ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ【図書館システムを活用した「まちやま道具箱」。ものづくりのまち・三条の個性発信とにぎわい創出を実現。】

2026年07月21日
NICOpress206号商品評価・ブラッシュアップ新商品・新技術開発

図書館システムを活用した「まちやま道具箱」。
ものづくりのまち・三条の個性発信とにぎわい創出を実現。

ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ 理事長 長野 源世 氏

三条の道具

三条の“道具”を知り、使い、地元への誇りを育てる仕掛け

ニイガタIDSデザインコンペティション2026でIDS大賞を受賞した「まちやま道具箱」。図書館を柱とした三条市の複合施設「まちやま」で行われている、地場産の道具を地域住民が無料でレンタルできるサービスだ。貸し出されている道具はメーカー各社が無償提供。借り手は地元で作られている製品の良さを実際に体験して知ることで、購入に繋がったり、何より自分たちが暮らす地元への誇りを生む取り組みとなっている。一流メーカーが集まっている三条だからこそ実現できる「地域性と総合力を体現する見事なソーシャルデザイン」(村田審査委員長評)と高く評価された。

発想のきっかけは、図書館の管理システムの存在だったとNPO法人えんがわの長野理事長は振り返る。「共同事業体で図書館の運営をしていくにあたって、この先は図書館の機能だけにとどまるべきではないのではないかという考えのもと、図書館の利用カードで何か新たな活用ができないかと考えました。当時三条市の人口が9万6000人くらいのところ、利用カード登録者が6万4000人もいました。本を借りるだけでいいのだろうか、もっと活用できるのではないか、というのがスタートでした」。

道具を模した札

ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ 理事長 長野 源世 氏

利用できる道具が分かりやすいように、道具を模した札を掲示。借りられる道具は現在、20社47セット133アイテムだ。貸し出せる数だけ札がかけられており、札が無くなっていたら、在庫数がゼロということだそう。

 

貸し出しの流れ

貸し出しの流れ①

❶借りたい道具の札を選ぶ

貸し出しの流れ②

❷カウンターへ渡す

貸し出しの流れ③

❸スタッフが倉庫から持ってきたものの中身を確認し、誓約書を記入してお持ち帰り。貸し出し期間は1週間。

 

メーカー各社が全面協力。ユーザーとの交流機会にも

もう一つ、まちやまが出来る以前から「ステージえんがわ」で行ってきたものづくりワークショップでも気づきを得ていた。「賑わい創出でいろいろな催しをするなかで、多くの企業に縁が広がっていました。私たちが100円ショップで買った道具を使っていると、“三条にはもっといいプロ仕様の道具があるのに”と言われることがあって、そのうち、自分たちの道具を持ってきて、みんなに使わせてくれることもあったんです。使うとやっぱり良さが分かる。さらに、住民の皆さんもどんなものが地元で作られているか、意外と答えられないことも分かった。もっと使う機会があれば、住民の皆さんが地元で作られた道具をPRする小さな広告塔になってくれるんじゃないかと思ったんです」。

メーカーに協力を依頼すると、どの会社も快諾。道具の提供だけでなく、メンテナンスも含めて協力してくれていて、その数は現在20社にのぼる。利用者からも好評で、トラブルも一切発生していない。「みなさん大切に使ってくれていますね。貸し出しが一番多いのは理美容バサミ。三条で作られていることを初めて知ったという人が多いです。利用カードも三条市だけでなく、燕市、長岡市、見附市、加茂市、田上町、弥彦村、新潟市の方が作成できるので、広く県内の方に試していただけます」。

また、協賛メーカーによる道具の使い方のワークショップも開催。「企業の宣伝にもなりますし、リサーチの場にも使っていただいています」。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

ステージえんがわで開催されるワークショップの様子。特に若い世代に刃物などを使う体験をしてもらいたいと話す。

 

理美容バサミ

「子どもや孫の髪を切りたい」という大人や、理容師・美容師を目指す学生などにニーズがあるという理美容バサミ。使い勝手の良さにプロ仕様の凄さを実感。

 

IDS大賞受賞で視察ラッシュ。三条の地域性も再認識

IDS大賞について、「図書館利用カードは本しか借りられないわけではない」という当初のアイデアが評価を受けたことが一番うれしい、と長野氏。「とはいえ、私たちがやったのは企業さんの製品、図書館のシステムという既存のものを、組み合わせただけという感覚もあります。でも本当に皆さんから多くの評価をいただいて、これを機会に内容をさらに充実させようと取り組みを進めているところです」。

一方で、この取り組みを実現できたのは三条だから、ということも改めて実感しているという。「視察の人にもなぜ実現できたのかと聞かれますが、昔から分業で一つの製品を作ってきた三条は、お互いを思いやり支え合う地域性がある。その点が大きいと思います」。

今後は図書館の読み上げサービスなどのソフトも、「札」として表示し可視化していくほか、メーカーの製品カタログを全部集めて並べる計画も進行中。市民と企業を繋ぐ仕掛けは、さらに充実していきそうだ。

ステージえんがわ

複合施設「まちやま」

隈研吾氏設計による複合施設「まちやま」(右)と、同じ敷地内に建つ「ステージえんがわ」(左)。かつて小学校があった場所が新たなにぎわいの場となっている。

 

VOICE 利用者の声

ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ 理事長 長野 源世 氏
ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ
理事長 長野 源世 氏
受賞によって産地・三条や協賛企業が全国から注目されることがうれしい

まちやま道具箱がスタートし、「図書館システムを利用した初めての試み」と言われて取材や論文テーマにしたいという依頼が来るようになりました。初の試みならばIDSコンペに出してみたいと思い、調べたら出せそうだと分かって締め切り間際にエントリーしました。受賞後は全国から視察があり、三条市を訪れた方々に、協賛企業さんの製品を見てもらえることがありがたいですし、少しは企業さんに恩返しができているかなと思っています。

本事例のポイント

  • 既存のシステムと地元メーカーを結びつけ、利用者も企業もメリットがあるサービスを構築
  • アナログな「札」も活用し、どの年代でも分かりやすく、借りやすいシステム
  • 実際に道具に触れることで、地域産業の良さを市民が知る機会づくりを創出

ニイガタIDSデザインコンペティション受賞商品や審査員の評価ポイントについて詳しくはこちら
https://www.nico.or.jp/ids

 

企業情報

ツクール・ド・さんじょう共同事業体 NPO法人えんがわ

三条市元町11ー6
TEL.0256-32-0657
URL https://sanjo-machiyama.jp/

ツクール・ド・さんじょうは、図書館運営事業を手掛ける株式会社ヴィアックス(東京)と、三条市内のにぎわい創出を手掛けるNPO法人えんがわで構成される共同事業体。2022年開館の三条市の図書館等複合施設「まちやま」の指定管理者として施設運営を行っている。

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