高精度の生産技術を量産化に繋げ、ベトナムで低コストを実現
株式会社東和製作所
代表取締役社長 渡邉 豊 氏
90年代の円高によりベトナム工場を設立
1949年にミシン用ボビンケースを生産する会社として創業し、現在は建設機械や産業車両の油圧部品など高精度の精密部品を主力とする株式会社東和製作所。同社がベトナムに工場を設立したのは、日系企業の進出がまだ少ない1996年のことだった。
当時は円高が進み、多くの縫製工場が海外に出ていく中、ミシン用部品を輸出する同社にとって海外進出は急務だった。そこで当時専務であった渡邉社長は、進出先として中国を候補に挙げるが、当時は国の外国投資法により制約が多かったこと、また中国で同社の模造品を作る会社がいくつもあったことから断念。外資の開放政策を進めていたベトナムに進出することを決め、単独資本で「東和ベトナム」を設立する。
第3工場は水害から設備を守る防水工事を施しているのが特徴。ISOを取得し日本同様の生産管理と品質保証教育を行っている。また、ベトナム工場は全て3交代24時間体制が可能。現在、約750名の従業員が働いている。
ベトナムの生産技術を確立し徐々に日本から移行
現地の人材も十分確保でき、優秀な幹部候補生も入社するなど、ベトナム事業は順調なスタートを切った。最初はボビンケースの製造だけだったが、日本の本社で行っていた精密機械加工の工程も手掛けるようになり、1999年からは自動車向け重要保安精密部品の生産も開始する。「自動車のブレーキ部品などは人の命に関わるので、間違いが起きてはいけません。そこでベトナムの生産技術とシステムを確立してから、徐々に日本から現地へ生産を移していきました」と渡邉社長は語る。
ベトナムに量産受注が移ることで、日本では生産技術の高度化と開発に注力し、より精密な部品や短納期の製品などに特化していった。「日本で製品の開発・試作を行い、量産技術を構築して
からベトナムに移行して生産し、コストを抑えていく。この方法を採るようになってから、新しい分野のお客様からご注文をいただくようになりました」。
「ASEANの経済圏はますますモノやヒトの行き来が自由になる。タイやインドネシアなどにも多くの日系企業が生産工場を出しているので、今後はそこに当社の製品を供給していきたいと思っています」と語る渡邉社長。
人材不足の中、海外に社員がいるのはメリット
高い技術力をはじめ、日本同様の徹底した生産管理と品質保証が評価され、ベトナムの受注が拡大していったことから、2006年に第2工場、2011年には第3工場を開設した。「日本の製造業
の人材不足を考えると、海外に社員がいるというのは大きなメリット。今後は20年の経験を積んできた有能なベトナム人幹部を、本社に呼ぶことも考えています」。ベトナム工場社員の本社研修を年数回行うなど人材育成に力を入れながら、最先端の技術とノウハウを蓄積してきた同社。ベトナム進出の先駆者として道を切り拓く同社の今後に、ますます注目が集まりそうだ。
創業以来生産するミシン用ボビンケースは、世界シェア70%を誇る同社の代表的商品。現在はベトナム工場で一貫生産されている。
ミクロン精度の加工技術を駆使した油圧制御部品。以前は海外製造に難色を示す顧客もいたが、高品質の製品を提供することで信頼を得てきたという。
ベトナム進出のポイント
- 単独資本で現地に会社を設立
- 日本とベトナムの事業体制をそれぞれ確立
- ベトナム社員の育成に力を入れる
企業情報
株式会社東和製作所
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