揚げせんべいの大ヒットによりベトナム合弁事業が急成長
亀田製菓株式会社
経営企画部マネージャー 深井 浩史 氏
過去の教訓を活かし2度目のベトナム進出に挑戦
米菓製造販売のリーディングカンパニーとして、長年トップを走り続ける亀田製菓株式会社は、2000年代に入り海外展開を強化。アジア市場の取り組みの一環として、2013年からベトナムでの合弁事業を行っている。
「実は1996年に4社合弁でベトナムに進出したのですが、2年後に撤退。今回は再度の進出です」と深井マネージャー。当時、さまざまな要因が重なったことで経営が悪化し、事業を断念。ところが2011年頃、ベトナムの「ティエン・ハ・コーポレーション」のグループ企業である米菓会社から、合弁事業の話を持ちかけられる。実はこの米菓会社の経営者は、前回の進出時に赴任していた同社・佐藤社長と当時親交があった人物。撤退後も交流が続いていたことも縁となり、2社合弁による「ティエン・ハ・カメダ」を設立した。
「製造現場で苦労しているのは、日本のやり方をベトナム人スタッフに徹底させること。ただベトナムの人は合理的でチャレンジングなところがあるので、学ぶことも多いです」と語る深井マネージャー。
「ICHI」が予想以上の人気に。活力ある営業も貢献
前回の教訓を活かし、リスクに耐えられる十分な資本金でスタート。さらに亀田製菓は「米菓の製造」、ティエン・ハ・コーポレーションは「販売」と、経営体制と役割分担を明確にした。
こうして2013年にエビせんべい「YORI」を、2014年に揚げせんべい「ICHI」を発売。同社の「揚一番」をベースに、ハチミツで甘みを増し、食感もやわらかくするなど現地向けに改良した「ICHI」は、当初の販売計画を大幅に上回るヒットとなった。
また、現地営業マンの活躍も大きかった。ベトナム都市部は自動車よりもバイクでの配送が主流。1,000人規模のセールス・バイク部隊が町中を走り回り、市場の中の小さな食料品店まで商品を供給できたことで消費を呼び込み、大きな売上に繋がったのだ。
ベトナムのジャポニカ米と日本の米菓製造技術で作る「ICHI」は、発売開始から短期間で人気が上昇。えび味のせんべい(旧「YORI」)は、味とパッケージをリニューアルし、人気のICHIブランドのひとつとして昨年再発売された。
優秀なパートナーと組めたことが事業成功の要因
さらなる需要拡大を見込み、ハノイ工場に続き2015年に中部ダナン、2016年には南部・ホーチミン近郊のドンタップに新工場を設立。迅速に増産体制を整えた。「今後は南部市場の開拓が課題。最大都市のホーチミンは競合も多いので、CMなどの販売促進策を組み合わせるなど売り方の工夫が必要です」。さらにこれから「ICHI」に続く新商品の開発にも取り組みたいという。
海外進出のアドバイスとして「今回は優秀なパートナーと組めたことが成功に結び付いた。現地の人と仕事をする上で、相手がどういう人物なのかを見極めることが大切だと思います」と語る深井マネージャー。同社が掲げる「グローバル・フード・カンパニー」の実現に向け、今回のベトナム合弁事業は強い追い風となるだろう。
ベトナム北部・中部・南部に工場を設置し、3拠点体制で「ICHI」を生産。また、バイクによる配送、小売店やスーパーでの店頭販促など、販売部門を全て現地のパートナー企業に任せたことも勝因の一つだ。
ベトナム進出のポイント
- リスクに耐えられる資本金でスタート
- 経営体制と役割分担を明確に
- 需要拡大を見込み、迅速に増産体制を整備
企業情報
亀田製菓株式会社
〒950-0198 新潟市江南区亀田工業団地3丁目1番1号
TEL.025-382-2111(代表)
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