ、商品到着が1ヵ月後だとしても日時を伝えることで、お客様は安心します。こうした応対は高いレビュー評価につながりますし、クレームをいただいた場合でも真摯に応えています」。
2017年には「村の鍛冶屋」のリアル店舗をオープン。ネットショップがきっかけで『村の鍛冶屋』を知った人が商品の実物を見てみたいと全国から会社を訪ねてくることが増えたからだ。ネット通販は想像以上に、顧客と売り手の間を近づけていっている。
Instagramは4名、Twitterは1名で担当。担当者には「やり続けること」だけを伝え、発信内容は基本的に一任している。
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