江戸時代に油を量る枡の製造を始めた田中家をルーツに、1903年(明治36年)、政府からはかり製造の認可を受けて設立された田中衡機工業所。2011年からはベトナムに海外現地法人を置き、アジア市場への挑戦を始めている。
日本で、そしてアジアで“はかり屋”の使命を果たす
株式会社 田中衡機工業所
代表取締役社長 田中 康之氏
正確な『はかり』が世の中の安全や信頼を支えている
創業以来、はかりメーカーとして歩む田中衡機工業所。ボクシング国際大会での計量から、銭湯で見かける体重計まで、さまざまなシーンで同社の計量機は使われてきた。
現在は工業用計量機を中心に手掛け、トラックスケールや空港手荷物検査場のスケールをはじめ、産業用、農業・畜産業用、食品用などの計量機を製作。また、すでに同社でしか作っていない機械式はかりも、顧客のニーズに応じて製造を続けている。田中社長は「はかりは正確かつ、その品質を継続できなければ、お客様の仕事が成り立ちません。お客様の仕事の安全や信頼を守る責任がある。だからこそ売るだけでなくメンテナンスにも力を入れています」と語る。
「祖父は戦時中に鉄の供出令が出ても、はかりは精度と頑丈さが命だと鉄で作り続けました。そのはかり屋魂を受け継いでいきたい」と語る田中社長。
頑丈で正確なスケールを作り続けるためアジア市場へ
同社は2011年にベトナムへ進出。その背景を田中社長は「この15年、私たちが手掛ける非自動はかりの分野で中国企業が伸び、日本の半分から3分の1の価格の製品を作り始め、国内の市場価格も急激に下がってきました。ただ、品質は華奢な構造で製品寿命も短く、導入して困っているお客様もいます。我々は確かな製品で日本のお客様を守らなければという思いがあり、そのためには、海外メーカーと闘えるスタンスが必要だと考えました。もちろん、勢いのあるアジア・アフリカ・中東の市場に対する興味もありました」と語る。
ANAの国内線手荷物検査用スケールは100%、田中衡機工業所製。飛行機の安全運航に関わるだけに、大きな責任を感じる仕事だという。
ベトナムの企業としても歴史を重ねていきたい
工場は2013年から稼働し、製造品は日本の本社へ輸出。ベトナム国内での販売も増えてきている。また、ベトナム道路総局の委託を受け、過積載車両取締り用の走行計量システムの普及・実証事業に取り組んでいる。田中社長はコンペの際、「TANAKAはベトナムのメーカーです。ぜひ一緒に開発していきましょう」と訴え、作って終わるだけではなく、現地のニーズに真摯に応えていく姿勢を示した。「それが相手の心に響き、信頼してもらえている。海外進出は人材確保など困難も多いですが、日本と同様にベトナムでも20年、30年と愛される企業になりたいと思います」。
海外に進出したことは、国内の社員への刺激にもなっている。「世界に一歩
でも出たことに自信を持ってもらいたい。技能がある社員は指導のために海外
へ出ることもある。成長のいい機会になればと期待しています」。
ベトナムで問題になっている過積載車両を取締るため、導入を進めている走行計量システム。
トラックスケールは国内で20%以上のシェアを持つ。
機械式台はかりも食品加工の現場等で重宝されてきた。
ここがポイント
- 工業用計量機に特化し、アフターフォローも重視
- 顧客を守るため、アジア市場への進出を決意
- ベトナムの現地の人々と共に歩むスタンス
企業情報
株式会社 田中衡機工業所
〒959-1145 三条市福島新田丙2318-1
TEL.0256-45-1251 FAX.0256-45-2204
URL http://www.tanaka-scale.co.jp